Music Worldに新曲「君と歩く道」を公開しました。私の大好きなピアノがメインのバラード曲で、自分で言うのも何ですが特にアレンジはかなりお気に入りです。自分で歌うのにも慣れてきました…と言っても別に歌唱力が上がったわけではなくて、自分の羞恥心がなくなってきただけという話もありますが。久々に「歌うMIDI」データも用意しました。是非聴いてみてください。
ところで、この曲のアレンジを支えているのが、今回新しく加えた2つの音源です。といっても、その実体は葉書より一回り小さいくらいの基板だったりするんですけどね。YAMAHAのシンセサイザーや音源モジュールに採用されているプラグインボードで、これを既存の本体…私の場合はXG音源モジュールのMU1000ですが…に内蔵することによって、音色の数ではなく音源システムそのものやエフェクターを拡張するというものです。操作は本体のパネルを利用するわけで、鍵盤付きの本体や音源モジュールの箱を買うよりは割安に新しい「楽器」を入手することが出来ます。
PLG150-ANは、「アナログフィジカルモデリング音源」と呼ばれ、いわゆるアナログシンセの音源回路をデジタル技術で再現した音源プラグインボードです。今回はイントロや間奏などに出てくる柔らかい音のシンセリードに使っています。
添付のコントローラソフトの画面も、まさに往年のアナログシンセの操作パネルを彷彿とさせるもので、昔アナログシンセを触ったこともある私からすると、どんな音が出るのかわくわくするものがあります。そして、実際の動作も私の期待を裏切らないアナログシンセそのものでした。
このボードの魅力は、パラメータの組み合わせ次第で全く新しい音を作り出せること。最近のいわゆるマルチティンバー音源は、CDと同じようにデジタル録音した音を元にして微調整する加工しかできませんが、このPLG150-ANの場合はノコギリ波、矩形波…といった基本の波形を2系統選んだ後、それらを単純に重ね合わせたり、FM変調に使ったり、あるいは周波数の違う信号の片方をもう片方に同期させたりしてとても複雑な波形を作り出せます。さらに、時間変化に応じて音色や音量を始めとした様々なパラメータを変化させることも可能です。これぞまさに「シンセサイザー」(音色合成機)。極端なパラメータを入力すると思いっきりぶっ飛んだ音が出たり、逆に全く音が出なかったりする…というところも実に楽しいですね。
今回は、もともとのXG音源に入っている音にかなり近いシンセリードの音を作りましたが、ただのサイン波とは違い微妙に存在感を加えた音色や、スムーズに音程の変化するポルタメントはこの音源ならではの独特の存在感を持っています。ただ、この音源が真にその威力を発揮するのは、時間に合わせていろいろなパラメータをダイナミックに変化させた効果音の生成だと思っています。今後さらに研究を重ねて、面白い使い方を考えてみたいと思います。
PLG150-PFは、「ピアノ音源拡張プラグイン」です。音源の方式自体は基本的に従来のXG音源と同じで、録音された生音をベースにしたものですが、この音源の場合はリアリティあふれる音を目指してピアノのためだけに大容量のデータを惜しげもなく使っています。今回はもちろんピアノの音を受け持っています。
プラグインボードの利点の一つが、「音源」を拡張することにより同時発音数を増やせること。PLG150-PF自体が64音を発声できる(複数の発音モジュールで作られている音色の場合には減ってきますが)ので、ピアノパートで同時に多くの音を鳴らした場合でも他のパートで音切れが起こることはあり得ません。もちろん、音そのものもこれまでとは別次元です。特に、ソロで演奏したときの空間の中での存在感が増しています。さらに、高音域で高めに、低音域で低めに調律する「ストレッチチューニング」を施した音まで用意されています。
ピアノの音のリアリティを追求すれば、究極的には本物のピアノを使うしかありませんが、中途半端な録音をした生音よりも、最高の条件で録音された波形を処理した電子音源を使う方が、私のようなアマチュアレベルではより良い音が得られることが多いはずです。もともと、私の曲の中にはピアノが中心になっているものが結構多いので、これまでの曲でもピアノの音を差し替えて再編集してみると面白いかも知れません。それが簡単に出来てしまうのがMIDIデータのおもしろいところですね。
どちらのプラグインボードの場合も、音源の選択肢が増えることにより、私の音楽に新しい展開を与えてくれることを期待しています。特に、PLG150-ANによる電子合成音がどんな世界を作れるのか興味深いところです。ただ、プラグインボードの場合、誰もが同じ組み合わせを装備しているとは限らず、どうしても誰もに同じ音を聞いてもらえなくなる可能性が出てきます。今回は、皆さんに編集してもらうことによりいろいろなプラグインボードの組み合わせに対応できるようなMIDIデータも用意してみました。さらに、従来から活用している「歌うMIDI」プラグイン・PLG100-SGのみを使ったデータも用意しました。これなら、ソフトウェア音源S-YXG100Plusでも編集なしで歌が聴けますからね。
実は、使う側でもちょっとした問題が出てくるんです。MU1000は3枚のプラグインボードが挿入できる構造になっていますが、現在私の所有しているプラグインボードは全部で4枚。もちろん4枚同時に使うことは出来ず、どれか1枚が弾き出されることになります。まあ、必要に応じて取り替えながら使えばいいんですけどね。
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