3月上旬から行われていた、野球の国・地域別対抗戦であるワールドベースボールクラシック(WBC)は、日本の2連覇という結果で幕を閉じました。3年前に続いて2回目となる、まだ歴史は浅い大会なんですが、おそらく潜在能力では世界最強であろうアメリカ・メジャーリーグの選手たちが堂々と出てくる唯一の国際大会…ということもあり、世界一の国を決める大会としてのClassic(ここでは「格式のある」でしょうか)な存在感はあるかな、と思います。
対戦チームが偏ってしまう、とても不思議な選抜システムは改善されず、おかげで今回は日本×韓国戦が5度も行われることになってしまいました。元々感情的なこじれもある両チームなだけに、ある種遺恨試合の様相を呈していました。幸い、対戦成績は日本の3勝2敗となり、前回のように優勝チームが負け越す(日本1勝、韓国2勝でした)…ということにはなりませんでしたが、韓国からすれば2度も下している相手が「世界一」というのは納得しがたいかも知れません。
前回予選落ちの屈辱を味わった開催国・アメリカは、今回はさすがに決勝トーナメントに進んできましたが、準決勝で日本に敗退。またしても優勝することができませんでした。MLBが主催し、自らの世界最高の実力を証明したいはずの大会で、未だ決勝戦進出すらゼロ…というわけで、これでは彼らからすれば格好が付かないはずです。
4年後に行われる予定の第3回大会に向けて、アメリカはさらに本気で臨んでくるのか、試合のシステムにテコ入れをするのか。まさか、また新たな大会を作ってしまうことはないと思いますが…自らの地位を守るためにはなりふり構わないお国柄のような気がしますし、どうなるか注目しています。
WBCの日本代表は、プロ野球12球団の中から選手を選抜したオールスター。普段はそれぞれのチームの主力として働いている選手たちが、この大会のために集まって、新しいチームを作ります。
ただ、今回ちょっと寂しかったのは、我らが中日ドラゴンズだけからは選手が一人も出なかったこと。球団が「公式戦に向けて選手を温存している」などと批判を受けることになりました。事前に打診された選手それぞれに、体調などそれなりに事情はあったのでしょう。「今の状態では十分に働けない」と判断して辞退するのも、これはこれで大変なことのはずです。
時には秘密のサインを送ったりして、連係プレーが重要な競技である野球で、急造チームは必ずしも有利とは言えないような気がしますが、そこはさすがにトップレベルの選手たち。短期間の合宿だけでもちゃんとチームとして仕上げてきます。
そして、何より「日本代表として戦う」という思いが、チームの結束をさらに強くしているように見えます。このあたりは、昨日もワールドカップのアジア最終予選を戦ったサッカーの日本代表と同じですね。
サッカーでは以前からそうでしたが、野球でも日本代表という場が与えられたことが、普段のリーグ戦を戦う中でも新しい動機付けになっているのではないかな?と思っています。実力をアピールできれば、リーグ戦でのチームの順位とは関係なく注目してもらえます。実際に、WBCでもリーグ戦ではパッとしなかったチームの選手に活躍の場面がありました。敗者復活のキューバ戦や決勝の韓国戦での岩隈久志投手(楽天イーグルス)の活躍は、仙台で彼のピッチングを見たこともあるだけに嬉しかったですね。
誰もが日本代表を目指してがんばっているわけでもないのかもしれませんが、それが目標にしたくなるような魅力を持った存在であることは間違いないと思います。まさに「日の丸の魔力」です。
「日本代表」の言葉に特別な意味を感じてしまうのは、選手たちばかりではありません。応援する側の私たちも、特別な思いを持って見ていますよね。プロ野球も、サッカーのJリーグも、かつてのような熱狂的な人気はなくなっているような気がしますが、それでも日本代表の試合となると注目度が上がります。
WBCのアメリカラウンドでは、試合が平日の午前中から昼間に行われることになり、仕事中の私は生中継を観戦するわけにはいきません。それでも、移動中のラジオのニュースに耳を澄ましたり、昼休みだけでもテレビを見たり…と、情報収集に懸命でした。出張先の皆さんも、ケータイのワンセグ放送でチェックしたりして、何だかそわそわしていましたから、これは私だけの話ではなかったのでしょう。
野球やサッカーに限らず、あらゆる競技の国際大会では、ルールなどは全然知らなくても、日本人選手や日本にゆかりのある選手をついつい応援してしまいます。日本という国との関係が、自分たちと遙か遠くの存在である選手たちを一番簡単に、幅広い範囲で結びつけられる根拠である…とも言えます。これまた「日の丸の魔力」です。
ところで、この「日の丸」が日本の国旗として法律で定められたのは1999年のこと(「君が代」の国歌としての扱いも同じ)だそうで、意外に新しい話です。Wikipediaによると、白地に赤い丸の描かれたこの旗が日本の国を示す旗印として確立したのは江戸末期の開国以降らしいですね。それ以後の歴史の中で、日本の国旗と国歌の扱いはどうもこじれてしまったようです。
特に学校教育の現場などで、日の丸と君が代に対する扱いにはいろいろとデリケートな問題もあるわけですが、一つの記号で1億数千万人の人々の間に連帯感が生まれる効果は、少なくとも悪いことではないと思います。様々な競技の国際大会で、君が代の演奏に合わせ一番高い場所に掲揚される日の丸を見る機会は、これからもどんどん増えてほしいものです。
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