似て非なるもの
これまで、ブロードバンドの普及により浸透してきた常時接続環境を指して、「つなぎっぱなし」という表現を何度か使ってきました。一方、今回のタイトルは「つながりっぱなし」。同じことじゃないの?と思われる方もあると思いますが、私があえて表現を変えているのにはもちろん相応の理由があります。
現在提供されているほとんどのブロードバンド接続サービスでは、認証手続きにPPPoEと呼ばれる方法を採用しています。これは、”PPP on Ethernet”の略で、従来からダイアルアップ接続に使われてきたPPPという方法を、イーサネットを通して(「イーサネット」の説明は面倒なんですが、「LANケーブルのネットワークを通して」とほぼ同じ意味だと思ってもらえばいいんでしょうか)同じように行っている方法です。
ダイアルアップ接続がそうであるように、PPPoEによる接続でもインターネット上での固有の番号であるIPアドレスはその都度自動的に割り当てられるのが一般的です。限られたIPアドレス資源を有効利用するためにはよい方法なのですが、裏を返すと接続するたびにIPアドレスは変わることになります。ただし、自宅からインターネットを利用するときにはこれでも実害はほとんどなく、インターネット上での自分の位置を特定されないというセキュリティ上の長所も併せ持っています。
しかし、せっかくの常時接続だから、外出先から自宅のパソコンにもアクセスしてみよう……と考えてみると、この方法では困ったことになります。たとえ「つなぎっぱなし」にしておいたとしても、自宅がインターネット上でどこにあるのかがIPアドレスでは判別できないんです。つまり、内から外を「つなぎっぱなし」にすることは可能でも、外から内を見たときに「つながりっぱなし」とは言えない状態になっていたわけです。
価格破壊は続く
「つながりっぱなし」環境を実現する方法として、接続が更新されるたびにIPアドレスを外部に向けて登録し直し、同じドメイン名でアクセスできるようにする「ダイナミックDNS」と呼ばれるアプローチも存在します。しかし、もっとシンプルなのは自宅の回線に対して固有のIPアドレスを割り振ってもらう方法です。ただ、一般に「固定IPアドレス」と呼ばれることが多いこのサービスは、追加コストが非常にかさんでしまう場合が多く、これまで利用は全く考えていませんでした。
そんな中で、SSK WorldのWebスペースを借りているさくらインターネットから「さくらのフレッツ接続」というサービスが発表されました。NTT東日本・NTT西日本のフレッツ回線を通してのインターネット接続を月額1,000円以下で提供するもので、メールやWebスペースが別料金であることを考えればこれ自体は「ちょっと安いかな」程度の価格設定だと思うんですが、このサービスのすごいところは固定IPアドレスでの接続で追加費用を取られないこと。私の知っている限りでは、最も安価に「つながりっぱなし」を実現できるサービスでした。
もちろん選定基準は価格だけではなく、回線品質なども大事になるわけですが、「気に入らなかったらまた乗り換えればいいや」ということで、固定IPアドレスで使ってみることにしました。もともとさくらインターネットの会員なわけですから、申し込みはWeb上のフォームに必要事項を書き込むだけで終了。接続用のIDとパスワードが付与されて、サービスが利用できるようになります。
固定IPとは言っても、我が家の側で固定のIPアドレスを入力するわけではなく、PPPoEで接続するとユーザーIDとパスワードをチェックしてDHCPサーバーが毎回同じIPアドレスを割り振る仕掛けになっているようです。回線の品質については、今のところは問題を感じません。回線障害が全く出ないわけではありませんが、それはどこと契約してもときどきあることですしね。
つながりっぱなしにしたい理由
「つながりっぱなし」環境で私がやってみたかったのが外出先からのリモートアクセス。学生時代には、大学の研究室内にダイアルアップのリモートアクセスサーバーを立てて、下宿からモデムでつないでファイルを操作していたこともありますが、あの頃と比べれば回線速度が格段に速いわけですから、外出先からのファイル操作でもかなり快適な操作が期待できます。
さらに、Windows XP Professionalの場合はリモートデスクトップサーバーが標準装備されていますから、設定さえすれば自宅の自作タワー上のソフトを外出先から操作することも出来てしまいます。テレビチューナーの予約録画も出来ますよね。それどころかテレビ番組そのものも見られるかも知れません。日本のテレビ番組をインターネット経由で世界中どこでも見られることになりますからね。実は結構とんでもないことです。
他には、「つながりっぱなし」になればサーバーを自宅に置いて一般に公開できるようになります。Webサーバーをわざわざホスティングサービスで借りなくても、自宅にパソコンを1台用意すれば済むわけですね。ただし、この場合サーバーの保守管理は全て自分の責任。そう頻繁に問題が起きるとも思えませんが、ちょっとのお金でメンテナンスを任せることができて余計な気を遣わずに済むのなら、その方がいいような気がします。
オールインワン
リモートアクセスを念頭に置いて、ルータを新しいものに換えました。バッファローのWZR-RS-G54HPです。インターネット上を通すデータを暗号化して、遠隔地から仮想的にLAN接続を行うVPN(PPTPサーバー機能)に対応しているのが最大のポイント。本来ならパソコンに専用サーバーを設定する必要があるVPNが、ルータだけで実現できる仕掛けになっています。設定の容易さだけでなく、消費電力でも有利です。
基本機能面でも、Bフレッツの100Mbpsにも十分対応できる高速ルーティング能力を持ち、セキュリティ機能も充実しています。さらに、電波出力を強化したIEEE802.11g/b対応無線LAN機能も持っています。これ一台あれば私の必要な目的はほとんど達成できる、まさにオールインワンの製品です。2万円半ばの価格にも納得せざるを得ません。
インターネット接続の設定からVPNの設定まで、付属のCD-ROMとWebブラウザ上からの対話式操作で簡単にできるように配慮されています。こうした高度な製品を簡単に使えるソフトウェア技術こそがバッファロー製品の最大の強みのような気がします。もちろんハードウェアの品質にも抜かりないわけですが。
要らなくなってしまった無線LANのアクセスポイントは、既にお役ご免となっていたPCカードと一緒に売りに出しました。先にPCカードだけ売っても良かったんですが、あれは一揃えになっていた方が商品価値が高そうですから。
何でもできますが
外出先からVPNで自宅にアクセスする機能(PPTPクライアント)は、Windows XPには標準で用意されています。「新しいネットワーク接続」をウィザードで設定していけばできあがりです。
作成されたアイコンをクリックして、先にルータに設定したIDとパスワードを入力すれば、外出先からでも自宅のネットワークと基本的に同じ仕事をすることができます。本来VPNだとコンピュータ名でのアクセスはできないんですが、WZR-RS-G54HPでは専用のWebページを経由することによってコンピュータ名一覧からアクセスが可能です。自作タワーにリモートデスクトップでアクセスして、テレビ番組ガイドのWebサイトを開き、チューナーに番組を予約することもできました。
ただ、自宅内でLANを利用しているときと比べるとネットワーク速度が非常に遅いので、操作感覚まで全く同じとは行きませんね。その気になれば、AirH”からVPN接続することも可能なんですが、128kbpsではファイルのやりとりでもかなり待たされますし、リモートデスクトップはまるで牛歩戦術の国会中継です。無線LANのホットスポットを探して使うのが現実的ですね。
ちなみに、職場のLAN経由での接続をこっそり試してみたのですが、どうしても接続が確立できませんでした。どうも特殊な設定が必要なようです。もしかすると、それ以前にファイヤーウォールで通信がシャットアウトされているのかも。
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