先月は、テレビや新聞などのニュースで「はやぶさ」という言葉を聞くことが多い月でしたよね。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2003年に打ち上げ、既に目的地である小惑星イトカワを周回していた探査機「はやぶさ」が、イトカワに着陸して試料を採取する…というとんでもないミッションに挑みました。3億kmも離れた宇宙で、無人の小さな探査機を長径数百mのいびつで非常に小さな小惑星に接触…非常に重力が小さいので「着陸」というよりこう言った方が適当かも知れません…させるというアクロバットです。月以外の地球外天体からサンプルを採取できれば史上初の快挙。注目が集まりました。
最初は11月20日にチャレンジしたものの失敗。その後11月26日には再度挑戦して「採取に成功」とのニュースが流れ、日本中が沸き立ちました。H-2Aロケットの不調など、どうも暗い話が多かった日本の宇宙開発の中で、「日本だってちゃんとできるじゃないの」と嬉しくなりました。もともと、宇宙での無人探査に必要なきめ細かい自律的制御は日本の科学技術の得意分野です。やってできないはずはない…と思っていました。
しかし、その後はやぶさとの通信が途絶。復旧を試みた結果、着陸時の影響かかなりの損傷を受けていることが明らかになり、期待していた試料も採取できていない可能性が高い…との情報が入りました。正直なところがっかりしたわけですが、これまでにもはやぶさはいろいろな新技術の実証や超近距離からのイトカワの観測で成果を上げています。着陸にチャレンジするところまで行けただけでも十分に凄いことです。拍手を送りたいと思います。
現在、はやぶさは地球に帰還させるための「救出モード」での運用中で、当初の予定だった2007年の帰還は3年延期されました。どうして3年も?となるわけですが、地球や他の天体との位置関係を考えて計画すると、これが最良のパターンなのだとか。燃料漏れが起こっているようですし、あまり無茶な帰還計画は立てられません。ちなみに、はやぶさはイトカワに向かう途中にも地球の重力を利用して加速する「地球スイングバイ」を利用して、使用する燃料を節約しています。
JAXAのWebサイトを見ると、はやぶさの帰還に向けた様々な試みが公開されています。読んでいくと、はやぶさが実にいろいろな緊急事態も考慮して設計されていることがわかります。例えば、地球との通信が途絶えたときでも、自動的に安定した姿勢を保とうとするように設計されています。地球から電波で指示を出したとしてもはやぶさに届くまでに10数分かかりますから、遠隔操作で対応するのでは全然間に合わない可能性もあるんですよね。これはまさに自律的制御…ということになります。1回目の着陸を中止して緊急上昇が行われたのも、はやぶさの「自主的な判断」だったそうです。
かなり厳しい状況の中でも、JAXAのスタッフたちが、考えられるいろいろな手段を講じて決してあきらめずに取り組んでいるのが伝わってきます。これまでの成果はもちろん、現在の姿勢にも敬意を表したいですね。決してあきらめないこと…私自身の中でも、常に心に問いかけて大事にしていきたい気持ちです。負けてしまいそうなことも結構多いんですが。
そもそも、日本の宇宙開発は、東京大学の研究所がルーツで宇宙や惑星の研究が中心の宇宙科学研究所(ISAS)、次世代の航空宇宙技術の研究開発が中心の航空宇宙技術研究所(NAL)、大型ロケットや人工衛星、国際宇宙ステーションなど利用に向けた開発が中心の宇宙開発事業団(NASDA)の3つの機関が進めてきました。これらが2003年にJAXAに統合されたわけです。余談ですが、学生時代の後輩で当時のNASDAに就職した人がいます。「入った」と聞いたときには、とても驚きましたね。今は連絡が途絶えてしまいましたが、いったいどうしているのやら。
基礎に同じような技術が必要な研究を、それぞれの機関が別々に研究してきたわけで、いかにも日本のお役所的な、縦割り行政を絵に描いたような存在に感じます。最近どうも失敗が目立ってしまったのも、そこに理由を求めたくなってしまいます。統合されてからトラブルが少なくなったのか?となると、まだ成果が出てくる段階ではないようですが、今後に期待しましょう。「三人寄れば文殊の知恵」とも言いますしね。
先月、小惑星イトカワに着陸して試料を採取する…という難作業にチャレンジした宇宙探査機・はやぶさ。無事地球に帰還できるかどうかが危ぶまれています。
現在は、帰還が3年延期されて、じっくりと復活に向けた努力が続けられているところですね。待っている3年の間に新たに損傷を受けるリスクもあるわけで、こればかりは幸運を祈るしかありません。はやぶさは、日本の技術者たちのチャレンジ精神の象徴だと言ってもいいと思います。是非帰ってきてほしいですね。
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