4月18日に東京ドームで行われた、プロ野球パ・リーグの北海道日本ハムファイターズ対オリックスバファローズの一戦。この日、ヒーローインタビューのお立ち台に上がったのは、満塁ホームランを含む2本塁打でチームの勝利に貢献した、ファイターズのSHINJOこと新庄剛志選手でした。そして、ここで彼はとんでもない発言で私たちの度肝を抜くことになります。
「今季限りでユニフォームを脱ぐことを決めました」。何と、ヒーローインタビューで引退宣言をしてしまったんです。もともと型破りな言動の数々で「宇宙人」とも評される彼ですが、引退の発表までもがあまりに型破りでした。この日1本目のホームランでの打法命名(これ自体も実に型破りですが)も、「28年間思う存分、野球を楽しんだぜ。今年でユニホームを脱ぎます打法」。少なくとも、お立ち台での思いつきではなかったことがわかります。
彼の「引退宣言」といえば、もう10年くらい前の阪神タイガース在籍時代に、「野球センスがないから」と言い出したのを思い出します。あのときは、拍子抜けするくらいにあっさりと引退宣言を翻したんですよね。今回も、球団側は慰留したい意向だ…ということで、引退宣言を撤回するかも知れないと思い、この件に関するコメントはしばらくの間控えていたんですが、今のところそんな素振りは全く見られません。どうやら彼は本気です。
最近は、私たちの側も、一見何も考えていないように見える彼の、内に秘めたしたたかな計算を読めるようになってきました。もともと、私の彼に対するイメージは「エンターテイメントとしてのプロ野球を最もよく実践している男」です。客を呼んで自分たちを見てもらう仕事ですから、喜んでもらうように演出をしていくのは当たり前。でも、主役はあくまでも野球のプレーですから、身体を鍛え、技術を磨いて、グラウンドで魅せるのが本筋。どちらも大事なことです。
特に、日本に帰ってきてからの彼は、この辺りのことを非常に強く意識していたのが見えました。しかも、単にプロ野球界を盛り上げるだけではなく、その中で自らを売り込むこともしっかりと両立させています…というよりも、自分の「客を呼べる能力」を十分に自覚して活用しています。日本球界復帰の場に、この年から北海道に引っ越したファイターズを選んだところからしてそうです。ファイターズにも、彼自身にも注目を集めることに成功しました。
その後も、試合前にチームメイトと一緒にかぶり物でのパフォーマンスをしてみたり、勝負を決める一打に「打法命名」をしてみたり(先にも触れましたが)…と、数々のパフォーマンスを繰り広げています。野球以外での露出もかなり多いわけですが、相変わらずの宇宙人っぷりを発揮し続けています。
その一方で、プレーそのものには至って真剣。豪快なホームラン、華麗な守備とレーザービームの返球から、オールスターで見せたホームスチールまで、プレーで魅せなくてはならないことをよくわかっている選手だと感じます。そんな彼の本音が垣間見えたな…と思ったのが、次世代を担う若手に厳しい言葉をかけたとき。単に自分が目立つだけではなく、チームや球界全体の未来のために、自らを引き継ぐような次代のスターが現れてほしいと考えていたのかも知れません。
彼は、今年の開幕戦で満員になった札幌ドームを見て、「僕の仕事は終わりと感じた」と引退を決意したそうです。入団するときに「ドームを満員にしたい」と語っていた彼にとって、公約も達成できた…ということなのでしょうか。現在のファイターズにも、他のどの球団にも、プレーの実力はともかく、それ以外の面も含めると「ポストSHINJO」は残念ながらまだいないと思います。でも、太陽が沈んだ後の夜空に星が見えてくるように、彼が身を引くことで誰かが出てくるチャンスが生まれます。それを期待するべきなんでしょうね。
それにしても、彼の引退表明にはやっぱり疑問の声が噴出しています。一つは、プレーでまだまだ活躍できているのに、どうして引退するのか?というもの。打撃はともかく、守備ではまだまだ長く一流で通用するじゃないか…という声もあります。でも、いぶし銀の守備職人に宇宙人キャラは似合わない気がしませんか?。彼が今引退するのは、SHINJOという存在を宇宙人のままにしておくためには必要な気がします。来年以降の彼にとっても、おそらくその方が有利でしょうね。この超ド派手なキャラクターは、芸能界が放っておきません。
もう一つは、リーグ戦の開幕から1ヶ月も経たないうちに引退を発表して、しかも今期中はプレーを続けることに対しての声。引退を決めた選手がプレーを続けるのは、これから半年間一緒に戦っていくチームメイトに対して失礼ではないのか?と言っていた人もいます。でも、これはむしろプラスに働くと思いますけどね。チームが一丸となって、彼に最後の花道を飾らせようと頑張るはずです。彼はそれだけチームに貢献してきたわけですから。それに、人間は期限を区切った方が意外にがんばれてしまうものですし。
さらに言うなら、興行面でもこの引退表明はプラスになりそうですね。今季のファイターズの試合は、これからすべてが「SHINJOの引退試合」なわけです。観客動員は確実に増えるでしょう。私だって見に行きたい!と思ってしまうくらいですから。「1軍デビュー戦の思い出の球場」として東京ドームを発表の場に選んだ…という彼ですが、マスコミが数多く訪れる点でも東京は有利です。一見ただの気まぐれのように見えて、これも球団への孝行なのかも知れません。
北海道日本ハムファイターズ・SHINJO選手が、今月18日に今季限りでの現役引退を発表しました。それも、普通なら球団事務所で記者会見…というパターンなのに、彼が発表した場所はヒーローインタビューのお立ち台の上。びっくりしましたよね。かつて阪神タイガースで「引退宣言」したときみたいに撤回するんじゃないか?と思って、コメントは控えていたんですが、そろそろ彼について語ってみましょう。
そういえば、彼はファイターズへの入団を表明したときにも、公式発表前に別のイベント会場で喋っちゃったんですよね。とことん型破りの変な男です。もちろん、その「宇宙人」なところが彼の魅力なんですが。変な男といえば、私自身もかなり変な男ですから、彼にはちょっと親近感も沸いてくるんですよね。彼のように、思いっきり変でも大事なところではカッコ良く決める…というテクニックを身につけられていれば、私の人生ももうちょっと変わったのかも知れないんですが(笑)。
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