日本プロ野球のペナントレースが、いよいよ大詰めです。パ・リーグでは、北海道日本ハムファイターズがリーグ優勝へのマジックをコツコツと減らし、優勝決定は時間の問題。クライマックスシリーズ(以下「CS」)絡みでも、ポイントは第1ステージの舞台が福岡になるのか、仙台になるのか…というところに絞られました。
8月以降の快進撃でBクラスからここまで追い上げた東北楽天ゴールデンイーグルスの方が有利な気がしています。選手たちも、ことあるごとに「CSを仙台でやりたい」と口にするようになり、すっかりその気です。目標にすること自体はいいと思うんですが、今年あまりに勝ちすぎてしまうと、来年度以降どこか(特にフロント)で勘違いが生まれないか心配ですね。まだリーグの頂点に立てるほどのチームではないような気がします。
一方、セ・リーグは既に読売ジャイアンツがぶっちぎりのリーグ優勝を決め、中日ドラゴンズも2位を確定させています。問題は残り1チームがどこになるのか。阪神タイガースが進出すると3年連続で3チームが同じ顔ぶれになってしまうので、CSの存在意義としてはそんな事態は避けてほしいんですが…。
でも、半年以上戦ったリーグ戦の意義を激減させてしまう、こんな困ったシステムを無くすためには、借金を抱えたタイガースがCSを勝ち抜き、日本一になってしまうくらいの理不尽が起こった方が良いのかも知れません。そうなれば、リーグ戦は3連覇しているのに1度しか日本シリーズに出られないことになるジャイアンツが、積極的に「CS潰し」に動いてくれるはずです。
それでも、やっぱり私としてはドラゴンズを応援したくなってしまいます。先にも触れたとおり、今年は既にリーグ戦2位を確定させて、CSの第1ステージはナゴヤドームでの開催が決まっています。残りゲームは11日の東京ヤクルトスワローズ戦を残すのみ。12球団で最も早く試合を消化してきました。
一時はジャイアンツに肉薄するところまで行ったんですが、気がつけばゲーム差は10以上。すっかり独走させてしまいました。どんなに白熱したペナントレースでも、最終的には優勝したチームがかなりの差をつけていることが結構あるんですが、今年は優勝争いの終戦はかなり早かった印象があります。
私自身、3週間前・9月13日のWeekly SSKで、早くもドラゴンズから優勝争いの闘争心がなくなったのでは?という話を書いています。あのときにも触れたとおり、チームの最終目標を日本シリーズでの勝利→日本一というところに置くのなら、ペナントレースでの優勝には必ずしもこだわる必要はなく、CS出場が決まればあとのリーグ戦は調整…という割り切りだってあり得ます。
ジャイアンツのリーグ優勝は、ドラゴンズとの対戦で3連勝して決まりました。あまりにあっさりと決まってしまい、さすがにこのときは悲しかったんですが、逆に「死んだふり」をしているだけなのでは?という不気味さもありました。もっとも、選手たちは常にグランドにいるときは本気でプレーするしかないわけで、手綱を押さえ込んでいる人がいるとしたら、それはベンチにいる誰かです。
ドラゴンズのあのときのあまりにふがいない戦いが、実は「死んだふり」だったのか、それとも本当に為す術がなかったのかは、今月中にはわかるはずです。まあ、注目しましょう。
リーグ戦の順位が決まっても選手たちのモチベーションをつなぎ止めるものの一つが、個人のタイトル争い。今年のドラゴンズには、個人タイトルを狙える選手がかなりたくさんいます。投手では最優秀防御率のチェン投手、最多勝の吉見一起投手、最多セーブの岩瀬仁紀投手に可能性があります。野手では今年から加入したブランコ選手が本塁打王をほぼ確実にしている上に、森野将彦選手と打点王を争っています。荒木雅博選手の盗塁王獲得はかなり厳しくなったかも。
タイトル争いをしている好成績の選手が多いということは、それだけチームの勝利に近づけるわけです。しかし、タイトル争いがチームの勝負と切り離されたところで走り出すと、個人のためにチームのバランスを崩したり、さらにはライバルの足を大人げない方法で引っ張ったり…という、ちょっとおかしなことになってきます。昔から、タイトル争いが絡んだドラマも結構見てきました。
かなり早い段階でリーグ戦の順位が確定したドラゴンズでは、このちょっと見苦しい状態が既に出ています。3日の試合では、先発のチェン投手が4回を1失点に抑えて、2点リードの状態で降板。5回からは吉見投手が今季初めて中継ぎでマウンドに上がり、16勝目を挙げました。これなら、先発で5回を投げきるよりは簡単に勝ち星がもらえます。タイトルを獲得できる選手が多ければもちろん嬉しいんですが、変な小細工や足の引っ張り合いはやめてほしいですね。
タイトル争いに加わっている選手の数は首位のジャイアンツと比べても全然遜色ないのに、どうしてこんなにゲーム差が付いてしまったんでしょう?…実は、ドラゴンズが最初から2位狙いだったのでは?という疑念がずっと消えませんでした。
もしブランコ選手の大ブレークがなければ、吉見選手やチェン選手など若手先発投手陣の台頭がなければ…と考えると、今年の戦力には不確定要素が多すぎました。おそらく、開幕前の段階では、落合監督は「優勝は難しい。何とか3位に入ってCSに」と考えたのではないでしょうか。短期決戦なら、層の薄さはベンチの工夫である程度カバーできる可能性が出てきます。それが結果的には2位にまでなれたわけですから、これでも上出来…というのが内輪の評価なのかも知れません。
先にも触れたとおり、シーズンの最終目標を日本シリーズでの勝利に置くのなら、これもあり得る戦略です。落合監督も、そしてイーグルスの野村監督も、そんな計算をしていたような気がします。もちろん、それはCSというシステムがあるからこそできること。最終目標を見据えて、そこに到達できる可能性の最も高い方法を選んでいくのが、プロとして戦う指揮官の使命です。
一昨年の日本シリーズでもプロの監督らしさを存分に発揮した落合監督が、今年も何かしてくれそうな気がしてなりません。そして、数々の日本一がかかる場面を切り抜けてきた、百戦錬磨の野村監督にも期待しましょう。でも、ドラゴンズとイーグルスでの日本シリーズが実現してしまったら、私は本気でどちらを応援するか悩みそうです。
それでも、やっぱりCSというシステムは好きになれません。日本シリーズが日本一を決める舞台だとするならば、それはやっぱりリーグ戦の優勝チーム同士の対戦であるべきだと思いますね。
こんな中途半端ですっきりしない「盛り上げ」方をするくらいなら、Jリーグのナビスコカップのように、リーグ戦の結果と独立したトーナメント形式のカップ戦を企画した方が良いのでは?と思っています。これを交流戦の代わりに開催すれば、リーグの異なるチームの対戦…という交流戦の面白さは残せますし、交流戦の結果がリーグ戦成績に含まれるために勝ち数・負け数の合計が一致しない…というややこしさも解消できます。
さらに日程に余裕が作れれば、高校や大学、社会人のチームまで入り乱れて戦う、ちょうどサッカーの天皇杯みたいなシリーズも面白いかも。ただ、野球の場合はプロとそれ以外の力量の差がちょっと大きすぎて、サッカーで時々起きるような番狂わせはなかなか無いのかも知れませんけどね。
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