…「凄いらしい。」と続くのが、劇団四季によるミュージカル「オペラ座の怪人」のキャッチコピーですね。フランスの小説家、ガストン・ルルーが20世紀初頭に書いた原作を元に、アンドリュー・ロイド=ウェバーが作曲したこのミュージカルは、1986年にロンドンで初演され、日本には1988年に上陸。それから20年近く経った今でも絶大な人気を誇っています。
日曜日・18日に、この「オペラ座の怪人」を見に東京・汐留の電通四季劇場「海」まで行ってきました。そもそもの始まりは、このミュージカルを元にしてロイド=ウェバー自身が制作し、今年公開された映画「オペラ座の怪人」。これを見て「ミュージカルも見てみたい」と書いた私に合唱団の方が声を掛けてくださり、そこからどんどん話が進んでこの日を迎えました。その後、出かける順番は入れ替わってしまいましたが「ライオンキング」、さらに「マンマ・ミーア!」とすっかり劇団四季付いている今年の私です。
今回「四季の会」会員先行予約で押さえていただいたチケットは実に17枚。東京まで出かけなくてはならないのに、こんなにたくさんの希望者が集まったのにはびっくりしましたが、もともとの舞台のファンに加えて映画公開による効果が大きかったのではないでしょうか。これだけいるとちょっとした団体様です。ちなみに、水上紫緒さんも、かば姉さんも今回ご一緒しました。お二人ともこの舞台を何回も見ている大ベテランさんです。既に、それぞれの想いを込めたコメントをアップされています。
劇場に行くと、その日の出演者一覧を小さな紙に印刷したものが配られています。正直なところ、私には劇団四季の役者さんたちはよくわからないんですが、この日オペラ座の怪人・ファントムを演じた高井治、ラウルを演じた佐野正幸の両氏は浜松市出身なのだとか。地元の人が全国区で活躍しているのを見るのは嬉しいことです。
特に、ファントムは音域の広い難曲の数々を張りと艶のある声で聴かせてくれました。純粋に音楽として楽しめましたね。映画版でジェラルド・バトラーが演じた、シャウトも織り交ぜて情熱的に歌うロック調のファントムも好きですが、クラシックの流儀で華麗にオペラ曲を歌いこなすファントムの方がより「オペラ座の怪人」らしい気がしました。
帰り道の車の中では、ベテラン組が俳優たちの歌や演技に対してかなり辛口の批評を繰り広げていました。初めてこの演目を見た私にはわからないところもありましたが、何度も見ている方だとどうしても毎回の出来栄えを比べてしまうところがあると思いますし、それぞれにこだわりの部分というのがあるのでしょう。ただ、そんな皆さんでも「高井ファントム」については一様に評価が高かったですね。劇団四季のオペラ座の怪人・ファントムは確かに凄いらしいです。
「オペラ座の怪人」と言えば、大仕掛けな舞台装置も見所の一つです。先に映画を見ている私は、特殊効果や大がかりなセットを使った映画の表現が、非常に限られた環境である舞台の上ではどのように作られているのかに興味がありました。実際に見てみると予想していた以上でした。簡単に場面が変えられる映画とは違い、同じステージの上から華やかさ、怪しさ…といろいろなものを表現しなくてはならないわけですが、見事に切り替えができていました。セットはもちろん、照明の効果も大きいような気がします。
一番の大仕掛けといえば、やっぱり巨大なシャンデリアでしょう。一番最初にステージの上から天井まで吊り上げられるシャンデリアは、第1幕の最後にファントムの「行けーっ!」という叫びとともに再びステージ上に落とされて火花を上げます。思っていたよりもずいぶんゆっくりで、「落ちていく」と言うよりは「降りていく」に近い感覚でしたが、安全基準などの問題で仕方ないのでしょうね。ただ、迫力をあまり感じなかったのは私たちが2階席で見ていたからかも知れません。真上からシャンデリアが「降ってくる」形になる1階席だとまた印象が違うのかも。
私たちの座っている観客席もセットの一部として積極的に活用されます。オペラ座の劇中劇では私たちの側に向かって演技が行われますが、その後舞台の後ろ側の視点に切り替わったときに、ステージの奥に大きな鏡があるのが見えました。1階席から見れば向こう側に観客席があるように見えるはずです…この点でも2階席はちょっと不利だったかも知れません。
ただ、2階席とは言っても舞台との距離は意外に近く、しかも高い場所から見ていますからステージ全体がよく見渡せて状況がよくわかりました。奈落などの仕掛けも微妙に見えちゃったりしますが、私のような視点で見ているとこれはむしろ楽しかったですね。ただ、できればもう一度、今度は1階席から見てみたいな…とは思いました。こうやってベテラン組の皆さんもハマっていってしまったんでしょうか?(笑)。
