つながりっぱなしだったけど
前回の記事から約1年間、外部から自宅ネットワークにアクセス可能な「つながりっぱなし」環境を維持してきました。職場のLANからの接続は、自宅のLANと職場のLANとでIPアドレスが競合していることにより、アクセスできなくなっていることが判明しました。VPN経由とはいえ、ソフトウェア的には同じLAN上に置かれるわけですから、こうなるのは当たり前ですよね。
自宅LAN側のIPアドレスの割り振りを変更したら、職場からでもつなげられるようになりました。まあ、あくまでもこれはテスト。公用のものを私用で使うのは良くありません。Winny経由の情報漏洩が問題になったりしていますし、疑われるようなことはしない方がよいかと思います。
ただ、実際にはリモートデスクトップは全然利用しませんでしたね。理由はやっぱり「遅い」の一言に尽きます。職場のインターネットアクセスはADSL接続で下りは約3Mbps、上りは800kbpsくらいの速度が出ています。無線LANのホットスポットでも、IEEE802.11bのみ対応の場所では実効速度はこれとほぼ同程度。このレベルだと、操作を待たされることも多く、使えないことはないんですが相当ストレスが溜まります。ましてや、AIR-EDGEの128kbpsレベルではもう論外。全然使い物になりません。
そこまで無理をして自宅のデスクトップで操作しなくてはならない理由も見つからなかったんですよね。前回に触れたテレビ番組の録画なら、携帯電話のメールを介したサービスがあります。さらに言うなら、ノートパソコンに十分な内蔵ハードディスクが装備されていますから、外出先から自宅のファイルにアクセスする必要性もほとんど感じられません。
リモートアクセスは要らないな…というのが現状での結論です。ただ、将来的にもっと高速でどこからでもつながる通信環境が実現すれば、結論は十分変わり得るものです。情報の保護の観点からも、ノートパソコンに重要なデータをコピーして持ち運ぶよりは、拠点に保管したデータを使うときだけネットワーク経由で読み込んだ方が有利なはずです。
相乗りするのか、されるのか
そんなときに、これまでとは全く別のところから、我が家のネットワーク接続環境は新しい動きを見せることになりました。きっかけになったのは「ひかり電話」。NTT東日本・NTT西日本が提供するIP電話サービスですね。
IPは”Internet Protocol”の略で、IP電話は「インターネットの技術で音声をやりとりする電話」ということになりますが、ひかり電話は実際にはインターネットを通るわけではなくNTTの専用ネットワークを使っていて、固定電話と同等の品質が保証されています。最近では、「IP電話」と呼んだ場合には、ひかり電話のように独自のネットワークで帯域保証した上で運用されるものを指し、「インターネット電話」とは区別されるようです。
今やすっかりお馴染みになったADSLは、銅線の電話回線を従来通り通話用に使いながら、その上にインターネット用の通信回線が相乗りする…というスタイルでした。IP電話は全くその逆で、インターネット用の通信回線の中に、通話用のデータが相乗りしていることになります。特に、インターネット回線が光ファイバーの場合、銅線の通信ケーブルは全く要らなくなります。100数十年の電話の歴史の中で、これは革命的な変化だ!と思うのは私だけでしょうか。
使わなくてもお得らしい
IP電話自体は、Yahoo!BBのBBフォンなど、既にいろいろな会社のサービスがあるわけですが、「全国通話料均一」や「安い国際電話」という広告が目立っていたこともあり、あまり固定電話で音声通話をしなくなっていた私にとっては、全然魅力が感じられませんでした。緊急通話(110番や119番など)が使えなかったり、「050」で始まる特別な電話番号が必要だったり…と、従来の電話回線と同じように使えなかったこともマイナス要因でした。
これと比較するとひかり電話は従来の回線から全く同じ番号での移行が可能で、緊急通話等にもかなり対応していて、ほとんど同じように使えるようになりました。それでも、依然としてわざわざ導入するほどのメリットもないな…という認識は変わりませんでした。
ところが、その後たまたま某電気店の店頭で話を聞いて、重要なポイントを見落としていることに気が付きました。現在使っている電話回線をひかり電話に切り替えると、基本料金も安くなるんですよね。加入電話の月々の基本料金は1,575円(税込み、1級取扱所)で、これに屋内配線使用料やサービス利用料などが加わります。これに対してひかり電話の基本プランは525円。実に月々1,000円以上安くなってしまうんです。これなら、極端な話、全く発信しなくてもお得になります。
ただし、これまで使っているBフレッツのままではひかり電話は使えず、「フレッツ・光プレミアム」への乗り換えが必須になります。新規に光ファイバーを引き込むのならプロバイダなどの「27,100円割引サービス」で実質初期費用はほとんどかからないんですが、人より先に光ファイバーを引き込んでしまったばかりに、切り替えには工事費等の費用が必要です。これが1万円近くかかるんですが、基本料金の差で1年以内に取り返せることになります。
似て非なる東と西
「フレッツ・光プレミアム」は、上り・下りとも最大100Mbpsの光ファイバーを直接自宅に引き込むサービスです。…と、こう書いてしまうとBフレッツ導入のときと全く同じ説明なんですが、実は全然似て非なるサービス。100Mbpsなのは宅内への引き込みだけで、そこから先は1Gbpsの帯域を複数回線で共有します。条件さえ良ければ、100Mbpsの速度が十分に生きてくる可能性があります。まあ、実際にはインターネットのそこかしこにボトルネックがあるわけですが。
しかも、各回線には通常のインターネット用に割り振られるIPアドレス以外にも、NTTのフレッツ通信網用に「IPv6アドレス」というのが割り振られ、テレビ電話などのサービスを利用することが出来ます。NTT東日本では「フレッツ.NET」としてオプションで提供されているサービスが、1Gbpsの回線(NTT東日本では「ハイパーファミリー」と呼ばれますが)に標準で組み込まれて提供されているのがフレッツ・光プレミアム…ということになります。
価格も含めて、この辺りの提供方法が東西のNTT地域会社で違うのも、別会社にしたからこそなんですよね。サービスが全国均一でないことよりも、他社との競争の中で独自のサービスが提供できるようになったことが良い方向に出ているのではないかな?と感じています。
ただ、東西でサービス体系が違うことで、困った面もあります。私がこれまで使っていたさくらインターネットの「さくらのフレッツ接続」サービスは、Bフレッツのハイパーファミリーには対応しているのに、フレッツ・光プレミアムには対応していません。さくらインターネットの本社は西日本の大阪にあるのに、どうしてこういうことになってしまったんでしょうか。プロバイダは他に乗り換えるしかありません。固定IPアドレスにこだわらなければ、ほぼ変わらない価格で移行できますしね。
これまでも安い維持費で、これまでを超えるサービスは受けられそうです。それなら乗り換えてみよう!…と思ったのは、実はまだ去年の12月のことでした。ここからかなり待たされることになってしまったんですよね。経過については、また回を改めて。
このコーナーでは1年3ヶ月ぶりの更新になります。我が家のブロードバンドに、久々に大きな変化が起こりました。とはいえ、今回は通信回線の速度に不満があって乗り換えたわけではありません。全く別の方向から検討した結果、回線を換えるしかなくなった…という方が正確なんですよね。
光ファイバーは今やパソコンのためだけのものではありません。電話の音声や動画だけでなく、オンデマンドのビデオやテレビ放送も光に乗ってやってくる時代になりました。小さい頃に思い描いていた「未来」に、一番近づいている分野かも知れません。
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