日本語の10年


今日・1月11日に「広辞苑」の第六版が発売されました。百科事典のようにも使える国語中辞典の代表として、確固たる地位を築いている広辞苑ですが、第一版が出たのは1955年だそうで、その歴史は50年ちょっとということになります。私は第四版を持っていますし、紫緒の実家には第五版が置いてあります。10年ぶりの改訂ということで、文章書きにこだわる私たちとしては迷わず予約注文。無事我が家に届きました。


私にとって、広辞苑は「日本語の基準」と言っても過言ではありません。記事を書くときに、言葉の意味でちょっと迷うところがあれば、本棚からあの分厚い広辞苑を引っ張り出してきます。「現代用語の基礎知識」のような新語辞典とは違い、広辞苑に載ることは「日本語として定着している」と認められた…と言っても良いと思っています。
そんな広辞苑が、今回追加した単語は10,000語にも及ぶそうです。書店で配られていたパンフレットに、追加された単語の一例が並べられていました。また、広辞苑のWebサイトでも紹介されています。見ていくと、既にすっかり定着したと思っていた言葉が、実は初収録だった…というものが多いですね。
ADSL、IP電話、ワンセグ、サイバーモールといったIT関係の単語が目に付きます。看護師、認知症、准教授などの言葉は、この10年間で作られたものですね。9・11事件や自爆テロ、敵対的企業買収などの、歴史を物語る単語も目立ちます。うざい、らしくない、めっちゃ…など、いかにも今風の言い回しも、広辞苑の日本語の仲間入りをしました。だからといって、積極的に使おうともあまり思わないんですが(笑)。
ひとつ注目しておきたいのが人名。広辞苑では、日本人については物故者であることが掲載基準の一つになっています。つまり、追加された日本人の一覧は、この10年間の墓碑銘とも言えます。90歳を超えてもタクトを振り続けた朝比奈隆、「世界のSONY」を作った井深大、インスタントラーメンで世界の食生活を変えた安藤百福…一つの時代を作り、私たちにいろいろなものを残してくれた人たちが、世を去っていきました。


広辞苑で言葉を調べていると、前後の項目で目に留まった項目をついじっくり読んでしまうことがあります。また、説明文の中身が気になって、そこから別の項目を引いてみることがあります。気が付くと、ずいぶん時間が過ぎていることもありますね。この「広辞苑サーフィン」、自分の知識の幅がずいぶん広がった気がして、結構楽しめますよ。
なお、広辞苑にはDVD-ROMやケータイ版もありますが、是非製本されたものでやってみてください。電子版には、目的の項目に正確に、早くたどり着ける良さはありますが、偶然何かを見つける楽しさには欠ける気がします。

広辞苑の予約特典に、「広辞苑一日一語」という小さな本が付いてきました。広辞苑から366の言葉を選んで、季節の流れに合わせて毎日1語ずつ、意味を説明していく…という趣向になっています。日付と言葉の対応がなかなか楽しいですね。1月1日が「元旦」、今日・1月11日が「鏡開き」、2月29日に「閏(うるう)」があったりするのはごく普通ですが、1月3日が「三日坊主」、3月14日が「円周率」(π=3.141…ですね)…というあたりは洒落が効いています。美味しい特典でした。


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