もう1ヶ月以上前になりますが、11月1日に行われたプロ野球・日本シリーズ第5戦で、中日ドラゴンズが北海道日本ハムファイターズを下し、4勝1敗で53年ぶり2回目の日本一となりました。この試合では、地元・浜松の河合楽器野球部出身、ドラゴンズの山井大介投手が先発し、8回表終了まで一人の走者も出さない快投を見せましたが、9回表には岩瀬仁紀投手にスイッチ。彼も三者凡退で最後を締めて、継投ではありますが日本シリーズ史上初の「完全試合」を達成しました。
この継投策がいろいろと物議を醸したわけですが、ベンチでは、コーチから「体力、握力はどうだ?」と聞かれた山井投手が、自ら「代わります」と答えたのだとか。さすがに、あの「オレ流」落合博満監督といえども、山井投手が快調に8回を投げきっていたのなら、あえて交代させることはしなかったはずです。
個人の記録とチームの勝利、どちらを優先するのか?という論調で語られる中、監督は「オレだって完全試合は見たかった」と答えた後で、全く違う切り口を見せてくれました。「いけと言って、また肩でも壊れたらあいつの野球人生は終わる。周りはそういう責任は感じてないからね」(中日新聞、11月3日)。山井投手は、今シーズン途中に肩の故障からカムバックしてきたばかり。クライマックスシリーズ中にも肩を痛めて投げられなかったようですね。
プロスポーツの監督は、商売道具である身体を磨り減らして生計を立てている選手たちの人生を預かっている…といっても過言ではないでしょう。プロ野球界初の日本人1億円プレイヤーでもあり、カネにはとことんこだわった落合選手。現役時代に、ある意味最もプロらしい選手であった彼は、選手たちをあらゆる意味で「最もプロらしく扱う」監督になったようです。
今年のセ・リーグのペナントレースでは、終盤に壮絶なデッドヒートが繰り広げられた末、読売ジャイアンツが5年ぶりにリーグ優勝を勝ち取りました。しかし、今年からは日本シリーズに行くためには「クライマックスシリーズ」というプレーオフを勝ち抜かなくてはなりません。リーグ戦では2位だったドラゴンズは、3位・阪神タイガースとの第1ステージで2連勝。第2ステージのジャイアンツ戦でも3連勝し、日本シリーズへの出場権を得ました。
今年から始まったシステムだとはいえ、セ・リーグでリーグ優勝していないチームが日本シリーズに進んだのはこれまた史上初。当事者たちが話し合って決めたシステムですから、そこに不満を言うべきではなくて、与えられた中でどのように戦っていくのかが大事だと思います。特にジャイアンツの渡辺会長は見苦しかったですね。自分のチームが敗退した直後のあのタイミングでは、たとえそれが正論だとしても、単なる負け惜しみにしか聞こえなくなってしまいます。
ドラゴンズの日本一は、監督も、選手も、ファンもどこかすっきりしないものを抱えたままのものだったのではないでしょうか。私としては、もちろん生まれて初めてのドラゴンズの日本一は嬉しいんですが、ドラゴンズには今度はどこからもケチの付かないリーグ優勝からの日本一を達成してほしいと思います。それが来年になるのか再来年になるのか、それともまた半世紀以上も待たされてしまうのかはわかりませんが…。
日本シリーズの終了後、11月8日からアジアシリーズが開幕しました。日本・韓国・台湾・中国の代表が、「クラブチームアジア一」を賭けて戦います。日本代表は日本一になったドラゴンズだったんですが、初戦の韓国代表・SKワイバーンズ戦で、このシリーズ3年目にして日本チームとしては史上初…という黒星を喫してしまいました。
その後は何とか2勝して予選リーグ2位で決勝に進み、決勝戦でも再び対戦することになったワイバーンズを僅差で破って優勝しました。史上初めて優勝を逃す…ということにはならず、ほっとしています。いずれは日本代表が敗れるときが来なければ、野球というスポーツのグローバルな発展はないと思うんですが、まだその時期は来ていない気がします。それにしても、ドラゴンズは優勝するために一度は2位にならないと気が済まないんでしょうか(苦笑)。
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