今年のアカデミー賞作品賞受賞作、「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」を見に行ってきました。これで「ロード・オブ・ザ・リング」の3部作が完結となります。前の2作も映画館で見ていますから、受賞するかどうかは関係なく見に行くつもりではあったんですが、どうせ見に行くのなら「受賞作」の箔がついてからにしようかな?と思ったんですよね。冷静に考えれば、いつ見に行くかということ自体は全然意味を持っていないと思いますが。どちらにしても「アカデミー賞作品」であることは変わらないわけで。
【DVD「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」】
「二つの塔」のときと同じ夜9時からのレイトショーだったのですが、受賞決定直後にしてはずいぶん空いていて、ど真ん中の特等席でじっくりと鑑賞することができました。公開前から超話題作でしたから、きっともうみんな先に見てしまったんでしょうね。
ファンタジー世界の映像化のために、様々な技術が駆使されていて、「あり得ないけれど確かにそこにあるような」映像にはこれまで感心させられてきました(アカデミー賞でも撮影技術面では3作とも賞を取ってますよね)。でも、さすがに3作目ともなると驚きはしませんでした…決してクオリティが下がっているわけではないと思うんですが。驚きも同じようなものが何度か続くとだんだん慣らされてくるのは、どんなものでも同じだったりします。
映像技術に目を奪われなかった分、映画の世界にどっぷりと浸ることができました。本編が3時間23分とこれまで以上の長丁場で、終わって劇場から出てきたときには午前0時40分を過ぎていましたが、今回も一睡もせずにスクリーンに釘付けになりました。通常、映画館での興行では3時間という上映時間が一つの区切りになると聞いたことがあります(「旅の仲間」「二つの塔」はほぼぴったり3時間でした)が、それを大きく超える作品が公開できたのはこれまでの実績のおかげなのでしょうか。それも無駄に長かったわけではなく、緊張感を保って密度の高い時間を過ごせた気がします。
先にこの映画を見に行った人から「エピローグが長かった」という話を聞いていたんですが、私はそうは思いませんでした。先に前2作のDVDを見直して予習してから出かけたのが影響したような気がします。3時間半の作品のエピローグとしては確かに長いんですが、11時間の作品の締めくくりとしたらこれでも足りないくらいです。
そう考えてみたとき、もしかするとアカデミー賞の選考でも「この作品は3部作が出そろったら全部まとめて評価しよう」と作品賞はお預けにしていたのか?との思いがよぎりました。そんなことを思わなかったとしても、無意識のうちに「王の帰還」の評価は3作全体を念頭に置いて考えてしまいそうです。
だいたい、第1作「旅の仲間」のあまりにも中途半端な終わり方を見たら、あの作品に作品賞はとうてい出せない…というより、後の2作を見てから評価しなくては失礼な気がしたかもしれません。今になって見直してみると、「旅の仲間」には以後への伏線が巧妙に張り巡らされていて、「次を見てみたい」と思わせる魅力に溢れた作品だと思います。
元々この映画自体が最初から3部作を前提に…というより、3部作すべてを並行して撮影していたというのですから、制作側からしても全てを見てもらった上で評価してもらいたかったはずです。そんな意味では賞を与える側、受ける側ともに納得のできる、満を持しての作品賞受賞だったのではないかと思います。
ところで、今回「王の帰還」はアカデミー賞史上最多タイの11部門を制し、結局3部作で合計延べ17部門を獲得したわけですが、その内容をよく見てみると、俳優陣が誰一人として賞を受けていないことに気づきます。とはいえ、これは俳優が活躍していなかったということではなくて、作品の世界全体が評価された受賞であり、特定の大物俳優の活躍で生まれた作品ではなかったことの表れだと思います。
私たちには想像もつかないほどの莫大な時間、人材、労力、資金をつぎ込んで作られた「ロード・オブ・ザ・リング」の3部作は、映画史上に残る名作と言っても過言ではないでしょう。これを超えるほどの感動を与える作品は今後出てこないのではないか?という気すら起きてしまいます。今後映画を見に行っても「あれと比べるとなぁ…」と思ってしまわないか心配です。しかし、そんな予想もしばしば嬉しく裏切られます。映画の価値は制作に費やした資源の量だけで決まるものではないはずです。これから将来、どんな素晴らしい作品が現れるのか。期待しましょう。
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