今回は、「形のないモノで稼ぐ(1)」の続編になっています。まだ読んでいない方は先に読んでみてください。
最近のコナミの動きでもう一つ気になっているのが、プロ野球選手の実名使用権の独占取得の件です。ご存じの方も多いかと思いますが、コナミは業界トップの人気野球ゲーム「実況パワフルプロ野球」を制作している会社です。また、プロ野球を管理する日本野球機構の有力スポンサーのひとつでもあります。コナミは日本野球機構から3年契約で実名を独占して使える権利を買ったようです。どちらが言い出したのかはわかりませんが、この二者の間がただならぬ関係なのは確かでしょう。
この実名使用権も、もともと形のないものから財産的価値を生み出す方法のひとつです。もちろん、財産以前の問題として、名前の所有者個人(何だか回りくどい言い方ですが)の名誉を守るために、名前の使用権を管理することは大事なことです。個人の名前だけでなく、例えば球団名や球場名、大会名なども使用権が管理、売買されます。
これで、プロ野球選手の実名を使ったゲームを作りたい会社は全て、同業者であるコナミから使用権を買わなければならなくなりました。実名使用権を独占したことで、コナミが競合する他のゲーム制作会社に対して販売をコントロールしたり圧力を掛ける道具に使ったりしないかという懸念があったわけなんですが…早速困った事態に発展してしまいました。詳しくは、前回も紹介したコナミ不買運動のページで紹介されていますが、スクウェアが発売しようとしていたプレイステーション2用の野球ゲーム(ゲーム名が某中日でない新聞社の球団のテレビ中継のキャッチコピーと同じなのが気に食わないんですが)が、この問題のせいで未だ発売されない状態になっています。コナミが自社の看板ソフトのひとつである「パワプロ」より先に野球ゲームが出るのを阻止しようとしたのかどうかはわかりませんが、そう取られても仕方がありませんね。
余談になりますが、今回の話題について資料を調べるうちに、「日本野球機構」と「日本野球連盟」の名前に突き当たりました。前者はプロ野球を、後者は社会人アマチュア野球を管理する団体です。実に紛らわしい名前です。どうも今回の一連の騒動の中でも、この二団体の名称がすり替えて使われていた節があります。今回はプロ野球のゲームの話ですから、日本野球「連盟」の許可は必要なさそうですよね。オリンピックの野球ゲームだったりしたら今度は連盟に話を通さなくてはいけないんでしょうけど。
ともかく、こうした使用権の売買で変な足の引っ張り合いをするのは感心できませんね。ゲームソフトの制作会社なら、自分の作品の質の高さで勝負するべきだと思います。権利の主張ももちろん大事な話だとは思いますが、競争なくしては発展はないのです。
今回の話を聞いて、最近話題になっている「ビジネスモデル特許」の話とよく似ていると感じました。ビジネスモデル特許の場合も、法的効力を利用して業界全体の動きを縛ろうとする点で全く同質のものだと思います。そもそも特許というのは思いつきさえすれば申請できますから、アイデアそのものが特許になるビジネスモデル特許の場合、「先に言ったもの勝ち」な傾向が特に強いですね。
この手の問題を解決するには、自主規制に任せるか、罰則を設けるかしか方法はないと思うんですが、どちらにしても、それがまた自由な活動に規制を掛けてしまうことになります。特に、自主規制は過剰反応になることが多いですね。「健全で緩やかな自主規制」が一番いいとは思うんですが、それはとても難しいことです。ビジネスモデル特許の問題は、今月開催される九州・沖縄サミットでもIT技術関連で議題に上る可能性があるとか。動向に注目しましょう。
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