「映画館に行こう」と声を上げつつも、最近はあまり映画館にも行かず、DVDも買わず…という生活をしていますが、テレビで放映される映画は常にチェックしています。この週末には、「スター・ウォーズ エピソード3」が放映されました。我が家にもDVDはありますが、ハイビジョン画質で見られるのはテレビ放送ならではです。今さら自宅の全てのDVDをブルーレイに買い替えていく根性と裕福さもありませんしね(苦笑)。
もう少し前の話になりますが、3月に予定されていた「ゴールデンスランバー」は以前から気になっていた作品で、結構楽しみにしていました。しかし、放映される直前に東日本大震災が発生。仙台市を舞台にしたこの映画は、自粛ムードのあおりを食らってか、放映中止になってしまいました。
いつもなら、「また放映されるのを待てば」と思えるんですが、今回は事情が事情だけに何年待たされるかわからないぞ…と思い、久しぶりにレンタルショップでDVDを借りてきました。実は、借りに出掛けたのは、私の結婚式前日に披露宴で使う曲のCDを借りてきて以来。もう5年近く足を運んでいなかったことになります。
「ゴールデンスランバー」の原作は、伊坂幸太郎の数々の賞も受賞したベストセラー小説…なんですが、私は読んだことがありません。映画化が発表されたときに、「総理大臣暗殺の濡れ衣を着せられた男性が、仙台の街中を逃げ回る」というストーリーと、豪華なキャストで、直感的に「観て楽しめそうだ」と思いました。
巷の評価では、原作は賛否両論の巻き起こった作品のようです。「長いがどんどん読ませる作品」と評価される一方で、「各所に張り巡らされた伏線が全然解決していない」「あまりにご都合主義すぎる」などの意見もありますが、どうも高尚な文学として読みたい人たちからの評価が低く、一方でエンターテイメントとして楽しみたい人は高く評価しています。ということは、これはおそらく映画化には向いている作品ということになります。
先にも触れたとおり、この作品では冒頭で仙台市に凱旋帰郷した総理大臣がパレード中に暗殺され、犯行の容疑が主人公の青年・青柳に掛けられます。青柳の全く身に覚えのないところで、既に数々の証拠がでっち上げられていて、おまけに彼自身は車に仕掛けた爆弾で自爆させられかけます。
間一髪のところで命拾いした彼は、警察から追われる身となります。彼は、昔の友人たちや縁のあった人たち、あるいは新しく出会うさまざまな人たちに助けられながら、追っ手をかいくぐって逃げ延びていきます。
展開は非常にテンポが速く、次から次にさまざまなことが起こり、私たちは映像に引き込まれます。最後には、さまざまに張り巡らされた数々の伏線が、綺麗に片付いていく爽快感を味わえます。ところが、スタッフロールが終わって振り返ってみると、一番大きな謎…どうして、そしてどのようにして彼は犯人に仕立て上げられてしまったのか?という問いには、全くと言って良いほど答えが提示されていないことに気付きます。
しかし、謎が残されたことが不満なのか?と聞かれると、別にそういうわけでもなく、真相を自分で想像してみたりもしませんでした。というのも、この謎に答えが得られるかどうかは、ストーリーには全くと言って良いほど関係ないんですよね。
一見、とてもミステリーくさい体裁をとってはいますが、むしろこの作品のテーマとして近いのは、人と人とのつながりの暖かさなのでしょう。確かに、あまりにも話がうまく行きすぎではありますが、それを言い出したら映画のストーリーなんてそんなモノばかりです。幸運なご都合主義のオンパレードを楽しむべき作品でしょう。このあたりは、「宇宙」に期待しすぎると拍子抜けしてしまうパニックムービーの「宇宙戦争」と、ちょっと似ているかも知れません。
ちなみに、「ゴールデンスランバー」はビートルズの楽曲のタイトルを引用したもので、この曲は作品中にも確かに登場しています。しかし、作品のタイトルとして据えるには、ちょっと存在感が足りないのではないか?と感じました。強いて言うなら、「Golden Slumber」の入ったiPodは、確かに重要な役割を演じているんですが…。
映画化されるときに、この曲に込めたメッセージがかなり端折られてしまったのかも知れませんね。そうなると、やはり原作は読んでおいた方が良さそうなんですが…かなりの長編のようですし、入り組んだ作品をじっくり読むだけの時間は作れるんでしょうか。
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