パソコンでテレビ

テレビパソコンの思想

今回のテーマは「テレビパソコン」。パソコンとテレビを融合することを目指した製品自体は、パソコン登場の初期からいろいろありました。もともとテレビとパソコンディスプレイの原理は全く同じブラウン管でした(もちろん現在はそれだけにとどまらないんですが)から、既存のテレビをディスプレイに転用するのはごく当たり前の発想だったと思います。

記憶に残る限りで最初にテレビとの「融合」を果たしたパソコンは、その名も「パソコンテレビ」と銘打って1982年に登場したSHARPのX1だったような気がします。ディスプレイにテレビチューナーを内蔵しているのは他の製品と同じでしたが、パソコンのキーボード側にテレビのチャンネル切り替えなどを操作するボタンが装備されていたり、テレビ画面の上にパソコンの画面を表示するスーパーインポーズが可能だったりして、他社の「ディスプレイテレビ」とは次元の違いを感じました。ゲームの出来も結構良かったですしね。詳しい解説については@niftyFSHARPフォーラムを覗いてみましょう。

ここ2年くらいの間に、テレビチューナーを内蔵したパソコンが一気に市場に広がった感があります。テレビチューナーはパソコン本体側に内蔵され、番組をハードディスクに録画して多彩に活用できるようになっています。実は、テレビ番組を受信しなくてもインターネット経由で様々な動画が見られるようになっていたりして、そうした意味でもテレビとパソコンの境界は曖昧になりつつあります。

前出のX1はパソコン事業部ではなく家電事業部が作ったパソコンだったそうなんですが、開発者の皆さんはただ単にパソコンを売りたいためにテレビとくっつけたんでしょうか。それとも今のようなテレビパソコンを志向していたんでしょうか。…私は後者だと思いたいんですが、そうだとするとSHARPの皆さんの発想に技術が追いつくまでには20年近くもかかってしまったわけです。またしても目の付け所があまりにシャープすぎたんでしょうか。

自作でもテレビパソコンを

テレビパソコン化の波は、自作機の世界にも押し寄せました。拡張機器としてテレビチューナーを内蔵した機器が次々に登場しましたね。動画をパソコンに取り込むためのビデオキャプチャカードというのは結構昔からあったと思うんですが、ここ2年くらいで価格が一気に下がり、テレビチューナーも内蔵したものが増えてきました。安いものでは数千円で購入できますよね。

今回、私が自作機のテレビパソコン化のために選んだ新パーツはMTV1000。画像処理のクオリティの高さには定評のあるカノープスが作った「画質優先主義」のPCIカードです。実売価格は3万円台ということで他社製品に比べると高価ですが、画像をMPEG2形式で圧縮するためのエンコーダには専用チップが搭載されていますから、非力なパソコンでも高品質の映像を利用することが出来ます。…我が家の自作機の頭脳・Pentium3-800EBMHzでも、この仕事をCPUだけで行うにはもはや非力すぎるのだとか。時代の進歩はあまりに速すぎます。

カノープス・MTV1000

意外に手こずるインストール

MTV1000の基板レイアウトを見ると、国産製品らしい丁寧な作りを感じます…別に基板を見て楽しむわけではないんですけどね。外観はともかく、あらゆる所で画質重視のポリシーを色濃く感じることが出来ます。ノイズ混入防止のためにスロットカバーに貼り付けるガスケットが付属しているのは雑誌などの記事で有名ですが、アンテナ線をつなぐためにいわゆるアンテナプラグは使わずにF型接栓を使うようにわざわざ指示されているなど、そのこだわりは徹底しています。

PCI拡張スロットにカードを差し込み、ドライバをインストールする…という作業の流れになるわけですが、意外に手こずったのがカードの取り付け。写真を見ていただくとわかるとおり、今時珍しい大型サイズ(長さ212mmだそうです)のカードで、しかもアンテナ接続端子がかなり長く突き出ているため、まるで知恵の輪をはめるかのような作業を要求されました。マザーボード側を壊しそうでかなり気を遣いましたね。その後のドライバやソフトウェアのインストールは、マニュアルの指示に従って特に問題なく済ませることが出来ました。

実は、アンテナ線の工事にも結構時間がかかったんですよね。パソコンの置いてある部屋にはアンテナ線が引き込まれていなくて、隣の部屋にあるテレビからアンテナ線を分配し、壁や柱を伝って10mほど引っ張ってきました。この分配器や同軸ケーブルへの出費が意外に大きかったりします。さすがにアンテナ線をつながない状態では全く画面が映りませんでした。

画質優先主義

テレビ番組の画面は、評判通り良好でした。私の家では、どうもテレビ電波の受信状況が悪く、風の強い日にはゴーストや小さなノイズ(我が家ではこの状態を「星が飛ぶ」と呼んでいますが)が見られることがありますが、こんな厄介者までも克明に写し出してくれます。さらに、強引に高いアンテナを立てて受信している愛知県のチャンネルも、他のどのテレビよりも鮮明に受信しています。こうなってくると、アンテナの方を何とかして改善することも考えたくなります。

添付ソフトウェアは、テレビ視聴/録画再生にDVDやCDなどの再生も統合した「MEDIACRUISE」と、予約録画の管理に加えて簡易なテレビ視聴も行える「TV Recording Manager」のオリジナルソフト2本立てです。テレビを見るだけなら、MEDIACRUISEをわざわざ起動するよりも、タスクバーに常駐しているTV Recording Managerからモニター画面を呼び出す方がずっと楽です。テレビ画面は専用のウインドウの中に表示されて、大きさも自由に変えられますから、他の作業をしている間に横に小さな画面を開いてテレビを見ることも出来てしまいます。もちろんフルスクリーンでテレビをじっくり鑑賞するのもありですよね。パソコンの画面でテレビが見られるようになった…というよりは、テレビの機能がパソコンに取り込まれてしまったような感覚を受けています。

とりあえず我が家の「パソコンテレビ」は完成した訳なんですが、ただテレビ番組が映るだけではあまりに芸がありません。引き続き、どのように活用していくかについて触れてみたいと思っています。


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