昨日・10日は、この日から公開になった映画「タッチ」を見に行きました。9月2本目、今年通算18本目の新作映画ということになります。年明けの頃に「月に2回は映画館へ」と立てた目標は、もう少しレベルの高い「月に2本は新作映画を」というところで実現できそうなペースです。まあ、先のことは全然わからないんですが。
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「タッチ」の原作は、1981年から86年まで週刊誌「少年サンデー」に連載されていた漫画です。85年から放送されていたTVアニメの印象も強いですね。そして、私にとって決定的だったのは、何故か高校の部室に単行本が全巻揃えられていたこと。これを読破して「タッチ」の世界を復習し、すっかりハマってしまいました。80年代を代表する作品の一つ…と言ってもいいくらい有名で、ご存じの方も多いと思うんですが、上杉家の双子の兄弟・達也と和也、そして隣の家に住む同級生の幼なじみ・浅倉南を中心に流れる青春ストーリーですね。
和也が、そして達也が甲子園を目指す野球モノのイメージがかなり強いわけですが、他にも実に盛りだくさん。ずっと一緒に歩いてきた三人でしたが、いつまでも「仲良しの三人」のままではいられないことにそれぞれが気付き、揺れる思い…それが一番根底に流れていたテーマだと思っています。その三人の関係は、唐突に、衝撃的な形で壊されるんですが…これ以上語るのは止めておきましょう。まだ知らない方はどんなメディアでも良いので是非触れてみてください。
そんな風にして既に原作の世界にどっぷりと浸ってしまっていた私にとって、「タッチが初めて実写映画化される」というのは大事件。それがどんなものかはともかく、是非この目で見ておきたくなりました。公開当日に映画館に足を運んだのは「電車男」のとき以来です。他のいろいろな都合もありますが、それだけ気になっていた作品でした。
映画は、ヒロイン・南の視点を中心にして描かれます。彼女を演じたのは、あのセカチューこと「世界の中心で、愛をさけぶ」などですっかり有名になった長澤まさみ。原作での南というキャラクターには才色兼備、しかもお茶目な子供っぽいかわいさまで持ち合わせた「完璧な彼女」というイメージがありますが、「長澤・南」はちょっと雰囲気が違います。
映画が長大な原作を2時間の中に凝縮したことで、彼女の多才さがそぎ落とされた面がある(だいたい、原作の南は野球部のマネージャーにとどまらず新体操部のエースでもありますからね)わけですが、その分かわいさの方が前面に出てきて、誰にでも愛される新しいキャラクターになっていたような気がします。男から見た「完璧な彼女」は、女から見ると逆に嫌われることも往々にしてあるようですし。
ところで、長澤まさみといえば、彼女は7月の静岡県知事選挙でイメージキャラクターとしてポスターなどに登場していました。最初にポスターを見たときは、国政選挙ならまだしも、まだ選挙権もない(18歳)彼女がどうしてこんなところに出ているんだろう?と思っていましたが、彼女は静岡県(磐田市)出身なんだそうですね。そのときに初めて知りました。どうも静岡県にはああいう王道を行く華やかな俳優が少ないイメージがありますが、彼女の存在を知ってちょっと嬉しくなりました。
一方、達也と和也を演じたのは、彼らと同じ双子の斉藤祥太、慶太兄弟。一人ずつでもいろいろなところで活躍している実力派若手俳優ですね。兄の達也を兄の祥太が、弟の和也を弟の慶太が演じるという配役は、別に彼らの兄弟関係を根拠に決めたわけではなく、素の彼らのキャラクターから当てはめたら結果的にそうなっていたのだそうです。実際に、映画の世界の中でそれぞれの持ち味はうまく出ていたのではないかな?と思いました。まあ、兄だ、弟だと言っても双子ですから、上下の感覚はないような気がしますが。
先にも少し触れたとおり、足かけ6年もの間毎週連載されていた作品をたった2時間に収めようというのですから、ストーリーの細かいところをそぎ落とすどころか、かなり重要な部分も削っていくしかありません。それ自体は、寂しいけれど仕方ないのかな…と思います。
しかし、そんな中でも嬉しかったのが、原作で印象に残っていた重要なシーンがいくつも映画の中でも忠実に再現されていたこと。今は自宅に単行本があるわけではないので正確なところはわからないのですが、台詞からカメラアングル…というかコマ割りまで、ほとんど漫画と同じはずです。制作の中でかなり意識したようですね。映画館で買えるパンフレットには、最も有名な3つの場面が映画と漫画の比較で載っていました。このパンフレット、内容が盛りだくさんの割りに500円と安いので結構お勧めです。
2時間に詰め込むことでストーリーが駆け足になるのも仕方ない気がしますが、原作を知っている目で見ると、印象的なシーンが次々に現れることで間を補完して思い出しながら見ることができて、懐かしいものがありました。
それなら、映画で初めて見る人たちにとってはどうなのか?なんですが、一番大事な流れはちゃんと押さえられていますから、話の流れに混乱することもなく、爽やかな青春映画として楽しめたのではないでしょうか。後から原作に触れると、さらに世界が広がっていくのを楽しめるはずです。そのときの感動は、私には得られないものです。何だかうらやましいですね。
映画館の館内には、私と同年代のオリジナルの「タッチ」世代の皆さんもかなりいましたが、それと同じくらい中学生や高校生らしき子たちもたくさん見かけました。あの子たちもきっと楽しんで帰って行ったはずです。こうして、違う世代の人たちが集まって同時に感動を分け合えるのは、映画館のおもしろさの一つだと思います。ところで、中学生から高校生くらいということになると、あそこにいた子たちの中に一人か二人くらいは「南」という名前の女の子がいたかも知れませんね。私たちの世代にとっては、それくらいインパクトのある作品でした。
特に最近になって、多くの漫画やアニメの実写映画化が進められてきました。原作ファンのイメージを壊してしまう作品があったり、無理矢理短い時間に詰め込むことでストーリーが滅茶苦茶になってしまう作品があったりするようですが、「タッチ」は原作を知っている人でも知らない人でも楽しめるのではないかな?と思いました。まだ見に行ってないあなた。気になったら是非見に行ってみましょう。ただ、一人で行くのはちょっと恥ずかしいかも知れませんけどね
映画「タッチ」を見に行きました。9月2本目、今年18本目の新作映画になります。1980年代を代表する作品の一つと言えそうな名作漫画の実写映画化です。原作を知っている人には懐かしく、初めて見る人には新鮮な感動を与える良い作品に仕上がっていると思います。
ところで、「タッチ」というタイトルは「バトンタッチ」のこと…というのはストーリーを知っている人には納得できる話ですが、揺れ動く繊細な心にそっとタッチ…という意味もアリですね。もちろん主人公の一人・達也の名前にも掛かっているわけです。このあたりはパンフレットの対談の中でも触れられていて、なかなか楽しめましたね。
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