日本プロ野球では、日本一のチームを決める日本シリーズ(なんだかクドい言い回しになってしまいましたが)が昨日から開催されています。セ・リーグから出場するのは読売ジャイアンツ、パ・リーグからは北海道日本ハムファイターズ。幸い、昨年に続いて両リーグの優勝チーム同士の対戦となりました。初戦はジャイアンツが1点差で辛くも勝ちましたが、今年はこの後どんな展開で私たちを楽しませてくれるのでしょうか。楽しみにしておきましょう。
これに先立ち、木曜日・29日にはドラフト会議が開催されました。毎年、この時期になるとワクワクする気持ちとともに、どことなく不機嫌になります。各チームに数多くの新戦力が加わる楽しさとともに、この制度の抱えるいろいろな不条理が明るみに出てしまうから…なのでしょうね。
今回のドラフトには、圧倒的な「目玉」選手がいました。岩手県・花巻東高校の菊池雄星(きくち・ゆうせい)投手ですね。時速150kmを超える剛速球を投げる、現在の実力だけでなく将来性も豊かな左腕を、実に6球団が1位で指名し、抽選の結果埼玉西武ライオンズが交渉権を得ました。個人的には、隣の宮城県に本拠を構える楽天イーグルスに当たりくじを引いてもらいたかった気がしますが、こればかりは運ですからどうにもなりません。ライオンズからメジャーリーグ入りした松坂大輔投手のような、次世代の「怪物」に育ってほしいものです。
彼は、日本プロ野球だけでなく、アメリカ・メジャーリーグからも注目され、日米実に20球団が彼の学校に足を運びました。彼が日本プロ野球行きを表明したのはドラフト直前の25日。メジャーリーグに行くなら自分の行きたい球団を選べるのに日本ではそれができないこと、周囲の多くの人々を巻き込む重大な選択を18歳の若者にさせなくてはならないこと…システム自体がいろいろな問題を抱えているわけですが、ギリギリまでドラフト戦略を決められなかった各球団は大変だったのではないでしょうか。
ちなみに、中日ドラゴンズの1位指名は智弁和歌山高校の岡田俊哉(おかだ・としや)投手。中日スポーツの一面には岡田投手の写真が大きく載っていました。翌日のスポーツ紙各紙の状況は残念ながら確認できませんでしたが、菊池投手が1面に出てこなかったのは、もしかするとこの1紙だけかも知れません。
そしてもう一人、私がどうしても注目せざるを得なかった選手がいました。社会人野球のホンダに所属する長野久義(ちょうの・ひさよし)外野手。彼は、今回ジャイアンツから1位指名を受けました。
彼の名前は、去年の今頃にSSK Worldで何度か見かけた覚えがある方もいるかと思います。彼が過去に2度ドラフト会議でのプロからの指名を蹴っていることにはそのときに触れましたが、彼からすると3年以上待ち続けてラブコールにようやく応えてもらえたわけですから、まさに感無量…といったところでしょう。
もっとも、彼自身もただ待っていたわけではありません。今年はホンダを都市対抗野球の優勝に導く活躍を見せました。3年前にはファイターズからの4巡目指名、昨年は千葉ロッテマリーンズからの2位指名。プロからの評価を年々上げてきたわけですから、たいしたものです。
ジャイアンツ側も、彼のほとばしる「ジャイアンツ愛」に対して、最大限の誠意を見せました。一番びっくりしたのは、指名からたったの2時間後、まだドラフト会議も終了していないくらいの頃に、原辰徳監督が長野選手の元を訪れ、「CHONO」と名前が入った背番号7のユニフォームを手渡したこと。ひとケタの背番号を用意しているということは、即戦力として活躍してほしい…という期待の大きさの表れでしょう。
もっとも、既に外野手に数多くの優秀な人材が控えているジャイアンツで、彼が1年目からレギュラーを奪うためには、相当厳しい競争を勝ち抜かなくてはなりません。それも、ライバルは実績にあぐらをかいているわけではなく、実力をアピールして出番を掴み、今の座を獲得した強者揃いです。もちろん、その競争を冷静に見極めてきたのは原監督。来季も長野選手に変な温情をかけることはないはずです。どうなっていくのか、注目しましょう。
憧れのジャイアンツに入団できるまでに3年も待たされてしまった長野選手。彼のことを「かわいそう」と思う方もあるかも知れません。ただ、私はそうは思いませんね。現時点では結果オーライ…という状況ではあるかも知れませんが、これまでの「ジャイアンツ入りできるのを待つ」という選択は、野球選手としての彼の人生を考えるとリスクが高かったような気がします。彼自身が選んだ道なのですから仕方ありません。
むしろかわいそうだったのは、長野選手のために今年の超目玉・菊池投手獲得に参戦できなかったジャイアンツではないのか?と思っていました。先にも触れたとおり外野には人材が豊富なのに対して、実は日本人の先発投手が意外に頼りないジャイアンツ。とはいえ、余裕でリーグ優勝できるほどの現状の戦力に、大きな不安があるわけでもないでしょうから、将来性のある本格派投手…というのは合理的な補強ポイントです。
ただ、見方を変えてみると、早々に長野選手の1位指名の方針が決まっていたおかげで、ジャイアンツは菊池投手の動向に神経をとがらせる必要がなくなった…とも言えます。それに、菊池投手に注目が集まったおかげで、長野選手は他球団から強行指名されず、くじ引きに運命を任せずに済んだのかも知れません。…まあ、さすがに三度振られるのを覚悟で敢えて指名するチームはもうないのでしょうけど。
そう考えれば、長野選手にとっても、ジャイアンツにとっても、今年のドラフト会議の展開はまさにラッキーで、結果も大満足。全然かわいそうでなんかなかったのかも知れません。まあ、それこそ結果オーライ…ということなのでしょうけど。
来年のことを言うと鬼が笑う…なんて言いますが、来年のドラフト会議も気になります。順調にいけば、早稲田大学の斎藤佑樹投手が注目選手の一人になっているはずです。3年前には「ハンカチ王子」として一世を風靡した甲子園のアイドルは、どんな形でプロにやってくるのでしょうか。複数球団が1位指名で競合するのか、それとも超新星が登場して彼の存在はかすんでしまうのか…。
既に彼の1位指名を公言している球団もいくつかあるようですね。私は、何故か彼がジャイアンツ入りしそうな予感がしているんですが、それでは彼の同級生で今や楽天イーグルスの若きエースとなった田中将大投手との対決機会が少なくなってしまうのが寂しいところです。来年の今頃、私はどんな感想を書くことになるのか。今から楽しみです…きっと鬼がどこかで大笑いしていますね。
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