SSK Worldには、私が撮った写真を公開しているPhoto Worldというコーナーがあります。「出かけた先でお手軽に撮ったデジカメ写真」なんて紹介をしているわけですが、撮影している本人は意外に真剣です。もともと、いろいろなところに出かけるのが好きなので、その記録を写真として残すのも趣味の一部になっています。せっかく撮影するのなら、もっと綺麗なものを、目で見た感動を写し取れるようなものを…と思っています。
そもそも、「お手軽に」という表現になっていたのは、かつてのデジカメの写真は画質ではフィルムカメラより劣っているもので、撮影そのものを趣味とするレベルには到底達していなかった…という事情があったと思います。しかし、今やカメラの主流はすっかりデジタルカメラに移行し、フィルムカメラは絶滅寸前と言ってよいでしょう。もちろん、デジタルカメラで撮影できる写真のレベルが格段に上がって、フィルムカメラを置き換えるに足るものになったからこそのことです。そうなれば、消耗品であるフィルムが不要で、大量に録り貯めた後で取捨選択することに躊躇せずに済み、しかもパソコンを使えば現像やトリミングなどの処理まで自由自在…という、数々の利点が際立ってきます。
そんな中で、私が使ってきたデジタルカメラも、だんだん高級なものへと移り変わってきました。振り返ってみると、最初に買ったときから、画質にこだわり続けてきたのがわかります。現在の主力は、デジカメとしては3台目となるDiMAGE(でぃまーじゅ) A200で、7倍ズームの高性能レンズを備え、絞りやシャッター速度のフルマニュアル設定も可能な、相当な本格志向の製品です。まさに、「撮影を趣味とできるレベルのカメラ」と言ってよいでしょう。
しかし、写真撮影にこだわろうとするならば、私にもまだ上れる階段は残っています。おそらく個人の趣味レベルでは最後の一段になるであろうそれは、「デジタル一眼レフカメラ」でした。
そもそも、「一眼レフカメラ」というのは、本体内に反射鏡があり、これを用いて撮影用レンズから入ってくる光を反射(reflex ; 「レフ」はここから来ている)させてファインダーに導き、撮影される画像を直接目で確認できる機能を持ったカメラです。実際に撮影するときには、反射鏡を動かしてフィルムや撮像素子に光を導き露光させることになります。撮影レンズを交換するだけで、ファインダーで見られる画もこれに連動して変わりますから、本格的に撮影にこだわるのに適しています。
私も、デジカメを導入する以前は一眼レフカメラのα-7000を使っていたことがあります。以前にもちょっと話題にしたことがありますが、1985年に世界で初めて一眼レフカメラの総合的なシステムとしてオートフォーカス(AF)を実現した歴史的カメラです。徹底的に電子化が進められていた一方で、全てマニュアルで設定して撮影することも可能で、コンパクトカメラの延長のようなカジュアルな撮影から本格的な撮影まで、オールラウンドにこなせる逸品でした。
私と同様に、写真撮影にこだわってきた妻の紫緒も、以前から一眼レフに対する憧れを口にし続けていました。これから、娘の写真を撮りたくなるようなイベントがどんどん続きますし、このあたりで我が家に一眼レフを導入しようか!ということになりました。私にとってはデジカメ導入と入れ替えでα-7000を引退させて以来10年ぶりの一眼レフ。紫緒にとってはこれが待望の一眼レフデビューです。
我が家にやって来た久々の超大型新人は、ソニーのα55。8月に発表されたばかりの最新モデルです。性能面での大きな特徴の一つが、最大秒間10コマが撮影できる…という、「世界最高速」のAFが追随した連続撮影。あまりにケータイカメラの反応が遅すぎて決定的瞬間を取り逃す日々が続いていた紫緒にとっては、ここがまさに最大のアピールポイントです。
私にとっては、長年使っていたα-7000から続く「αシリーズ」の流れを受け継いでいることもポイント。10年ぶりの「αとの再会」です。デジカメでもDiMAGE Xt、DiMAGE A200と旧ミノルタ、コニカミノルタの製品を愛用し続けていました。コニカミノルタがカメラ事業を手放し、αの資産がソニーに引き継がれてから5年目になりますが、「フィルムカメラをとりあえずデジタル化しました」という感が強かった最初の頃と比べると、最近のαには、高度な画像処理をはじめとして、いい意味での「ソニーらしさ」がずいぶん盛り込まれてきました。
