プロ野球では、読売ジャイアンツと西武ライオンズによる日本シリーズが始まりました。第1戦をテレビで観戦したんですが、どうも見ていて心躍るものがありません。対戦しているのがひいきのチームではないから?…いや、そんなことはないはずです。サッカー・ワールドカップの決勝戦は、名前も知らない選手が多かったはずなんですが、それでも手に汗握る好ゲームでしたよね。
確かに昨日の上原投手は好投を見せましたが、それよりもライオンズの選手たちがあっさりと三振を取られすぎです。それでも、最後にカブレラ選手が今シーズン56本目のホームランを打ってくれたのは救いでしたね。2戦目以降にちょっとだけ希望が持てました。
一方、アメリカ・メジャーリーグでは全米一を決するワールドシリーズが日本よりも1週間早く開幕しました。今年対戦しているのはアナハイムエンジェルスとサンフランシスコジャイアンツ。実は両チームともレギュラーシーズンでの地区優勝は果たしていません。各地区リーグ2位の中で最も勝率が高いチームに与えられる「ワイルドカード」でプレーオフに進出した両チームは、トーナメントを勝ち抜いて見事リーグ優勝。このシリーズに臨んでいます。チーム数が多く複雑なシステムを取っているメジャーリーグならではの、ちょっと面白い対戦ですね。
しかし、日本で今年のワールドシリーズが注目されている理由はちょっと違います。それはもちろんあの男のせい。…そう、ジャイアンツの新庄剛志選手です。メジャー2年目の今年、メッツからジャイアンツに移って臨んだ彼でしたが、そんなに大した数字を残していないのに何故か目立つという才能を今年も遺憾なく発揮し、独特の存在感を放ちました。
彼のおかげかどうかは定かではありませんが、ジャイアンツはワールドシリーズに進出。彼は第1戦で日本人初となるスタメン入りを果たし、この試合ではこれまた日本人初のワールドシリーズでのヒットも放ちました。その後も、途中出場ではありますがそれなりに仕事をしています。本人は出場機会が少なくて不満なようですが…。ともかく、彼のワールドシリーズ初ヒットのバットは野球殿堂入りが決まったそうで、相変わらず存在感は増していくばかりです。
ところで、もうひとりの日本人メジャー野手・イチロー選手はどうだったんでしょうか?。彼は今年も当然のように1番を打ち続け、マリナーズの数多くの勝利に貢献しました。しかし、終盤は調子を落としてしまい、マリナーズは結局地区優勝を逃し、イチロー選手も2年連続200本安打を放ったものの無冠ということになりました。もちろん、個人成績としては十分に一流選手にふさわしいものではありましたけどね。それでも、今マスコミに取り上げられるのは新庄選手ばかりな訳ですから、やっぱりスポーツは勝たなきゃダメだ…ということなんでしょう。
そんなことを考えているうちにふと思ったんですが、これまでイチロー選手が日本とアメリカで作ってきた数々の記録は「史上最多」や「史上最高」というものでしたよね。こうした記録を更新することはもちろん大変素晴らしいことなんですが、また別の選手に更新されてしまうと、それまでの記録保持者のことは忘れ去られやすいものです。例えば、イチロー選手がシーズン最多安打記録を更新する前の記録保持者が誰だか覚えていますか?。答えられない方が結構多いと思います…実は私も思い出せなかったんですが、案外往年の阪神タイガースファンあたりならご存じかも。
一方で、「史上初」を冠する記録というものがあります。今回の新庄選手の記録はまさにこれなんですが、こちらの記録を達成できる人間はただひとりで、誰にも塗り替えられることはありません。そうした意味では貴重な記録だといえるかも知れません。
しかも、「史上初」を勝ち取るためには本人の実力はもちろんのこと運の占める要素が非常に大きくなります。どんなに優れた実力を持つ選手でも、ベンチが起用してくれなくては「史上初の出場」を達成することは出来ません。例えば、野茂英雄投手が「日本人初のメジャーオールスター戦出場&先発」や「日本人初のメジャーリーグでのノーヒットノーラン」という記録を持っているわけですが、これにしても彼がたまたま早い時期にメジャー挑戦が出来たから…と言えないこともありません。もちろんそれが達成できるだけの実力は必要なんですが。
そんなことも考えてみると、新庄選手はやっぱりたぐいまれなる強運を持っているのでしょうね。振り返ってみると、ジャイアンツにトレードされたからこそワールドシリーズに出場できた…とも言えるわけですし。そして、この運というのも立派に実力のうちです。いや、彼のような「記憶に残る」タイプの選手にとっては、これこそが最大の能力なのかも知れません。
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