私と音楽との関わりを語る上で避けて通れないのがキーボード(考えてみると「鍵盤」って”Keyboard”のベタな直訳なんですね)との関係。現在活躍している鍵盤弾きの方々には「物心の付いたときにはもう目の前にピアノがあった」という感じの人が多いかと思うんですが、私の場合はそれよりももう少し後、小学校2年生のときが鍵盤との本格的な付き合いの始まりでした。
弟の通っていた幼稚園で「音楽教室」なるものが始まって、それを聞いた私が「自分もやりたい」と駄々をこねたんです。だいたい個人で鍵盤楽器を習うときにピアノか電子オルガンかを選ぶわけですが、私が始めたのは電子オルガン。今となってはその選択が正しかったのかどうかはよくわかりませんが、少なくともそれが貴重な経験となって積み重なっているのは確かです。結局弟の方はその後習うのをやめてしまったんですが、私の方は何と高校卒業まで11年間も教室に通い続けることになります。弾けなかった曲が、練習すると弾けるようになるのがとても楽しかったですね。自分で始めたことだからこそここまで続いたのだと思います。
足かけ11年も続けているとそれなりに実力も付いてくるもので、よっぽど難しい曲でもなければ譜面を見るだけで弾けるくらいにはなりました。しかし、電子オルガンという楽器で飯を食っていく気にはなりませんでした。左利きの不利と言う影響もないとは言えませんでしたが、それ以上に決定的だったことがありました。
他の子たちは、自宅でもステージで弾くのと同じ100数十万円もするオルガンを使って練習してたんですよね。一方、私は結局11年間初心者向けの同じオルガンを使い続けました……そんな高級品を買ってもらえるほど楽な暮らしはしていませんでしたから。週に何度も教室に通ってオルガンを使わせてもらいましたが、さすがにその差は弾き返せませんでした。もちろん、11年間も高い月謝を払って教室に通わせてくれた両親には感謝していますよ。
大学に進学するときに浜松を離れましたから、さすがに教室に通うのはやめました。だいたい、一人暮らしの下宿にオルガンなんて巨大で強烈な騒音源は持ち込めませんしね。それでも鍵盤との付き合いそのものをすっぱりやめてしまうのは嫌だった私は、部屋に持ち込めるキーボードを探して楽器屋を巡りました。
そのときに見つけたのが、Rolandのシンセサイザー・D-70。当時既に中古品で売られていた……というくらい古い楽器になりますが、造り自体はしっかりした良いキーボードです。その魅力についてはWeekly SSKでも触れたことがありますが、決定的だったのは鍵盤数が76鍵であったことでした。音楽教室で弾いている頃からピアノに対する憧れを持っていた私が、初めて本格的にピアノへの一歩を踏み出せた瞬間(もちろんまだ本物とはほど遠いわけですが)だったと思います。その後もキーボードと共に暮らしてきたわけですが、もう私の人生はこれ抜きでは考えられない……というくらいの存在になっています。
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