復習しておきましょう
ずいぶん前、初めて自作機を作った頃にオーバークロックをテーマに掲げたことがあります。今さら言うまでもなく、オーバークロックとはCPUやメモリなどの動作クロック周波数を規定よりも高く設定して動かすことで、自作パソコンユーザーたちが高性能をより安価に実現するために使われる手段の一つです。もちろん仕様外の動作ですから動作しなくても仕方ありませんし、これが原因で壊れてしまっても文句は言えません。
新しく購入したPentium4 1.6AGHzは、外部から供給されるクロック100MHzの4倍のさらに4倍で動作するように作られています。最近のIntel製CPUの例に漏れず、Pentium4の場合はこの「4倍のさらに4倍」の部分を変更することは出来ないので、ベースになる「100MHz」をより高く上げていくことになります。外部からの供給クロックを上げていくときのリスクは、その影響がCPU以外にも及ぶこと。少なくともCPUと直結されるチップセットは確実に影響を受けるわけです。
このことを考えたときに生きてくるのが、GA-8IEXに採用された新型チップセット・Intel 845Eの仕様。もともとCPUに133MHzを供給することを考慮して作られていますから、100MHzベースのPentium4に定格の1.33倍の133MHzを供給しつつ、他の部分には全く負担をかけない…という設定をすることが可能です。考えようによっては、チップセットがCPUを33%オーバークロックさせるだけの余裕を持っている…とも言えるわけです。
確信犯?
一方、CPUの側から見た場合、Pentium4の1.6AGHz版と2.53GHz版の違いは何かを考えると、基本的に内部はいわゆるNorthwoodコアである点は同じ(厳密に言うと違う可能性もあるわけですが、現状では全く同じらしいです)で、想定している供給クロック周波数と内部倍率が違うだけ…という見方も出来ないことはありません。つまり、2.53GHz版が販売されていると言うことは、1.6AGHz版でももしかしたら2.53GHzで動いてしまうかも…という危険な発想が出来てしまいます。
こんな発想に基づいて私が購入した1.6AGHz版Pentium4は、実は当初から大幅なオーバークロックを前提にした選択だったりします。といっても、さすがに2.53GHzを狙っているわけではなくて、最低限の目標は2.13GHz。何だか中途半端な数字だと思う方もあるかも知れませんが、実は非常にキリのいい数字です。133MHz×4×4ですから。
あまりにもあっさり
そうは言っても、あくまでも保証されているのは1.6GHzでの動作。いきなりCPUを壊してしまうわけにはいきませんから、組み立てた当初は定格通りの周波数で動作させていました。Windows XPのインストールが成功したところで、再起動後おもむろにBIOSメニューを立ち上げ、外部供給クロックをいきなり133MHzに変更しました。ただ、このままでは供給クロックの2.66倍で動作するメモリが同期できないのはほぼ確実なので、この倍率を2倍に落とし、メモリクロックは266MHzのままで据え置きました。
オーバークロック設定を済ませた後緊張の再起動となったわけですが…正直なところ拍子抜けしました。Windows XPは何事もなかったように起動してしまったんです。システムのプロパティを見ると確かに動作周波数が「2.13GHz」と表示されていますし、試しに走らせてみた各種ベンチマークもちゃんと動作して、数値もそれなりに上昇しています。
その後、調子に乗って少しずつクロック周波数を上げてみました。148MHz設定(CPUは2.37GHz)までは一応起動に成功。149MHzまで上げたところでWindowsの起動が出来なくなりました。CPUやメモリなどの動作電圧を微妙に上げるともうちょっと頑張れるんですが、これはCPUやメモリに常に負荷をかけながら使うことになるので、現在は2.13GHzで使っているところです。ちなみに、GA-8IEXは供給クロックを1MHz刻みで変更できるんですが、その範囲は100MHzから何と上限は355MHzまで。もちろんこんな周波数で動くとは思えませんが、製造元・GIGABYTEのオーバークロックに対する気合いを見ることが出来ます。
劇的に速く…なった?
ここで、参考までに前にも使ったベンチマークテスト・HDBENCH3.30による結果を載せておきましょう。
HDBENCH 3.30 CPU | ||
---|---|---|
Machine | Integer | Float |
P3-800EBMHz | 36641 | 36498 |
P4-1.6AGHz | 40498 | 61595 |
P4-2.13GHz | 53330 | 81787 |
1.6AGHzが800EBMHzの2倍に遠く及ばないことからも、Pentium3とPentium4は単純にクロック周波数で比べられないことがわかります。Pentium4の性能向上は浮動小数点演算が主なようですね。1.6AGHzと2.13GHz動作の結果を比べると、当然の事ながらきっちり1.33倍になっています。
HDBENCH 3.30 Memory | |||
---|---|---|---|
Machine | Read | Write | Read&Write |
P3-800EBMHz | 14019 | 16731 | 22207 |
P4-1.6AGHz | 99860 | 33164 | 66512 |
P4-2.13GHz | 108755 | 33458 | 66533 |
メモリもこれまでのSDRAMからDDR SDRAMに変わったんですが、実際に能力がこんなに違うんでしょうか?。Pentium4の動作周波数が1.6AGHzか2.13GHzかにかかわらず、メモリの周波数は266MHzと同じに設定しているので、出てくる数値もほぼ同じです。
HDBENCH 3.30 ALL | |
---|---|
Machine | ALL |
P3-800EBMHz | 29923 |
P4-1.6AGHz | 34250 |
P4-2.13GHz | 38030 |
総合点を見ると、あまり劇的に変わってないんですよね。まあ、ベンチマークテストの総合点はベンチマーク自身の主張で決まってくるもののような気もしますから、「このベンチマークはそう評価したんだな」程度に思っておきましょう。
それでは、最後にこれとは全く趣向の違うベンチマーク結果を並べておきましょう。MadOnion.comの「3DMark2001」です。実際の3Dゲームに近いリアルタイムレンダリングの画面を動作させて、3次元CGの描画性能を測ります。ビデオカードの性能による影響も非常に大きなベンチマークですが、CPUやメモリにも大きな負荷がかかる作業ですから、これらの性能向上が測れるわけです。
3DMark2001 (1024×768, 32bit color) | |
---|---|
Machine | 3DMark |
P3-800EBMHz | 5065 |
P4-1.6AGHz | 7260 |
P4-2.13GHz | 7945 |
この結果を見ると、CPU性能もさることながら、メモリの転送速度の影響の方が大きいような気がしますね。
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