あまりにも熱いPrescott
Prescott版Pentium 4が発表されてから1ヶ月が経ちました。しかし、現在までにCPUのみで買える形で市場に出回っているのは、箱入りでは2.8EGHz版と未発表の2.4AGHz版、そしてバルク品の3EGHz版だけです。さらなる高クロック化を目指して内部構造に大ナタを振るったという噂なんですが、肝心の高クロックの製品がなかなか出てきません。発表はしたけどなかなか市場に出てこない…というのはこの業界では当たり前のように行われていることですから、「仕方ないなぁ」程度にしか思いませんが。
一方で、試用レポートは各メディアを賑わせています。パフォーマンス面でこれまでの同クロックのNorthwoodコア製品と大して変わらないことには前回にも触れましたが、それよりも問題になるのは異常なまでの発熱の多さ。「アイドル時でも40Wくらい消費」とか、「常時40度代後半」とか、シャレにならない記事が並んでいます。これまでは配線幅が狭くなると消費電力は下がっていたのですが、今回は上がってるんですよね。原因が微細化に伴う構造的な問題とも言える「漏れ電流」だけに、なかなか根が深そうです。
消費電力が大きいことは電気料金にも跳ね返ってくるはずですが、それ以前の問題として、この時期ですらそこまで熱くなってしまうCPUで蒸し暑い夏場を乗り切れるとはどうしても思えません。価格もパフォーマンスも(少なくとも当面の間は)同等なんだから、消費電力が低いNorthwood版の方がいいかも…という結論に達しました。
こだわりのクロック周波数
そんなわけで、マザーボードは買ってあったのにCPUは後回しにしていた私が買ってきたのはNorthwood版のPentium 4。クロック周波数は3.2GHzを選びました。約3万円で購入できるということで、私のようなパフォーマンス志向の人にとってはなかなかコストパフォーマンスの高い製品ですね。
実は、3.2GHzはずいぶん前から狙っていた数値です。というのも、これはベースクロック200MHzの4倍の4倍ですから。ベースクロックを2倍し続けるだけで作れるんです。これが例えば2.8GHzだと200MHzの4倍の3.5倍。3GHzでは200MHzの4倍の3.75倍…と、とんでもなく中途半端な数字になります。周波数がきっちりと割り切れた方が処理効率が良さそうな気がしてしまうのは私だけでしょうか。ともかく、「100MHzの4倍の4倍」だった1.6AGHz版のちょうど2倍の動作周波数ということになります。
CPUに合わせて、メモリも400MHz動作の可能なPC3200 DDR-SDRAMを2枚買ってきました。もちろんデュアルチャネルで使い、CPUバスと同じ6.4GB/秒で働いてもらうわけです。このクラスでは相性問題が結構シビアだとのことなので、徹底的に安いものを選ぶようなことはせず、512MB1枚で1万円弱のサムソン製チップ搭載品を選択しました。
2倍、さらにそれが2個?
同じSocket478用のPentium 4ですから、ヒートスプレッダの周波数刻印以外にはこれまで使っていた1.6AGHz版(写真左:3.2GHz版は右、以下同様)との外観上の違いはほとんどありません。
ただ、同梱のCPUクーラーはかなり違います。ファンが大型化され、中心には銅の柱が入っているようです。Prescottほどではないのでしょうけど、「熱さ」が想像できます。
外箱を見比べると、3.2GHz版の箱の右肩にはオレンジ色の2本線が入っているという違いがあります。これは、ハイパースレッディング技術に対応している印ですね。もうご存じの方が多いかと思いますが、ハイパースレッディング(Hyper-Threading;以下「HT」と略)技術とは、1個のCPUを複数個(現在は2個ですが)に見せかけて、複数のスレッド(Thread;Windows内での処理の実行単位で、プログラム中に複数定義できます)を1つのCPUで擬似的に並列に処理し、CPU内部の利用効率を上げることにより処理性能を向上させるものです。一つの工場に2つの資材搬入口があるのに例えられますね。
もともとPentium 4の内部実行ユニットは利用効率が高くない…というより、当初からHT技術を前提にして設計されていたためにそうなったようです。先の例で言うと、搬入口が2カ所予定されていた工場に、実際には搬入口が1つしかなかったとしたら、当然ラインの稼働率は落ちますよね。ただし、デュアルCPU環境とは違い実際にCPUが2個あるわけではないので、HT技術による性能の向上はせいぜい2?3割止まりのようです。また、明示的に複数スレッドを使わない限り高速化の恩恵が受けられない…というのはデュアルCPU環境と同じです。
セットアップ自体は超簡単…だけど
全く同じ形状のCPUを取り替えるだけですから、作業は実に簡単です。交換後に一度BIOS設定を初期値に戻して、「Hyper-Threading」の項目が有効になっていることを確認してからWindowsを起動すると、自動的に「2個のCPU」が認識されて、マルチプロセッサ用のWindowsカーネルがインストールされた後で再起動を促されます。
再起動後にタスクマネージャを開いてみると、「パフォーマンス」タブのCPU使用率グラフが2分割されていて、確かにWindowsが2個のCPUを認識していることがわかります。考えてみると、これだけセットアップが簡単だったのは、もともとWindows XPが複数個のCPUに対応しているからですよね。Windows 9x/Meでは複数個のCPUは扱えませんでした。Pentium 4の登場当初から実装されていたとも言われるHT技術が当初は無効にされていたのは、こうしたソフトウェア側のサポートが整っていなかったところに原因があったようです。
ところで、CPUを交換したらWindows XPが再アクティべーションを求めてきました。インターネット経由でのアクティべーションは認められず、またもマイクロソフトに電話をする羽目になりました。これまでの再インストールの場合と比較すると、CPUはハードウェアの同一性判断の重要なポイントのようです。ただ、手順は前回よりもずいぶん簡単でした。オペレータに電話がつながるところまでは前回と一緒でしたが、そこでこちらが読み上げる数字は最初の6桁だけになっていましたから。どうやらこの部分で対象製品の判別を行っているようです。
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