帰ってきた翌日・19日に、映画「オペラ座の怪人」コレクターズエディションDVDの特典ディスクに入っている、ミュージカルのドキュメンタリー映像の封印を解きました。この作品ができあがるまでの様々なやりとりを興味深く見ることができました。名作が生まれるときには、しばしば幸運な偶然がいくつも重なるものですが、そんなエピソードをいくつも聞くことができます。
1時間強のこの映像を見ていて一番の驚きだったのが、第2幕最初の仮面舞踏会のシーンで、階段に並んで踊っている人たちの中にダミーの人形が相当数混じっている…ということ。言われてみて、改めてプログラムに掲載されている写真を見ると、全員が決めのポーズを取っているのに何故か違うポーズを取っていたりして、確かに人形っぽいのが何人かいます。階段を歩くと振動で人形も揺れますから、意外にまともに踊っているように見えるのだとか。
さらに、映画本編ももう一度見直してみました。初めて見たときは縦横無尽の演出だと思っていた映画版でしたが、舞台を見た後で見直してみると、映画の演出は舞台をかなり意識していることがわかります。カメラワークも、観客席から舞台を見ている角度にかなり近いようです。DVDのメイキング映像によると、先ほども触れた仮面舞踏会のシーンは、舞台版が見劣りしないように映画版ではあえて衣装の色彩を白と黒基調に抑えたのだそうです。制作者が同じだからこその配慮ですね。
映画の日本語字幕はかなり物議を醸し、DVDでは劇場公開版から字幕を差し替えた部分もあるのだそうですが、同じように英語の原詩を日本語訳し、旋律との文字数合わせの制約もあり、しかもかなり意訳も入っているはずのミュージカルの歌詞ではそんな話を聞いたことがありません。最初は、ミュージカルの歌詞に慣れた昔からのファンが、映画を見て「これでは違う」と文句を言っているのか?と思っていたのですが、そういうわけではなかったようです。
仕事が大量に舞い込んでくる映画の字幕作りと比べると、ミュージカルの訳詞は腰を据えてじっくりと作り込めるはずで、これが決定的な差になると思います。しかし、単にそれだけではなく、ミュージカルの訳詞は、忠実に内容を訳すよりも、日本人にこの作品を楽しんでもらうためにはどうすればよいかを重視して考え抜いたものなのだと思います。私が今年見に行った3作品は、いずれも海外の原作を浅利慶太が和訳したものです。いつか彼がいなくなったときに、彼のような日本語詞が作れる人材はいるのでしょうか?。一抹の不安を感じます。
映画を見て、舞台を見て、また映画を見て…と繰り返してみたものの、未だによくわからないのは歌姫・クリスティーヌの気持ち。どうしてあそこで彼女はあんな行動に出たんだろう?と考え込んでしまう場所が、今でも数箇所残っています。特に、彼女はどんな思いを持って舞台の上でファントムのマスクを剥いだのでしょうか?。考えてみるほどいろいろな解釈が浮かんでしまいます。
しかし、これについては、何度見た人たちでも、評論を書くような人たちでもいろいろな意見があるところです。私たちに想像する余地を与えてくれていると言えそうですね。完全に明らかにしないからこそ面白いのかも知れません。
まあ、結局のところは「男には女心はわからない」というだけのことなのかも知れませんけどね。理解できなくてイライラする。でも簡単に透けて見えるようではつまらない。それでもやっぱり、気になるあの娘には自分の方に振り向いて欲しいんだよなぁ…男なんて、そんなものです。
今年前半からの念願だった、ミュージカル「オペラ座の怪人」の観劇レポートです。舞台そのものの感想は本編の方で読んでいただくことにして、ここではそれ以外の話に触れておきましょう。
今回も、「ライオンキング」のときと同じように、7人が(前回とメンバーは違いますが)自動車に乗り合わせて東京に向かいました。前回は2台に分乗でちょっと大変だったので、今回は8人乗りの1BOX車をレンタカーで借りました。車内ではいろいろな話で盛り上がり、ドライブとしても楽しめたのではないかな?と思います。一人でのドライブでこのくらいの距離を行くと、必ずどこかで眠気に襲われて仮眠を取らざるを得なくなるのですが、今回は絶好調でしたね。念のため買っていた眠気覚ましのガムのボトルも、全然出番がありませんでした。
もちろん東京までのルートは東名高速道路。東名高速といえば、某所でも話題になっていた海老名サービスエリアのメロンパンです。今回、味見をすることができました。とても美味しかったですよ。悪いけどささっちへのお土産はなし。焼きたてを自分で買って食べた方が美味しいんじゃないかな?と思ったので(笑)。
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