そんなαシリーズが、今回はかなり大胆な機構を盛り込んでいます。一眼レフカメラの最大の特徴が、一本のレンズでファインダーから画を見るのと写真を撮影するのを切り替える反射鏡。画像を記録する瞬間だけ跳ね上がるのが当たり前だった反射鏡なんですが、α55(と同時登場の兄弟機であるα33)では、反射鏡がハーフミラーになっていて、カメラ内に固定されています。
レンズから入ってきた光は、常時反射鏡の奥にあるCMOSセンサーに当たるのと同時に、反射鏡の上にあるAFセンサーにも届きます。撮影と高精度な位相差検出方式によるAFの作業を同時に行えて、しかも反射鏡を跳ね上げる必要がありませんから、超高速の連続撮影が可能…というからくりです。さらに、機械的あるいは光学的な部分がずいぶん減らせますから、筐体の小型化・軽量化も可能で、結果的には「史上最も小さいα」となっています。
…と、ここまで読むと良いことずくめのように聞こえそうですが、気になることもあります。α55のファインダーは、レンズからの光が反射鏡で反射され、ペンタプリズムやペンタミラーを通って直に届く光学ファインダーではなく、反射鏡を透過し、CMOSセンサーで受けた画像を液晶画面で映している電子ファインダーです。「レンズから入ってくる光を直接目で確認できる」のが一眼レフだとすれば、このカメラはそうではありません。むしろ、構造としてはDiMAGE A200などの「ネオ一眼」や反射鏡を用いない「ミラーレス一眼」に近いものです。実際に、ソニーでもこの機種に対して「一眼レフ」という表現は使わず、「レンズ交換式デジタルカメラ」と呼んでいます。
とはいえ、α-7000以来磨かれてきた位相差検出方式AF、豊富な交換レンズや周辺機器、そしていかにも「らしい」外観など、一眼レフの文法はしっかりと受け継いでいます。電子ファインダーであること自体は、センサーが受けたデータを映し出している点では「記録される画像に忠実である」とも言えるわけで、画像処理の結果を反映できることも加味すれば、決してマイナスの要素ばかりではありません。もしかすると、α55/33は、フィルムカメラ時代の高級機の代表であった「一眼レフ」という構造から脱皮する、「デジタル・ネイティブな高級機」の先駆けになるのかも知れません。
ちなみに、ハーフミラーを用いた「ミラーを跳ね上げなくても撮れる一眼レフ」は、1980年代にキヤノンがフィルムカメラで市販したことがありますが、市場ではあまり受け入れられなかったようです。撮影される光がハーフミラーを通ってくるので、露出に影響を受けるのが嫌われたのでしょうか。デジカメの場合は画像処理でかなりカバーできますから、あまり問題にはならないと思っています。
さて、自宅に届いたそのα55なんですが、DiMAGE A200と並べてみると、向かって右側を大胆に切り落としたシルエットをはじめとして、実によく似ています。全く違うロゴを冠しているとはいえ、「血」はつながっていますから、当然のことかも知れません。サイズはひと回り違いますから、まるで親子のようです。
背面に回ってみても、バリアングルの液晶モニター、円形の大きなキーの他に複数のダイレクトキーが並んだ操作系など、血統を色濃く感じます。おかげで、操作についてはあまり違和感なく行えそうです。
ファインダーのすぐ前の部分(つい「ペンタプリズム部」と呼んでしまいそうになりますが)にフラッシュを内蔵しているのも全く同じ。ただし、DiMAGE A200のフラッシュ制御が完全手動なのに対して、α55の場合は露出に応じて自動でポップアップして発光させることもできます。
今回は、残念ながらここまで。実際に撮った写真も紹介するために、この週末に試しにどこかに撮影に出かけたかったんですが、諸般の都合で残念ながら実現しませんでした。まあ、放っておいてもこれからα55の出番はいくらでもありますからね。追々、写真とともに数多くの先進的な機能もご紹介していこうと思っています。
コメントを残す