今日は、浜松フロイデ合唱団のベートーヴェン「第九」演奏会を聴きに行ってきました。いつもは娘を預かってくれる妻の実家で、今年は風邪が流行中。「うつしちゃ悪いから」と言われたこともあり、妻が娘と一緒にいることになり、去年に続いて私はひとりでアクトシティ浜松の大ホールに向かいました。
毎年同じ曲を聴きに行って飽きないの?なんて質問を受けたこともありますが、毎年違う指揮者、違う楽団、違うソリストと組んで、違う解釈の下で演奏されると、毎年これだけ違う演奏になるのか!という感動が味わえます。飽きるはずなどありません。合唱団の団員だって、毎年相当数が入れ替わりますしね。
演奏の基本になる楽譜にもいくつかの版が存在することには、過去にも何度か触れています。今回の指揮者・曽我大介氏はベーレンライター版を使ったという話を伺っていました。以前にも紹介しましたが、ベーレンライター版は現代的な解釈で作られた版の代表的なもので、特徴の一つに演奏のテンポが速いことがあります。「残されている楽譜に忠実に」にこだわったあまり、とても現実には考えられない超高速の指示が書かれている箇所もありますが、それは抜きにしても、「ベーレンライター版」を謳うと全体の演奏時間でも明らかに短いことが多いです。
今年の演奏も、例に漏れず実に速いテンポの演奏でした。一歩間違うとせわしないだけになってしまう危険性のあるところなんですが、今年の演奏はステージから溢れるエネルギーがスピード感として伝わってくる気持ちの良い演奏でした。
私自身にも経験がありますが、速い演奏はどうしても譜面をなぞるだけで手一杯になりがちです。そんな中でも、要所をしっかりまとめるシャープな「切れ味」にこだわっていたように感じました。200人弱の合唱団とオーケストラがこの演奏をまとめ上げるには高度な技術と体力が必要で、皆さん毎週の練習も、本番も心身ともに大変だったはずです。去年のゆったりとした重厚さを感じる演奏とは全く違いますが、これもまた第九という曲の魅力を十分味わえる楽しい演奏でした。
重厚感よりもスピード感という表現の中で一つ気付いたのが、例年よりも音程が高めにチューニングされていたのではないか?ということ。管弦楽の演奏ではしばしば意図的に行われること(ピアノなどと違ってチューニングの変更が簡単ですからね)ですが、これは音の響きを明るく感じさせる効果もあります。
第九の演奏会はしばしば「年末の風物詩」「年中行事」などと呼ばれます。そう呼んでしまうのは簡単なことですが、毎年聴き続けるとそんなに簡単な話でないことがわかります。去年の演奏と今年の演奏を聞き比べるだけでも、同じ曲がどれだけ姿を変えることが出来るのかが実感できます。毎年聴き続けるのは大変かも知れませんが、何度か聴いてみるのはおすすめしたいところです。
今年は、演奏会のあとに妻と娘にも会場に来てもらい、皆さんにごあいさつをしました。久々に合唱団の皆さんと娘が対面することになりました。毎年「娘さんはどうしてる?」と聞かれるので、私もちょっと気にしていたんですが、何しろ演奏会が「10歳未満は入場できません」となっているので、連れてきても困ってしまうんですよね。合唱団の皆さんにも、娘は実に気にかけていただいていると感じます。ありがたいことです。
娘が第九の演奏会を聴きに来られるのは6年後。そしてその後、いつかは娘と一緒に歌が歌えるんでしょうか。今は全く想像も出来ませんが、そんな日が実現することはいつも夢に見ています。
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