誤算だらけのPrescott
前々回及び前回にも触れたとおり、2月2日(現地時間)に新しいPentium4、3.40E/3.20E/3E/2.80E GHz版が発表されました。90nmプロセスで作られた新設計コア・Prescottを用いた製品ですね。2次キャッシュが倍増し、新命令セットが追加され、様々な新技術を投入して作られたPrescottには、これまで使われていたNorthwoodコアと比べて大幅なパフォーマンスの向上を期待してしまうところですが、実際に登場してみると、どうも事情が違うようです。
各ネットニュースの記事によると、Prescottの演算速度は同じクロック周波数のNorthwoodよりも明らかに遅く、アプリケーションの実行速度では盛り返すものの、凌駕するところまでは行かないレベルなのだとか。どうやら、Prescottではさらなる高クロック化を図るために内部構造にかなり大幅に手が入れられているらしいですね。そのせいで、アプリケーションによって得意、不得意の差もかなり出ているのだとか。
ただ、もう一つ誤算だったのはPrescott版Pentium 4の価格。同クロックのNorthwood版と全く同じに設定されています。こうなると迷ってしまいます。将来専用命令が普及したときのことを考えてPrescott版を選択するか、現存アプリケーションの処理能力や消費電力(Prescottの発熱はものすごいらしいですから)を考えてNorthwood版にするか。まあ、どちらにしても新しいPentium 4がまだ市場に出回ってない以上、考える時間はあるわけですが。
こちらは嬉しい誤算
ともかく、新しいCPUをいずれ購入するまでは現在の構成で行くしかありません。ただ、やっぱり不満なのはCPUの動作速度が上げられないこと。ただ、実際どのくらい遅くなっているのか確認くらいはしておきたいな…と思い、CrystalMark 0.8で計ってみることにしました。すると、予想外の結果が出てきたんです。
CrystalMark08 | ||
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Machine | GA-8IEXP @2.13GHz |
GA-8IPE1000 Pro2 @1.60GHz |
ALU | 5996 | 4485 (75%) |
FPU | 4450 | 3322 (75%) |
RAM | 7074 | 8938 (126%) |
HDD | 7664 | 7302 (95%) |
GDI | 6981 | 7995 (115%) |
D2D | 5906 | 5266 (89%) |
Mark | 38071 | 37308 (98%) |
新しい環境ではCPUクロックが25%ダウンしているわけですが、総合力を示すMark値では低下幅はたったの2%。ほとんど同じと言っていいくらいです。数値を見ていくとわかるんですが、CPUの能力を測るALUやFPUの数値はほぼ正確に25%落ちている一方で、他の数値はほとんど落ちていないか、むしろ向上しています。
実際に、触れている限りではパフォーマンスの低下は実感できません…まあ、これは既にOfficeアプリケーションなどの実用には十分な処理能力を持っているためだとは思うんですが。CPUの演算能力がものを言うとされるビデオのエンコード作業では、さすがに作業の遅さがわかります。
でもちゃんと根拠がある
先の数字をもう少し詳しく見ていきましょう。数値が上がっているのはRAMとGDI。D2Dの数値は下がっていますが、その割合は11%で、低下幅はCPU性能ほどではありません。メモリとビデオに関しては性能が上がっている…ということから、こうした結果が出てくると考えられます。
パソコンの性能表にしばしば登場する概念に「帯域幅」というのがありますね。要するに、最大どのくらいの速さでデータが移動できるかを示したものなんですが、マザーボードが、もう少し厳密に言えばチップセットが変わったために帯域幅が向上しています。メモリについては同じDIMMを使っていてもデュアルチャネル化でこれまでの2倍に、ビデオについてはAGPの規格が4xから8x対応に変わったためにこれまた2倍になりました。もともとビデオカードはAGP 8x対応でしたから、ようやくその潜在能力を完全に解放することになったわけです。
メモリとビデオ周りの性能を測るために、3次元CGベンチマークの定番、3DMarkシリーズも試してみましょう。このテストはビデオカードに使われているGPUの性能にも大きく依存するわけで、CPUの処理能力が落ちてもあまり変わらないという結果になりました。何しろ、現状での最新版・3DMark03では、CPUの能力差をはねのけて新システムが勝っちゃいましたからね。これでCPUを換えたらどうなるか、ちょっと怖いくらいです…とは言っても、大して速くもならないはずなんですが。
3DMark Series | ||
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Machine | 3DMark2001 SE | 3DMark03 build340 |
GA-8IEXP @2.13GHz | 11842 | 4340 |
GA-8IPE1000 Pro2 @1.60GHz | 10528 (89%) | 4597 (106%) |
帯域幅を考えたとき一つ不思議なのが、RAIDを使わないことにして帯域幅が25%落ちている(UltraATA/100 RAIDは100MB/s×2=200MB/s、SerialATAは150MB/s)はずのHDDの数値低下が5%しかないことですが、もともとハードディスクはインターフェースの帯域幅を使い切れていないことを考慮すると、むしろドライブ自体の性能の向上が数値に貢献したと考えられます。回転数が同じでディスク1枚あたりの容量は倍増していますから、ドライブ一つあたり2倍速になっても不思議はないのかも知れません。
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