火曜日・1月22日に、NTTドコモの2013年春モデルが発表されました。既に2ヶ月ほど前に冬モデルの最新機種に機種変更している私にとっては、次の乗り換え機種をどうしよう?という直接の対象にはなりませんが、それでも今後の商品展開がどうなっていくのかを見極める上では重要なイベントです。
発表されたのはスマートフォンが8機種、タブレットが2機種、モバイルルーター1機種と家庭内用の無線LANルーターが1機種となっています。このところ、ライバルのauやソフトバンクと比べると、新製品発表会に並ぶ機種数が圧倒的に多いのがNTTドコモの特徴になっています。多様なバリエーションが展開できるのは、シェアが徐々に落ちているとは言え、相変わらず圧倒的なトップに立つ王者の余裕でしょうか。
冬モデルの発表会では、スマートフォンはどちらかというとデザインや個性を重視したwithシリーズの比重が高かったんですが、今回は先進の機能をアピールするNEXTシリーズの方が多くラインナップされています。そのせいもあってか、発表内容にはスペック自慢の数字が並ぶ場面が多かったような気がします。1.7GHzクアッドコアのCPU、フルHD(1920×1080ピクセル)の大画面、112.5MbpsのLTE最高速度、3,000mAhにも達する大容量バッテリー…。どれも、快適な使用感に貢献するのかも知れませんが、正直なところ数字だけ見ても全然ピンときません。それどころか、単なる数字競争になっているのでは?という疑問すら感じます。
特に腑に落ちないのが、高解像度化する画面。今回のラインナップには、5型サイズのフルHD液晶ディスプレイを搭載した製品が実に4機種もあります。auが一足先に1製品を投入していたわけですが、今年はこの仕様が当たり前になっていくのかも知れません。
大きくなることは悪くないと思います。実際に私も4.9型画面のAQUOS PHONE ZETA SH-02Eを使っているわけですが、情報収集や簡単な情報発信のツールとして考えると、やっぱり画面は大きな方が見やすいですし、操作もしやすいですよね。スマートフォンの場合、ディスプレイは出力デバイスであると共に入力デバイスでもあるわけで、あとは携帯性や音声通話デバイスとして使うときの操作感とのバランスになります。
Bluetoothのヘッドセットを使う文化が広まってくれば、さらに巨大化しても問題はなさそうなんですが、現状はまだそこまで行っていませんから、本体に手持ちのハンドセットを兼用させるわけで、そうなるとそろそろサイズ的には限界。今後の仕掛けが気になるところで、実はSH-02Eにクリップディスプレイをプレゼントしたのも、そのあたりを意識したのかも知れません。
しかし、クリップディスプレイでの通話の使い勝手も、残念ながら今ひとつ。SH-02E本体の受話スピーカーがなかなかよく出来ているのと比べると、あれだけ小さいデバイスに普通のスピーカーでは位置合わせに結構苦労します。実は、こういうデバイスにこそ、耳や口を当てなくて良い骨伝導式のマイク・スピーカーは有効だと思うんですよね。シャープさん、もうひとがんばりしてみませんか?
話が少々脱線したので元に戻りましょう。対角の長さ5インチで画素数1920×1080ピクセルだと、画面解像度は約441ppi(pixels per inch ; 1インチあたり画素数)ということになりますが、既にSH-02Eの4.9型HD(1280×720ピクセル、約300ppi)でも個々のドットは識別不可能なほどの超高精細画面です。iPhoneのRetina(れてぃーな ; 網膜)ディスプレイは、網膜で識別できない細かさ…というのがネーミングの由来ですが、解像度は約326ppi。これと比べても、5型フルHDはオーバースペックのように感じます。
画素数が増えると、それを制御するためのディスプレイ上のトランジスタ数が増えます(現在のディスプレイでは、画素ひとつひとつに制御用のトランジスタが対応しています)から、ディスプレイの消費電力もこれに伴って増える方向に働きます。また、それだけ多くの画素に対してデータ処理を行うわけですから、CPUやメモリなどのシステムにかかる負荷も大きくなります。単純に比較しても、フルHDの画素数はHDの2.25倍。操作性の差に響いてくるかも知れませんし、フルパワー動作でサクサク動かせたとしても、今度はこれまた消費電力が心配になります。消費電力の増加は、動作時間が短くなったり、筐体が発熱したり、あるいは大容量のバッテリーが必要になって重量を増加させたり…という問題を引き起こします。
大画面は良いのですが、そこにフルHD解像度が必要なのか?ということになると、少なくとも現時点では首をかしげざるを得ません。数値で上回ることはスペック競争を勝ち残る上では大事なことなのでしょうけど、この場合には、モノの魅力として代わりに失うものの方が多いような気がします。
大画面という意味では、むしろ面白かったのはMEDIAS W N-05Eの方。折りたたみ型の筐体の両側表面に、それぞれ4.3型のディスプレイが付いていて、筐体を広げると2枚のディスプレイが横に並びます。これを5.6型の大きな1画面のように使ったり、2画面に別々のアプリを起動したり、少し開いて横向きに立てると、向かい合わせに座ったふたりが同じ動画を見られたり…と、いろいろな使い方が提案されています。
大画面化、薄型化、狭額縁化という流れの中で、スマートフォンはどれも大きな画面に細い縁取りが付いた板…という似たような形になってしまうのが現状だと思いますが、N-05Eのデザインは実に個性的です。ある程度販売実績が上がると、今後もこうした挑戦的な製品が出てくる素地になると思うんですが、スペック重視のマーケティングが横行しているAndroid陣営の中で、数字や仕様では劣る面の多いN-05Eがどこまで頑張れるかは難しいところです。
そういえば、MEDIASを作っているNEC(現在は「NECカシオモバイルコミュニケーションズ」ですが)は、かつては折りたたみ型のケータイで一世を風靡した存在でしたね。そこから脈々とつながっているのでしょうか。
スペック競争とは別に、今後のスマートフォンの展開をどうしようか…と考えた姿が垣間見えたのが、木曜日・24日に発表されたauのINFOBAR A02。情報をどのように見せるのか?というところにこだわって、新しいiida UIをかなり作り込んだようです。
既に動画がいくつか公開されていますが、「ともだち」「写真」「音楽」などの情報を得たい対象をキーワードにしたパネルが並ぶ構造だけでなく、タッチしたときのゼリー風の「触感」も凝っています。ただ、この構造自体は、何だかWindows Phone(あるいはWindows 8のModern UI)に似ているような気もするんですが…。
また、サイドキーのカラーリングが画面上のUIの配色と揃えられていたりして、UIと筐体のデザインが一体になるように開発が進められたようです。INFOBAR伝統のNISHIKIGOIカラーの他、2種類のカラーバリエーションがあります。ここまでデザインにこだわって開発されることは少ないでしょうし、面白いと思うんですが、INFOBARである必要があったのか?というところに疑問は残ります。少なくとも、この筐体形状はINFO「PLATE」ですよ。
初代INFOBARの「棒」感は強烈な印象でした。そこから続いて、A02が5機種目のINFOBARになるわけですが、あの鮮烈さがどんどん劣化して、このA02ではすっかりおとなしい「普通のオシャレなスマホ」になってしまったような気がします。過去の栄光を引きずってずるずると来てしまった感がありますね。INFOBARは、auのデザイン志向プロジェクト・iidaの一環として取り込まれているわけですが、iidaの名前自体はすっかり見なくなりました。NECの折りたたみケータイがMEDIAS Wに化けたみたいな、iidaの再爆発も見てみたい気がします。
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