浜松市美術館で開かれている「山田卓司展」を見に行ってきました。美術館とはまたずいぶん高尚な趣味だ…と思われる方も多いかと思いますが、「山田卓司」という名前をご存じの方なら、どうして私が見に行こうと思ったのはきっとおわかりではないかな?と思います。
彼は模型作りを仕事にしている「プロモデラー」。…とだけ書いてしまうと地味な印象があるわけですが、テレビ東京系列の「TVチャンピオン」で、風景を丸ごと模型で作ってしまうジオラマを作る名人として登場し、一般にもよく知られるようになりました。この企画に付けられたサブタイトルが「情景王物語」。風景というより「情景」と呼ぶのにふさわしい、味わいのある場面を切り取るのが彼の作風です。
さらに、「~もの作りの聖地浜松から~」という副題も付いています。山田氏は地元の浜松市生まれで、現在も浜松で活動をしています。2004年の浜名湖花博では、浜松市の出展したミニ庭園展示で、浜松まつりの凧揚げをする人々のジオラマを制作しました。今回も、ご本人の多大なご協力の下でこの企画が実現したわけです。
前に、「モノづくり、大好き」という記事も書いたことがある私。彼のような人はまさにモノづくりの神様です。地元の誇る「情景王」の作品を間近に見てみたいと思ったんですよね。最近何かと忙しくてなかなか出かける機会がなかったんですが、ようやく今日見に行くことが出来ました。
館内の展示は、ジオラマ作品をテーマ別に分けたものになっていました。最初の展示は「ノスタルジックワールド」。昭和30~40年代の昔懐かしの情景を再現したジオラマが並んでいます。…といっても、私自身は直接体験していないわけですが、まさに昨年見た映画「ALWAYS~三丁目の夕日」の世界です。人々の表情が楽しかったですね。
一番のお気に入りは「炬燵の日」。こたつを囲んだ大家族が、全員同じ方向を見て笑っています。ジオラマの土台から外れた、私たちの見ている手前側にテレビでも置いてあるのが想像できます。炬燵の上のかごの中にはミカン。剥いた後のミカンの皮にも個性が出ているのがさすがです。
チケットにも印刷されていた「家族」という作品も面白かったですね。これは、山田氏が初めて自身を模型で作ったものだそうです。彼が作業机の前に座って、妻と娘に出来上がったジオラマを見せている姿です。見せている作品は何と「家族」。全く同じ情景が、ジオラマの机の上に載っています。
しかも、これが彼の作業机を再現した実物大展示の上に載っているんですが、机のうえに雑多に並んだ小物類の配置はジオラマの中そのまま。親ガメの上に子ガメ、子ガメの上に孫ガメ、ひ孫ガメ…という状態です。平行に置かれた鏡の真ん中に立ったような、どこまでも奥に吸い込まれていきそうな不思議な感覚が楽しめます。
映画やアニメに出てくる登場人物、ロボット、怪獣などの様々なキャラクターを作ったジオラマも数多く展示されていました。現実世界には存在しないものが主役になるわけですが、周囲の町並みや地形などは実にリアル。また、メカの壊れ方、汚れた泥の付き方なども実に本物そっくりです。現実世界とはかけ離れた世界でも、破綻させないためのリアルの保ち方があります。3次元CGの世界にもちょっと似たところがあるわけですが。
戦車などをメインにした、ミリタリー系の展示が最後を締めていました。兵器のジオラマは戦争と切っても切れない存在ですが、それでも見ていて思ったのは兵士たちの動きが生き生きとしていたこと。一番最初の昭和の人々からここまで、背景のいろんなものも、精巧なメカももちろん素晴らしかったんですが、一貫して大事にされているのは人間の温かみの表現なのかな?と思いました。だからこそ「情景」でものが語れるのでしょう。さすが、情景王。
2階の展示室を出て、階段を下りてきたところでびっくりしました。長身のやせ形で、眼鏡を掛けた男性が横切りました…どこかで見たことがあります。チケットの写真に写っていた山田卓司氏その人です。まさかご本人がいらっしゃるとは思いませんでしたね。
他のお客さんとお話中で、直接お話はできませんでした。本物の「情景王」のご登場に緊張してしまった…ということもあるんですが。時間も遅くなってしまったので、結局そのまま帰ってきてしまいました。ちょっともったいなかったかも。
この「山田卓司展・情景王物語~もの作りの聖地浜松から~」は、来週日曜日・5月28日まで引き続き浜松市美術館で公開されています。是非是非ご覧ください。年齢やご趣味などの違いにかかわらず、多くの皆さんに楽しんでいただける企画ではないかな?と思います。
浜松市美術館で開催中の「山田卓司展・情景王物語~もの作りの聖地浜松から~」を見に行ってきました。模型で表現された「情景」・ジオラマの世界にどっぷりと浸ることが出来ました。家族連れをたくさん見かけましたが、別に子供だけではなく、多くの人々に楽しんでいただける企画ではないかと思います。あと1週間、28日まで展示は続きます。終わる前に是非ご覧いただけると良いな、と思います。
ところで、今回の記事の右上に表示されるGoogle AdSenseリンクユニットの広告キーワードを見たら、「アート」「ガンダム」「おもちゃ」「ゲーム」となっていました。どれも、本文には一度も使っていない単語なんですが、確かに今回の話題には関係の深いキーワードばかりです。ロボットによる自動検索で、ここまで正確に内容を理解しているとは…恐るべし、Google。
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