方法は見えていたものの
我が家のネットワーク環境のなかで、残された最大の課題となっていたのが、「玄箱」の内蔵時計の精度の悪さ。いわゆるNAS(Network Attached Storage)である玄箱は、我が家のネットワーク内のどの端末からもアクセスできるハードディスクとして働いています。各端末とのデータの同期を行おうとすれば、より新しいファイルを判定するために、時計の精度は最も重要な性能の一つなんですが…。
普通なら、ここで「こんな欠陥商品は使い物にならない」と売りに出すことを考えますが、話はこれで終わりません。玄箱は一応NASキットとして売られていますが、その実体は超小型のパソコンそのもの。ディスプレイやキーボードなどのI/Oは持っていませんが、PowerPC系のCPU上でLinuxが動作しています。パソコンであるということは、その上で好きなソフトウェアを走らせることができるわけです。時計が不正確なら、ソフトウェアでこまめに修正すればいいのです。
同じことを考える人はいるもので、実際に玄箱上でインターネット経由で時刻合わせを行うNTPクライアントを走らせて、時計の精度を確保している例をいくつか読みました。ただ、これらの実例を読むと、玄箱自体に他のLinuxディストリビューションをインストールしているものばかりでした。玄箱に使われているLinuxは、MontaVista Linuxというものだそうで、普通のパソコンユーザーにはあまりお馴染みのものではありません。そこで、VineやDebianといった「慣れ親しんだ環境」を移してしまえ…ということになったようですね。ただ、時刻合わせさえできればいい…という私にとってはあまりにも大仕事すぎます。そこまでする気にはなれません。
玄箱に同梱されているCD-ROMには「binary」というフォルダがあって、その中には「ntp」という文字列を含んだ名前のファイルがありました。おそらく、これを何らかの方法でインストールすれば、Linuxの入れ替えをしなくても時刻合わせができるのではないか?と踏んでいたんですが、実現するためには勉強しなくてはならないことが多く、仕事も忙しかったりして、しばらくそのままにしてありました。
情報はアキバにあり
そんな中で、6月に秋葉原に出かけたときに、興味深い本を見つけました。それが←この「玄箱で遊ぼう!」(ISBN 4-89977-098-7)。最近「玄箱本」がいくつか出ているんですが、この本の内容は比較的初心者向けでわかりやすい気がしました。何より良いのは、標準のOSのままでいろいろなことをしてくれること。この本の場合でも、結局最後にはDebian化に走ってしまうんですが。
この本の中に、標準状態の玄箱にNTPクライアントを常駐させて時刻合わせをする方法も載っていました。細かく書くと長くなってしまいますし、だいたい本の無断引用にもなりかねませんから、ここではおおざっぱに示しておきましょう。
1. 玄箱同梱のCD-ROMに入っている「ntp-4.0.99g.tar.gz」ファイルを玄箱に転送、解凍する。
2. NTPサーバーとの接続を確認して、設定ファイルを作成する。
3. 動作を確認する。
4. 起動時に自動実行されるように設定し、玄箱を再起動する。
これらの作業をするのに使うのがtelnet(てるねっと)。直接操作できるインターフェースを持たない玄箱を、ネットワーク経由で操作する仕掛けです。画面を見るとわかるとおり、文字によるコマンドを打ち込んで操作します。学生の頃に大型コンピュータなどを扱った人には結構お馴染みのインターフェースなんですが、私の場合まず連想するのは10数年前のMS-DOSパソコン。ちょっと懐かしい感覚です。コマンドさえわかれば全然違和感も抵抗もありません。
ソフトで生まれ変われる
これで、玄箱内蔵の時計が「お茶目な昼行灯」から「寸分狂わない優等生」に豹変します。まあ、その実体はお茶目な時計に常に喝を入れている…というだけなんですが。一度自動起動を設定してしまえば、telnetの出番もなく、玄箱のシステムは勝手に時計を合わせ続けます。Web設定画面もこれまでと全く同じなのに、時計だけは正確。まるで生まれ変わったかのようです。
今回のNTPクライアントのインストールで、Linuxでのソフトウェア管理の基本的な流れはわかりました。他にもいろいろとできるのなら遊んでみたいと思うんですが、本来のNASとしての仕事はしてくれないと困ります。両立させるには、もう一台買うしかない?…さすがにそろそろ財布の中身がピンチだという話もあるので、すぐにはできませんけどね。
広い意味では自作パソコンである「玄箱」。懸案だった時計の精度を、ソフトウェアの導入によって改善しました。しかし、時計のことよりも、これまでの「NAS組み立てキット」から一歩先に踏み出す使い方を始めたことの方が重要なのかも知れません。
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