ここ数ヵ月間…実際にはもっと前からなんですが…、私の最大の関心事の一つとなっていたのが、小惑星探査機・はやぶさの地球への帰還。ついに、今夜遅くに地球大気圏への再突入となります。
4年半前に、地球から3億km以上離れた遙か彼方で、小惑星イトカワの欠片の採取に挑んだはやぶさ。数々の苦難を乗り越えて、今日の明け方には月(地球からの距離は約38万km)よりも近くまで戻ってきているはずです。既に、再突入前の軌道調整はすべて終了し、オーストラリア中部のウーメラ砂漠にカプセルが降りてくることが確実視されています。これから行われるカプセルの切り離し、再突入そのものの成否も気になるわけですが、ここまで来れば、実質的に「帰ってきた」と言ってよいでしょう。
これまでに、イオンエンジンによる惑星間航行、小惑星への着陸および離陸など、世界初の快挙が実現されてきました。このあたりの話を始めると思いっきりマニアックになってしまいますが、今日起こる出来事はもっとシンプルです。そもそも、人間が作ったものが月よりも遠い星に着陸し、地球に戻ってくるのは歴史上初めてのこと。私が生まれるよりも前、アポロ11号が人類を初めて月の表面まで運んで往復したのに匹敵すると言っても過言ではない、人類宇宙開発技術史のマイルストーンです。
JAXAの特設サイト「はやぶさ、地球へ!~帰還カウントダウン~」の他、リアルタイムの情報がはやぶさライブブログ、さらにはツイッターの「つぶやき」など様々なメディアを駆使して逐次報告されています。もうしばらく、注目していきましょう。
以前にも紹介していますが、全国各地のプラネタリウムで、はやぶさの7年間の道のりをCGによる再現で紹介した全天周映像・「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-」が上映されています。諸々の事情でなかなか見に行けなかったんですが、ようやく昨日・12日に見に行くことができました。
行き先は、地元の浜松科学館。ここでは、8月末までの間上映される予定になっています。現在は、毎日午後4時から約20分間のダイジェスト版に当日の星空解説を組み合わせたプログラムを、そして毎週土曜日の午前11時からは約40分間のノーカット版(星空解説はなし)を上映しています。夏休み期間の7月下旬以降は、ノーカット版も毎日見られる予定になっています。
最近は、出かけると言えば家族3人で…が当たり前だったんですが、今回は残念ながら私一人。40分間、ほとんど真っ暗で原則的に途中退出禁止のプラネタリウムに、娘がちゃんと対応できるかが心配でした。そして、実は妻の紫緒もこの手の映像が意外に苦手。宇宙空間を飛んでいくような視点だと、「宇宙酔い」してしまうかも知れません。またDVDででも見てもらうことにしましょう。
私が土曜日の12日に出かけたのは、もちろんノーカット版が見たかったから。再突入の前日ということで、田舎町の浜松だとはいえ、大混雑で入場制限…などとなっていないか少々心配はしていたのですが、幸い整理券が売り切れになっていることはなく、無事見られることになりました。
普段なら、訪れるのは家族連れや子供たちが多い場所なんですが、この日は一人で来ている大人の男性の姿が目立ちました。だいたい、入場券売り場に私が着いたとき、先に並んでいたのは大人の男性ばかり4人。私も含めて5人全員が、11時からのプラネタリウム上映付きのチケットを1枚(定価900円)購入していました。
このチケットで、科学館の常設展示も見ることができます。様々な科学の原理等を体感できる展示が並んでいて、小学生の頃の私たちは胸を躍らせたものです。そして、ダイレクトに五感に訴えるそのおもしろさは、ウン十年後の私が触れても変わりません。プラネタリウムの始まる前に1時間弱あったので、久々にひと回りしてみようと思っていたんですが、あまりに熱中してしまい、結局回りきれませんでした。娘がもう少し大きくなったら、連れてきて一緒に楽しみたいですね。
映像は宇宙空間からスタート。地球がだんだん大写しになり、M-Vロケットで打ち上げられ太陽電池パネルを広げるはやぶさに寄っていきます。この後のはやぶさの大変な旅路を思い、不覚にも冒頭でうるうると涙腺が緩み始めてしまいました。さすがに理性でここは押しとどめましたが、ミュージカルの師匠・Jonathan氏が、作品の冒頭でもつい涙が出てきてしまうことがある(あの人は私が初めて「オペラ座の怪人」を見に行ったときもそうでした)…という気持ちがちょっとだけわかった気がしました。
基本的に、この作品ははやぶさのしてきた仕事を紹介する映像ですから、実際に行われたこと、技術的に新しいこと、これまでの探査でわかったことなどが淡々と紹介されていきます。それなのに、どうして泣けてくるのか?…これは、ウルトラマンタロウでも有名な(私たちよりちょっと上の世代ならジャストミートでしょうか)俳優・篠田三郎の冷静かつ熱いナレーションに負うところが大きいですね。これまでも、日本の宇宙開発ではこうした紹介映像が制作されているんですが、はやぶさではちょっと演出を変えているようです。これはちょっとズルい、かも(笑)。
映像は「2010年1月現在、地球に向けて航行中」で終わり、エンディングロールに合わせて大気圏再突入をイメージした映像が描かれます。地上まで到達するカプセルに続いて、はやぶさ本体も大気圏に突入してバラバラになり、燃え尽きていく(科学的な予測・計画ですから、ネタバレなんて言わないように)んですが、さすがにこのときばかりは泣けてきます。
周りでも、男女を問わず大人たちのすすり泣きが聞こえてきました。しかし、子供たちにはどうもこの感動は伝わらないようです。出てくるときに、「パパ、泣いてるの?」なんて声も聞こえていました。君たちにはまだちょっと難しすぎたかな?(笑)。ここまでのストーリーが頭に入っている私にとっては、実に感動的な映像になっていましたが、この映像だけを先入観なしで見た人がそこまでの気持ちになれるのかは、その人次第なのかも知れません。
今日は、Googleの日本版ロゴにもはやぶさのイラストがあしらわれています。いろいろなメディアでも状況が伝えられ、注目が集まってきました。「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-」の映像がラストまですべてノンフィクションになるのも間近です。そうなってから映像を見ると、また感じるものは違うかも知れません。機会があれば、是非ご覧になってみてください。私も、DVDで追体験してみようかと思っています。ブルーレイ版が欲しいところですが、あれはちょっと高価すぎますし、だいたい自宅に鑑賞できる機材がありませんからね(涙)。
もう一つ気になっているのが、カプセルの中にちゃんとイトカワの欠片が収まっているのか?なんですが、これがはっきりするには、カプセルの回収、内容の分析を待たなくてはならず、今日や明日で結果が出てくるものではありません。とにかく、もう少しだけ待ちましょう。
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