これで勝っても日本一なのか

日本プロ野球は、この週末まででクライマックスシリーズ(CS)が終了し、日本シリーズを戦う2チームが決まりました。来週末から、4試合先取制で「日本一」を決める戦いが始まります。

セ・リーグから出場するのは、我らが中日ドラゴンズ。最後まで激戦が続いたリーグ戦を1位で駆け抜け、CSのファイナルステージでは、読売ジャイアンツを相手に1敗はしたものの、自分たちの戦いを貫いて順当に勝ち上がりました。落合博満監督は、負け試合の後で宙に舞ったリーグ戦に続いて、今度はちゃんと勝利した後、再びナゴヤドームで選手たちに胴上げされました。

ドラゴンズにとっては4年ぶりの日本シリーズ。このときには北海道日本ハムファイターズを下し、53年ぶりの「日本一」となりました。しかし、このときのドラゴンズはリーグ戦を2位の成績で終え、CSを勝ち上がって日本シリーズに出場しています。現在のCSが行われるシステムの元では十分にあり得る話で、ドラゴンズの奮闘はもちろん評価されて良いのですが、応援している私の側には、これは本当の日本一ではないのではないか?という、すっきりしない思いが残りました。

私たちファンも、監督も、選手たちも、リーグ戦で優勝して、CSも勝ち抜いて、さらに日本シリーズで勝利してこそ本当の日本一である…という思いを持って歩んできました。現在のCSのルーツであるパ・リーグの新しいプレーオフが始まった2004年から10数年も遡れば、日本一の栄冠はドラゴンズ、今はもうない近鉄バファローズ、当時はまだなかった東北楽天ゴールデンイーグルス以外の全ての球団を一巡します。本当の…というよりは、昔のシステムのような「リーグ優勝して日本一」という流れに対する渇望が特別に強いのかも知れません。


そんなドラゴンズとファンたちにとって、CSでの勝利は積年の夢に手が届くまであと一歩…という状況になっているはずだったんですが、現実はそう甘くありません。今年は、日本シリーズが始まる前から実にすっきりしない思いを抱えています。

問題なのは、対戦相手となるパ・リーグのチーム。千葉ロッテマリーンズは、リーグ戦を3位で終えたチームです。CSのファーストステージで埼玉西武ライオンズを下したマリーンズは、ファイナルステージでも最終の第6戦まで続く熱戦を繰り広げた末、福岡ソフトバンクホークスを破って日本シリーズへの出場を決めました。

リーグ戦3位のチームが日本シリーズに出てくることになったのは、2004年以降初めてのことです。CSというシステムがある以上、こうなる可能性は常にあったわけですが、3位のチームが実際に勝ち抜いていくのはかなり難しい仕組みになっています。常に相手チームの本拠地で戦い続けなくてはなりませんし、ファイナルステージでは実質的に4勝2敗以上の成績でリーグ優勝したチームを破らなくてはなりません。マリーンズは相当頑張って出場権を勝ち取ったわけで、CSの激戦を勝ち抜いたことは評価されてしかるべきです。しかも、個人的にも決して嫌いなチームではないだけになおさらなんですが、今回ばかりはどうも素直に喜ぶ気持ちにはなれません。

ドラゴンズの側から見ると、リーグ戦3位のチーム相手に負けるようでは、リーグ優勝チームとして恥ずかしい思いもありますし、勝ったとしても、3位のチームが相手で胸を張って日本一と言えるのか?という疑問が残りそうです。パ・リーグも、今年はセ・リーグ同様に最後までリーグ戦は大混戦でしたから、1位と3位の実力差はほとんどなさそうですが、それでも1位は1位、3位は3位。どちらにしても、私のすっきりしない思いは今年中には晴れることがなさそうです。

それにしても、パ・リーグでリーグ優勝したホークスは、またしてもCSで涙を飲んでしまいましたが、あと1勝すれば…というところで、これだけ何度もつまずいてしまうのはどうしてなんでしょうか?。もう気の毒としかいいようがありません。こんなシステム、早くなくなってしまえばいいんですが。


セ・リーグのCSファーストステージでは、リーグ戦で3位だったジャイアンツが阪神タイガースを破ってファイナルステージに駒を進めました。ファイナルステージが始まる前に、既にマリーンズが日本シリーズ出場を決めていましたから、「ジャイアンツが勝てば、リーグ3位同士での日本シリーズ?」という論調がずいぶん盛り上がっていました。

どうも、未だにプロ野球界がジャイアンツを中心にして回り続けていると思っている方が相当多いようです。しばしば話に出てくるのが、どのチームが優勝すると経済効果がどのくらいあるのか?という試算。ジャイアンツが優勝した場合が最も金額が大きくなるのが普通です。人が多く集まる東京に本拠を置いているわけですから、そうなるのは当たり前。だからといって、常にジャイアンツが優勝するのがいちばん良いのかどうかは、また別の話です。

残念ながらジャイアンツの大逆転は実現せず、日本シリーズはドラゴンズ対マリーンズという「不人気カード」になりました。そして、第1戦は地上波テレビでの全国中継が行われないことが決まりました。日本シリーズ史上初めてのことだそうです。ジャイアンツが勝ち残っていれば、日本テレビがちゃんと面倒を見てくれたのでしょうけどね。こればかりは仕方ありません。問題は、ジャイアンツが出場するかしないかではなく、そもそもプロ野球という映像ソフトの魅力が相対的に落ち込んでいるところにあるのだと思います。根はもっと深いところにある話で、ドラゴンズのせいにされてはたまったものではありません。

まあ、私は衛星放送を活用して観戦することになるでしょうから、それほど不満はありません。地上波と違って、CMは最小限ですし、きちんとプレイボールからゲームセットまで中継を続けてくれますし。実は、落ち込んでいるのはプロ野球中継の魅力だけではなくて、地上波テレビというメディアもかつてほどのブランド力がなくなっているような気がします。さすがに、その地位が他のものに完全に取って代わられるまでにはまだまだ時間がかかりそうですが。


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