果敢に挑んだ

カナダのバンクーバーで先々週から開催されていた冬季オリンピックも、いよいよ大詰め。明日の午前中(日本時間)には、閉会式が行われます。今日は、午前3時頃からアルペンスキー・男子回転が行われ、今大会では初めて真夜中のライブ中継で観戦しました。

前回のトリノ大会でこの種目4位に入賞している皆川賢太郎選手は、1回目(2回の合計タイムで順位を競います)でコースアウトしてしまい途中棄権。前回の雪辱は成りませんでした。1回目の時間帯は深い霧の出ている悪条件で、他にもコースアウトする選手が続出する荒れた展開の中、佐々木明選手が無事に滑りきり、14位で2回目へ。しかし、2回目は順位を落としてしまい、最終的には18位となりました。

午前5時30分頃には、スピードスケート・女子団体パシュートの準決勝が行われました。この種目では、2チームが同じトラックの反対側からスタートします。各チーム3人が一緒に滑り、トラックを6周します。最後尾の選手が先にゴールした方の勝利となります。先頭の選手に空気抵抗の負担がかかりますから、隊列を入れ替えながら滑っていき、最後は横一線になってゴールインします。

準決勝で、日本代表はポーランド代表を0.19秒差の僅差で破り決勝に進出。7時過ぎに行われた決勝ではドイツ代表と対戦し、残り1周までリードを奪っていましたが、最後の最後で逆転され、わずか0.02秒の差でメダルの色は銀となりました。それでも、これまで銅メダルが最高だった日本女子スピードスケートでは、史上最高位の成績です。

これで、今大会日本代表のメダルは銀3個、銅2個の合計5個。どうやらこれで個数は確定…となりそうです。


日本で、後半戦最大の注目を浴びたのは、やはりフィギュアスケートの女子シングルでしょう。先週のWeekly SSKでも触れていますが、日本代表の浅田真央選手に金メダルへの期待がかかっていました。

しかし、終わってみれば韓国のキム・ヨナ選手の強さを見せつけられるような展開になってしまいました。キム選手は、ショートプログラムでも、フリーでもミスのない流れるような滑りを演じ、合計228.56点というとんでもない得点で、ぶっちぎりの金メダルを獲得しました。だいたい、フィギュアスケートという種目は、選手がジャンプに入る直前には「無事に跳べるだろうか」と固唾をのんで見守るものなんですが、今大会の彼女の演技にはそれが全然ありませんでした。当たり前のように、次々に技をこなしていきました。

一方の浅田選手は、前から踏み切って3回転半回るジャンプの大技・トリプルアクセルを、ショートプログラムで1回、フリーで2回成功させました。しかし、その後のジャンプにミスがあったり、技の出来栄えでの加点があまりもらえなかったりして、点数ではキム選手に大きく引き離されてしまいました。ミスのない美しい滑りが高く評価されるのは、フィギュアスケートという競技の性質を考えれば当然のことなのですが、一方で難しい技に果敢に挑む姿勢が評価されにくくなっている気はします。

…と、男子シングルの銀メダリスト・プルシェンコ選手がそんなことを言ったからかどうかはわかりませんが、技に対する採点基準はまた見直されることになりそうです。こうしてルールがどんどん変わっていってしまうのは、特に人間が採点を行う競技では仕方ないことなんですが、その時々のルールに翻弄されてしまう選手たちは気の毒な気もします。


日本代表では、安藤美姫選手が5位に、鈴木明子選手が8位に入賞し、それぞれに味のある演技を見せてくれました。また、両親が日本生まれのアメリカ代表・長洲未来選手が4位に入賞しています。男子も、先週触れたとおり日本代表3選手が揃って入賞。ペアでは中国代表が強さを見せています。フィギュアスケートと言えばアジアが強い…という時代が来ているようです。

浅田選手は、早くも4年後、ロシアのソチで行われる次回大会に意欲を見せています。あらゆる面でさらに技を磨いて、今度こそは表彰台の一番高い位置に…と思うわけですが、キム選手に対するリベンジは難しいような気がします。今回、圧倒的な強さを証明してしまったキム選手に、今後も競技を続けるモチベーションがどのくらい残っているのか、かなり疑問です。3月の世界選手権には出場するそうですが、その先はプロに転向するのではないでしょうか。難しいジャンプにこだわるタイプではないだけに、なおさらです。

ソチでの浅田選手のライバルは、現在16歳の長洲選手や、それよりも年下のソチ大会を10代で迎える選手たちになるのでしょう。これまでも、オリンピックでは10代の選手たちが旋風を起こしてきましたからね。そして、「3度目の正直も良いかも」とコメントしている安藤選手も面白い存在になりそうです。もちろん、誰にとっても怪我なく4年間を過ごすことが大事な条件になりますが。…「来年の話をすると鬼が笑う」どころの話ではありません。


冬季オリンピックにもいろいろな種目がありますが、今回テレビで見ていて結構おもしろかったのはカーリング。「クリスタルジャパン」と呼ばれた女子日本代表「チーム青森」は、予選リーグで負け越してしまい、決勝には進めませんでしたが、対戦の中ではいくつも見せ場を作り、私たちを楽しませてくれました。マスコミがアイドル的に盛り上げようとしているのが伝わってきて、選手たちも大変だったのではないかな?と思いますが、よく頑張ったと思います。

カーリングは1998年の長野大会でも行われていたんですが、日本で注目が集まったのは前回のトリノ大会の頃からのような気がします。氷の上で2チームが交互に石を滑らせて、標的に近づけて陣取り合戦をするわけですが、4年前は正直なところいったい何をやっているのかよくわかりませんでした。「石の滑っていく先をブラシで必死に擦っている競技」程度のイメージしかありませんでしたね。

今回はテレビ観戦をする機会が結構多く、解説でルールを細かく説明してくれたおかげで、ようやく中身が理解できました。単純に標的の中心に投げれば良いだけのものではなく、相手の石をうまくはじき飛ばしたり、相手の投げたいコースに自分の石を配置して妨害したり、ブラシのこすり方で石をカーブさせたり…と、実に細かい技術と駆け引きがあることを知りました。これは見ていて実にわくわくする競技です。


どの選手も、自分の持てる力を出し切ろうと、果敢に試合に挑んでいってくれたのだと思います。結果はいろいろありましたが、そんな姿勢を見せてくれるからこそ、スポーツの観戦は面白いのでしょうね。選手たちに心からお礼を言いたいと思います。

この後、午前9時過ぎからフィギュアスケートのエキシビションが生中継されます。楽しいショーを見せてもらいましょう。もっとも、朝が早かったので、途中で眠気に襲われてしまいそうな気がして、ちょっと不安なんですが(汗)。


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