浜松の新しい我が家に、無事光インターネットが開通しました。「最大100Mbps」のスペックが、ベストエフォート(最大限の努力)と言いながらもほぼ額面通り最大限に発揮される環境は、ネット利用環境としては快適そのものです。
しかし、残っていた不満がありました。それは家庭内での配線の問題。引っ越したときに、我が家のデスクトップパソコンは2階にすべて運び上げて設置してありました。しかし、光ファイバーが引き込まれたのは電話が配線されていた1階。今さら1階にパソコンを置くスペースもなく、これらの間を何らかの形でつながなくてはなりません。
動作試験をするときに、1階と2階の間にとりあえず10mのLANケーブルを引き回し、これをそのまま使っていました。このままでも使えないことはないわけで、しかもこれがおそらく最高の速度を確保できる手段ですが、廊下、階段をLANケーブルが這い回る姿はどうも美しくありません。
問題は、単にビジュアルのことだけにとどまりません。そのままにしておくと、線を引っかけてしまった私たちが、階段から滑り落ちてしまう危険もあります。これだけ長い配線になると、モールなどで隠していくのも結構費用がかさみますし、また次に引っ越すときの撤去作業も面倒になります。いったいどうしたものか…という話になりました。
LANケーブルを引き回さずに1階と2階の間をつなぐ方法として、考えた候補は2つ。電波を飛ばして結ぶ無線LANと、電灯線を伝送経路に使うPLCです。通常は50Hzや60Hzの交流が流れている電灯線に、メガヘルツ級の高周波でデータ信号を並行して流すのがPLCの仕掛け。あまりにも周波数が違うので、同時に流しても混信しにくいんですね。発想としては、電話の音声信号に重ねてデータ信号を流すADSLとほぼ同じです。
PLCの機器は、あらかじめ1対がペアリング済みの状態で出荷されていて、壁のコンセントにつなぐだけで、すぐに既存のネットワークを電灯線で中継することができます。実にお手軽なんですが、ちょっと不安なのはその速度。いわゆる理論値は最大200Mbpsクラスなんですが、実効速度は100Mbpsをかなり下回るようです。テレビやWiiなどとつなぐだけなら、これでも良いかも知れませんが、2階のネットワーク(パソコン2台の他にもプリントサーバーやNASがあります)とつなぐにはちょっともの足りません。
一方の無線LANですが、こちらは以前からノートパソコンとの接続のために導入していて、アクセスポイントはホームゲートウェイのすぐ隣に設置してありました。2階のネットワークと接続するためには、LANケーブルで接続するタイプの子機を導入すればよい…わけですが、IEEE802.11a/b/g対応の私のアクセスポイントでは通信速度は20Mbps前後。これでは、100Mbps級の「光の速度」を受け止めるには全然足りません。
しかし、現在主流となっているIEEE802.11nなら、理論値は実に最大300Mbps。実効値でも100Mbpsを超えるようなテスト結果が公表されています。従来の規格との互換性も十分に確保されているので、ベテランのレッツノートともちゃんと接続できそうです。今回は、無線LAN環境を丸ごとアップデートすることで対応する方針に決めました。
我が家に新しく導入した無線LAN機器は、NECの無線LANルーター・Aterm WR8700Nと、イーサネットコンバーターのAterm WL300NE-AGをパッケージしたセット。4月に登場したばかりの最新の商品で、IEEE802.11n/a/b/gの新旧全ての規格に完全対応し、5GHz帯でも2.4GHz帯でも300Mbpsの通信ができる「全部入り」の最上位機になります。
先にも触れたとおり、2階にあるのがパソコン1台ではなくネットワークなので、無線LAN子機はUSBやPCカードなどではなくイーサネットで接続することになります。親機を子機に転用できる機種もあったりして、意外に選択肢はあるんですが、コストパフォーマンスを考えるとWL300NE-AGとバッファロー・WLI-TX4-AG300Nとの一騎打ちになります。
しかし、最後はイーサネット側が1000BASE-T対応かどうかの差であっさり決着となりました。実は、決め手になったのはフレッツ光ネクストのハイスピードタイプが登場したこと。回線速度が高速化されたときに、100Mbps以上でデータが送れる可能性を残したかったんです。
WR8700NとWL300NE-AGの間では、箱から出してそれぞれを有線のネットワークに接続するだけで、5GHz帯のIEEE802.11nを使って無線接続する設定が済んでいます。実はこの「5GHz帯の」というのがミソ。既に広く普及し、チャンネル数が限られている2.4GHz帯(規格上は14ありますが、隣接チャンネル間の周波数が重なっているため、完全に干渉せずに使えるのは3チャンネル程度です)と比べると、5GHz帯にはもともと多くのチャンネルがありますし、利用者もまだ少ないので電波には余裕があります。
試しに、WL300NE-AGの設定画面からアクセスポイントを検索してみると、我が家以外に10個ほどが検出されます。しかし、5GHz帯を使っているのは我が家の他には一つだけ。各チャンネルの使用状況を見ると、2.4GHz帯は全て埋まっていて、同じチャンネルを使っている人もいる過密状態なんですが、5GHz帯はちゃんとご近所との棲み分けができています。
通信状況そのものも実に良好。木造2階建てのテラスハウスの1階と2階の間で、規格上の最高値である300Mbpsでのリンクが確立していて、フレッツ回線の速度試験でも、有線と同レベルの最大90Mbps台の数値をたたき出します。おそらく、実際に100Mbps以上で通信できるポテンシャルは持っています。フレッツ側を「倍速化」したらどうなるのか、ちょっと興味が出てきました。
WR8700Nとインターネットの接続も、ケーブル類を接続して電源を入れるだけで環境が自動的に認識され、設定まで完了してしまう仕掛けになっています。既にルーター機能を備えたホームゲートウェイがある我が家の場合、WR8700Nのルーター機能は切り離され、無線LANのアクセスポイントとして動作します。
無線LANといえば、セキュリティを確保しながら使うために欠かせないのが、暗号化の設定。WL300NE-AGとの間でももちろん設定済みなんですが、レッツノートのような無線LAN内蔵のノートパソコン、さらにはWiiと接続するときにも、「らくらく無線スタート」機能で簡単に暗号化設定が済んでしまいます。画面の指示通りにボタンを押していくだけで、ちゃんとそれぞれの機器で使える範囲での最高レベルの暗号化方式を選択するのですから、実に良くできています。
先に検索した近隣のアクセスポイントでも、全てが暗号化された通信を行っていました。全く暗号化されてないアクセスポイントがゴロゴロしていた時代を思い出すと、隔世の感があります。各メーカーがいろいろ機能を用意して、暗号化されているのが当たり前…という状況がほぼ出来上がりましたね。ずいぶん安心して使えるようになりました。…もちろん、どこまで行っても完璧というものはないわけですが。
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