先週末の12日(現地時間、日本時間では13日)から、カナダのバンクーバーで冬季オリンピックが開催されています。17日間の日程は、この週末でちょうど折り返し点ということになります。8年前のソルトレークシティ大会と同様に、競技は日本時間では早朝から昼過ぎ頃に行われ、平日は出勤している私は、ライブではなかなか見られないんですが、やっぱり結果は気になるものです。
オリンピックになると、いつも注目を集めるのが、日本代表のメダル獲得数。今朝の時点で、日本代表選手団は銀メダル2個、銅メダル1個の計3個を獲得しています。とりあえず前回のトリノ大会の実績である1個は上回りましたが、まだ金メダルはありません。
他にも、メダルは獲得できないまでも見事入賞を果たした選手たち、実力を十分に発揮できず残念な結果に終わってしまった選手たち…と、明暗が分かれるところですが、世界のトップクラスの実力は紙一重。「3位に入れたか、入れなかったか」という中途半端なところで評価を線引きするのは、やっぱり間違っている気がします。
最初に日本のムードが盛り上がったのは、開会式の翌日・13日のフリースタイルスキー・モーグル女子だったでしょうか。日本代表は4人が出場。日本時間で日曜日の午前中から行われた競技は、テレビの生中継で見ることができました。
長野大会から4大会連続出場となる上村愛子選手に、メダル獲得への期待がかかっていました。長野での7位から6位、5位と順位を上げてきた彼女でしたが、今回は4位。彼女は「なんでこんな一段一段なんだろう」とコメントしていましたが、世界トップの3人に入るのはそれだけ難しい…ということなのでしょう。本人の力だけではどうにもならない部分もあります。
もちろん、上村選手の滑りからもこの日にかける思いが伝わってきましたが、この日いちばん印象に残ったのは、里谷多英選手の決勝での滑りでした。この日の予選では点数が伸びず、決勝では前半の出番になりましたが、先に滑っていた選手たちとは別次元の、鬼気迫る高速のターンを見せてくれました。2回目のエアで派手に転倒してしまい、数字の上では残念な結果となってしまいましたが、過去オリンピックで2個のメダルを獲っている彼女の意地を感じる、果敢な攻めでした。
前半戦の中では、スノーボード・ハーフパイプ男子も注目を集めた種目です。もっとも、これは競技そのものというよりは、日本代表・国母和宏(こくぼ・かずひろ)選手の言動によるところが多分にあったわけですが。どうも、この種目の選手たちは以前から競技のパフォーマンス以外の面で大きな損をしているような気がします。
この種目は、残念ながらライブで見ることはできなかったので、後からニュース映像を見ることになりました。国母選手は決勝の1回目で「ダブル・コーク」という大技に挑んだものの、顔面から転倒して流血。2回目にも再び挑みましたが、今度は着地で手を付いてしまいました。結果は8位入賞。メダル獲得こそなりませんでしたが、攻め続ける競技者の姿勢は見せてくれたような気がします。それにしても、競技後にも終始強気な発言を続けた国母選手は、やっぱり大きな損をしているような気がします。
そして、やっぱり外してはいけないのがフィギュアスケート。男子シングルでは、高橋大輔選手が銅メダルを獲得し、この種目では日本初めてのメダリストになりました。私にとっても、待ちに待っていた快挙です。
近年の男子シングルで、最大のポイントになっているのが4回転ジャンプ。現在試合で跳ばれる最も高い難度のジャンプであり、誰もが簡単に跳べるわけではありません。ジャンプに対するポイントの付け方については本で予習してありました。4回転ジャンプに挑んでも回転が足りずに転倒…ということになれば、3回転以下のジャンプとして評価された上に、ジャンプの質の減点、転倒による減点まで受けてしまいます。3回転のジャンプを綺麗に跳んだ方が、与えられる点数は高いことになります。
高橋選手は、フリーの演技冒頭で4回転トウループにチャレンジしましたが、まさにこの「回転が足りずに転倒」のパターンになってしまいました。このジャンプにはほとんど点数が付かなかったはずです。しかし、ここで切れずにその後の演技は見事に滑りきり、最後にはガッツポーズまで見せてくれました。以前から高い評価を受けているステップは、この日も切れ味抜群でした。また、振り付けや音楽の解釈、表現力などを評価した演技点では、全選手の中でトップだったのだそうですね。ジャンプの失敗を、他の持ち味でカバーできる力があった…とも言えそうです。
日本代表では、織田信成選手は4回転ジャンプを跳ばずに臨みました。演技中にスケート靴のひもが切れてしまうトラブルはありましたが、演技中断後もしっかりとまとめて7位に入賞となりました。小塚崇彦選手は4回転ジャンプに挑戦して、試合では初めて成功。8位入賞となりました。小塚選手のフリー演技は、たまたま昼休みでライブ観戦ができたんですが、その瞬間には興奮しましたね。出場した3人が全員入賞というのは、これまた大したものです。
金メダルを獲得したアメリカのエヴァン・ライサチェク選手は、フリーに4回転ジャンプをあえて組み込まず、ミスなしで演じきりました。前回のトリノ大会の金メダリスト・ロシアのエフゲニー・プルシェンコ選手は、前回に続いて今回も4回転ジャンプに成功はしましたが、演技全体の質としては、点数が出る前から何だか雑な印象を受けました。今回は銀メダルということになったのも、私には納得できました。
そのプルシェンコ選手が、終了後に採点方法への不満を露わにする発言をして、いろいろと物議を醸していますね。言葉の表現はともかく、現在の採点基準では高い難度のジャンプに挑戦する意欲を削いでしまい、新しい技への挑戦が止まってしまう…という危機感は理解できます。しかし、フィギュアスケートは総合的な滑りの美しさを競う競技であり、ジャンプの難易度はあくまでその中の要素の一つです。突き詰めれば、採点の重み付けをどうするのか?という問題で、これはなかなかデリケートです。特に演技点は、客観的にはかれるものだけで評価付けることが不可能ですからね。
今の状況でのあの発言は、タイミングが悪すぎます。これでは、どんなに筋の通った主張でも単なる負け惜しみと取られかねません。彼に許されたタイミングは、演技より前か(まあ、これは十二分に行使していましたが)、あるいは有無を言わせない完璧な演技で金メダルを取った後のどちらかでした。
後半戦、やっぱり気になるのはフィギュアスケートの女子シングルですね。金メダルが期待されている浅田真央選手と韓国のキム・ヨナ選手の関係は、先に出てきたプルシェンコ選手とライサチェク選手の関係にちょっと似ています。難度の高いトリプルアクセルに挑み続ける浅田選手、トリプルアクセルは跳ばずに技の完成度や表現力を磨いてきたキム選手。同い年の好敵手同士が、どんな演技で私たちを魅了してくれるのか楽しみです。
もう一つ、個人的にとても気になっているのが、アルペンスキー・回転に出場する皆川賢太郎選手。現在はモーグルの上村選手の夫として有名な彼ですが、トリノ大会では回転で4位に入賞していて、彼自身も日本代表の中ではメダル獲得に最も近いところにいる一人だと思います。上村選手の滑りを日本からテレビで見ているときの、まるで教え子を見守るコーチのような、妻を見ている夫とはとても思えない(笑)真剣なまなざしが印象的でした。彼の活躍にも期待しましょう。
他にも、気になる競技はまだまだあります。果敢に挑む姿を、たくさん見せて欲しいですね。それに結果も付いてくれば、なお嬉しく思います。
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