ウィルコムから、来年初頭に発売される予定の新しいスマートフォン・HYBRID W-ZERO3の情報が公開されています。W-ZERO3といえば、スライド操作でQWERTY配列のキーボードが現れる仕掛けが特徴的な、シャープの開発による製品のシリーズですね。日本における「スマートフォン」というジャンルの起爆剤になったブランドだと思っています。…という話は、昔からここを訪問してくれている方には説明の必要もないくらいですよね。私も、シリーズの端末を2台持っています。
ただ、このHYBRID W-ZERO3はQWERTY配列のキーボードは持たず、通常の電話と同じ10キーを持つ「普通のスライド型端末」の形状をしています。それでも、Windows Mobile 6.5をOSに採用し、Microsoft社のオンラインサービスであるWindows Live!を一発で呼び出せるボタンを持っているなど、「Windows系スマートフォン」の血統は守っています。
この製品の「HYBRID」という名前の理由は、内蔵している通信機能にあります。従来のW-ZERO3シリーズと同様のW-SIMによるAIR-EDGE通信と音声通話が使えるだけでなく、NTTドコモのFOMA HIGH-SPEED回線を借りてウィルコムが行っている、WILLCOM CORE 3Gによるデータ通信も可能な仕様になっています。
今回、W-SIMにもW-OAM type Gが使える新型が用意されたので、AIR-EDGEでの通信速度は最大で約800kbps(ただし、基地局側がIP化され完全に対応している場合ですが)に高速化されています。しかし、FOMA HIGH-SPEEDの理論値・下り最大7.2Mbps(上りは最大5.7Mbps)と比べると遙かに遅く、数百kbpsと言われている実効値と比較しても格別高速ではありません。サービスエリアではWILLCOM CORE 3Gの方が圧倒的に広いわけで、あえて2種類の通信手段を使い分けなくてはならない理由があったのかどうか、ちょっと疑問を感じてしまいます。
ウィルコムとしては、たとえほとんどメリットがなかったとしても、自社技術であるAIR-EDGEは載せざるを得ないわけですが、携帯電話回線を使うスマートフォンたちに対する優位性を示そうとするならば、一つ注目したいのは通信回線の使用方法と料金プランの設定。自社が好きなように使えるAIR-EDGE回線をできる限り活用して、利用料金を3G回線専用機よりも低廉に抑えた新しい料金プランを用意する必要があります。
さらに、使用する回線をシームレスに切り替えて…というより、通信回線を意識せずに使えるシステムになれば最高なんですが、さて、ウィルコムとシャープはどこまでがんばってくれるのか。このあたりのことは未だ発表されていませんから、過剰ではない期待はしておきましょう。
これに関連してちょっと注目しているのは、無線LANを通じてWAN側の回線を使わせる、いわゆる「モバイルルータ」的な使い方ができる…と案内されていること。最近、3G携帯電話回線やモバイルWiMAXでこうしたコンセプトの機器が登場していますし、ウィルコム自身もW-SIMを使った「どこでもWi-Fi」という商品を出しています。
先ほど私が書いたとおりの、2種類の回線をシームレスに切り替えるモバイルルータになってくれるのなら、これはかなりおもしろいハードウェアになるかもしれません。ただ、そうなると端末にWindows Mobileを搭載するのはちょっとオーバースペックだと思います。パソコンや携帯ゲーム機などを使う人にとっては、ルータ機能さえあれば十分。価格を抑えてルータ専用機を販売した方がヒット商品になりそうな気がするんですが…案外近い将来に実現するかもしれませんね。
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