先週あたりから、日の沈んだあと、夕暮れどきの西の空に、ひときわ明るく光る星が二つ並んでいるのに気がついた方も多いのではないかと思います。地表の街の光に邪魔された明るい夜空でも、この二つだけははっきり見えるのがわかるほどです。昨日、今日あたりでもまだ二つの星は見えていますが、心なしかちょっと距離が離れたような気がします。
この二つの星は、いずれも太陽系の惑星である金星と木星です。一番近づいていたのは14日の晩だったそうで、このときの両星間の距離は視野角にして約3度。月の直径の約6倍ということになります。もっとも、金星は地球の内側の軌道を、木星は外側の軌道を回る星。実際には何億キロも離れた位置にあって、たまたま同じ方向に見えているだけなんですけどね。
金星は、地球から観測すると太陽、月の次に明るく見える星。そして、その次に明るく見えるのが木星です。太陽と月は別格中の別格として、いわゆる「星」としてはナンバー1、ナンバー2の明るい星がこれだけ近い位置に集まっているんですから、目立って当たり前です。
こうして惑星同士が近づいて見える現象のことは、「合(ごう)」と呼ばれます。金星と木星の合自体はそんなに珍しいことではなく、2年に1度くらいは起こるのだそうです。ただし、今回のように北半球の空高くに輝いて観測しやすい…という条件をつけると、結構珍しいことなのだとか。確かに、最近はこんな夜空を見た記憶をちょっと思い出せません。
以前に、しし座流星群を見るために真夜中に起き出したのを話題にしたことがありますが、もともと天文現象を眺めるのは好きな方です。小学生時代には「天文クラブ」なるクラブ活動に所属し、熱心に研究をしていた記憶があります。現在でも、ニュースなどで取り上げられるとついつい気になってしまい、深夜に起き出して観測することも多々あります。
私だけでなく、妻も星空の世界は好きなようです。ただ、彼女の場合は単に現象を見ているだけではなく、星座にまつわる神話にも強いんですよね。とても神様とは思えないような人間くささが魅力の世界です。興味の方向の違いは、根っからの理系気質の私と、もともとモノ書きをしていた文系気質の彼女の差なのでしょうか。
彼女が我が家に持ってきた「嫁入り道具」の中に、CGアーティスト・KAGAYA氏の描いた、神話世界をモチーフにした絵があります。既に限定数の生産が終了し、今入手しようとしても困難らしく、我が家の家宝と言って良いかも知れません。私も、娘が生まれたときに、彼女の生まれ星座を題材にしたKAGAYA氏の絵…といっても、本物はとても入手できないのでジグソーパズルを組み立てたんですが…を飾りました。彼の絵は、澄んだ色合いと繊細なタッチが好きです。
彼は絵を描くことだけでなく天文全般に関する活動に熱心な人で、彼の名前がつけられた小惑星があるほどなんだそうですね。「はやぶさ」帰還のときにもコメントを出しているのを読みました。作品の中にも、月面を表側・裏側共に…月は普段ずっと地球に同じ方向(表側)を向けていて、裏側は地表からは見えないんですが…精密に描いたモノがあったりします。さらには、それを球体のジグソーパズルに仕立てた商品もあったりします。何だかとても楽しそうです。
いつもは何気なく見上げているだけの空の上でも、実は意外にいろいろなイベントが起きています。情報をキャッチして、その証拠を自分で探してみたり、自分なりの方法で思いを馳せてみたりするのも結構楽しいですよ。
今年起こる予定の天文界の大イベントの一つに、5月21日の朝に起こる金環日食があります。日食は、月が地球と太陽の間に入り込み、太陽を隠してしまう現象。月と太陽の見かけの大きさが互いに変化するために、月が太陽より小さく見える状態で太陽の真っ正面に入ると、リング状の太陽が見えることになります。これが金環日食です。逆に、月が太陽より大きく見える状態なら太陽を完全に覆い隠す場合があり、これは皆既日食と呼ばれます。
地球全体として見れば、日食自体は毎年数回起こっているイベントです。しかし、毎回皆既日食や金環日食になるわけではなく、しかも観測できる地域が非常に狭く限定されるため、現実的に観測できるのか?という観点が加わると、俄然希少価値が上がってきます。今回は、日本国内では九州南部から関東地方にかけてのかなり広い地域で金環日食を観ることができます。前回日本国内で金環日食が観測できたのは1987年の沖縄。そして次回は2030年で、このときは北海道で観ることができるのだそうです。
何よりテンションが上がるのは、私の住んでいる浜松市内でも美しい金環日食が観測できそうなこと。月曜日の早朝の出来事ですから、1時間ほど出勤を遅らせさえすれば、全てを見届けることが出来ます。あとは、当日の天気が良くなるように祈るばかりです。
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