ケータイにもWindows

共通点と相違点

前回の記事で、ウィルコムの新型スマートフォン・ZERO-3[es]を購入してしまったことを告白したわけですが、この[es]に限らず、W-ZERO3シリーズを語る上で重要なキーワードの一つが「Windows Mobile」。ZERO-3シリーズには、「Windows Mobile 5.0 for Pocket PC」と呼ばれるOSが採用されています。その名前からもわかるように、パソコン用のOS・Windowsシリーズであまりにも有名なMicrosoft社が、携帯情報端末向けに提供しているOSです。

ZERO-3[es]にWindowsを探す;拡大画像サイズ:36.5KB

ケータイも最近は非常に高度なコンピュータと化していますから、そこにOSが介在しているのは当たり前なんですが、普通のケータイを使っている限りでは、その種類を意識することはありません。しかし、[es]を見ているとWindowsパソコンでもお馴染みのシンボルの数々が目に付き、必然的にOSを意識させられます。

方向キーの左上にはWindowsキー、画面の左上にはスタートボタン。方向キーの左下には、Internet Explorerのアイコンが書かれたボタンもあります。これら一つ一つが、まさに私たちの期待通りの動作をしてくれます。2.8型の液晶画面はタッチパネル付きですから、付属のスタイラスや指でスタートボタンを押せば、Windowsキーを押すのと同様にスタートメニューが現れます。

押しても閉じない「×」ボタン

Windows MobileのWindowsたるところはそのユーザーインターフェース…と言えそうですが、微妙に違うところもあります。例えば、プログラムの起動中には右上に「×」ボタンが出てきますが、パソコン用のWindowsとは違い、このボタンを押してもプログラムは終了せずにメモリ上に残ります。終了させるためには、きちんと各プログラムのメニュー等から終了操作をしなくてはなりません。

複数のプログラムが起動した状態だと、メモリが足りなくなって動作に支障を来すかも知れません。[es]の場合は、ケータイの待ち受け画面に相当する「Today」画面から、起動中のプログラムの数や消費メモリを確認する画面が呼び出せるので、適宜管理をしましょう。…こんな面倒なところまでパソコン用のWindowsと似なくて良いのに。

優位性と危険性

いきなり「プログラム」などという表現をしましたが、Windows Mobileのメリットの一つが、ユーザーがプログラムを追加して、端末としての機能を増強できること。とは言っても、パソコン用Windowsのプログラムがそのまま動作するわけではありません。名前は同じ「Windows」でも、中身は別物。Windows Mobile用に作られたプログラムを使うことになります。従来のケータイでもJavaアプリなどを使って機能を追加できるものがありますが、Windows Mobile端末ならもっと大規模で強力なパワーアップが可能です。

しかも、このプログラムの開発が、パソコン用Windowsのプログラム開発環境と非常に近い形で可能になっています。パソコン用Windowsにプログラムが書ける人なら、Windows Mobile向けにも書けるはずです。このため、Windows Mobile向けには個人プログラマによるプログラムが結構たくさん揃っています。既にZERO-3を対象にしたものが数多くありましたし、さらには10キーを備えた[es]ならではの「片手で操作できる」ことにこだわったものも出てきています。かゆいところに手が届く…という意味では、こういう「日曜大工プログラム」は実に強力です。

ただし、これらのプログラムは動作の信頼性でどうしても市販パッケージにはかなわない部分があります。不具合が発生するリスクも抱え込んでしまいます。また、潜在的にプログラマ人口が多いということは、ウイルスやスパイウェア等の悪意のあるプログラムを作れる人も多いことになりますから、これらの攻撃を受ける危険性も高くなります。開発環境がオープンであることの長所と短所は表裏一体ですから、仕方ないんですけどね。

ウィルコムストア

生まれ変わった「Today」画面;拡大画像サイズ:55.4KB

自由度と複雑度

現在の私の[es]のToday画面を見ると、初期状態(先の写真の画面)とずいぶん違うことがわかります。Windows Mobile標準でも配色やToday画面の背景、そこに表示するアイテムなどを変えることが出来ますし、さらにToday画面に新しいアイテムを加えるプログラムも導入できます。Today画面に限らず、プログラムを追加すればどんどん機能拡張をしていくことが可能。普通のケータイにはとても真似できない技です。

特に、動作設定が書き込まれたファイルであるレジストリを書き換えれば、非常に細かい設定を変更することが出来ます。このあたりの構造はパソコン用のWindowsと基本的に同じ。その気になれば、普通はWindows Mobileでは変更できない、画面表示用のフォントなども変えることが出来てしまいます。ただし、レジストリを変に書き換えてしまうと、動作全体に不具合が出てしまうかも知れません。設定変更用に作られたプログラムを利用した方が無難ですね。

自由度が高いと言うことは、裏を返すとそれだけ手を入れられるところが多いわけです。全貌を理解するのは至難の業。ただでさえ最近のケータイはマニュアルが分厚くて大変なのに…。まあ、隠されている機能を少しずつ暴いていく宝探しだと思えば、これもちょっとした楽しみです。

Windowsケータイは根付くのか?

見回してみると、ZERO-3シリーズと同じようにWindows Mobileを採用して、通話も通信も出来るスマートフォンが国内でも脚光を浴びつつあります。NTTドコモは、企業向けに用意していたWindows Mobile採用のFOMA・hTc Zを個人向けにも販売し始めましたし、ボーダフォンから生まれ変わったソフトバンクモバイルも、受信1.8Mbpsの高速3Gに対応したX01HTを発売しています。さらに、auまでもがスマートフォンを準備中だという噂も。

ただ、これらは市場である一定の位置は占められるかも知れませんが、幅広く受け入れられるのか?と考えると正直なところ疑問です。企業用に必要なプログラムをあらかじめ組み込んで使うのなら、高度なカスタマイズが出来ることが強みになります。しかし、個人用に使おうとすると、「どんなプログラムでも入ってしまう」Windows Mobileには安全性への不安の方が大きいのではないでしょうか。パソコン用Windowsの難しさや危なさの部分を中途半端に受け継いでしまっているような気がします。

私自身が既にWindows XPが普通に動作するパソコンを持ち歩いているからかも知れませんが、「普通のケータイじゃなくてWindows Mobileでなくては」という場面が見えてこないんですよね。潜在能力が低いわけではないと思いますから、あとは売る側がハードウェア、ソフトウェア、サービスなどを組み合わせながら、Windows Mobile端末を使いたくなるシーンをどのように演出できるかが普及の鍵になるのではないでしょうか。

今回は、ZERO-3シリーズにも採用されていて、スマートフォン用のOSとして最近元気の良いWindows Mobileを話題にしています。

その名前からパソコン用のWindowsを連想してしまうわけですが、操作性などの一部で似たところはあるものの、中身は全くの別物です。全体的に厳しい評価の文章になってしまいましたが、かなり突っ込んだところまでいろいろな設定がいじれる点で、「オトナのおもちゃ」としてはもう最高レベルですよね。時間にもう少し余裕が出来たら、いじくり回しまくって(笑)みたいところです。

今回は、文章があまりに長くなりすぎるので触れませんでしたが、このOSが「Windows」を冠している大きな意味がもう一つあります。それは、Windowsパソコンとの連携を強く意識している…ということ。私も、パソコンとのコンビネーションで活用しています。これについては、また回を改めて触れてみようと思っています。


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