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何故ツートップなのか

この夏以降に登場するスマートフォンの新製品が、各社からほぼ出そろいました。それぞれのラインナップを見ていくと、今後の展開が見えてきて興味深いですね。もっとも、この業界では絶大な影響力を持つアップル社がまだ沈黙を守っていますから、今の時点で「わかった」と言い切るのはあまりにも早計に過ぎますが。
各社の新製品を見ていくと、ハードウェアとしてのスマートフォンの進歩はそろそろ一段落したのかな?という印象を受けます。マルチコアの高性能プロセッサと大容量メモリ、十分な(過剰な?)高解像度の大画面タッチパネルで、携帯できるコンピューターとしての単体のパフォーマンスでは、もはやどの機種を選んでも問題は感じません。ネットと現実をつなぐインターフェースも、いろいろ増えてきました。
スマートフォンの最大のハードウェア面でのストレスとなっていたバッテリーライフについては、搭載するバッテリーの容量を増やす…という力技で克服しつつあります。もちろん、それだけの話ではなく、各端末メーカーとも、消費電力の低減には神経をすり減らしているんですけどね。大容量化に伴い、ユーザーでは簡単に取り外せないバッテリーが増えています。製品寿命がだいたい2年…と考えれば、その中で交換する機会はせいぜい1回。実質的には問題ない!と割り切ったのでしょう。スペアバッテリーを持ち運ばなくても済むように大容量化しているわけですし。
あとは、各社の展開する通信ネットワークがちゃんと機能するのかが勝負になりそうで、この意味でソフトバンクが「つながりやすさ」にポイントを絞ったプレゼンを展開したのは的を射ています。もっとも、実際に今まで受けてきた低評価をひっくり返すには、アピールだけにとどまらない、地道な努力が必要になるわけですが。


5月15日には、NTTドコモが2013年夏の新製品・新サービス発表会を開催しました。現在NTTドコモユーザーである私たちにとっては、今後の展開がどうなっていくのか?という点で、いちばん気になる発表会です。もっとも、半年前に機種変更をしたばかりですから、今回登場した新製品にすぐ乗り換える…ということは考えていませんけどね。
正午からの発表会の情報を得るために、今回はnottv(ノッティーヴィー)で生中継を見ることにしました。以前から動画生中継自体はあったんですが、ネット回線を使うUstreamとは違い、「放送」であるnottvなら、回線が混み合って画像が止まることもありません。
地デジ完全移行で空いた周波数を使って、スマホやタブレットで受信するハイビジョン放送…ということで提供されているnottvですが、正直なところ見たくなるような魅力ある番組がありません。有料契約をいつ解除するか決めかねている状態なんですが、それでも、せっかく対応できるスマホを持っているんですから、たまには活用してやりましょう。
…と思っていたわけですが、動画で見ている新製品発表会は、どうもおもしろくありません。プレゼンで発表されるのを待っているだけだと、自分の本当に欲しい情報とマッチしなければ、どうもフラストレーションが溜まるんですよね。わかったことは、どの機種も画面の動きがスムーズなことくらい。結局、十数分見ただけで、あとはTwitterやFacebookページ、ケータイWatchなどのニュースソースからチェックすることにしました。


今回NTTドコモから発表されたのは、スマートフォン10機種とタブレット1機種、そしてフィーチャーフォン2機種の新色展開でした。ここ1年ほど、各社ともラインナップする機種数を絞り込んできていて、NTTドコモも例外ではないんですが、それでも他社と比較すると圧倒的な多機種展開が目立ちます。
しかし、今回の発表会は以前とはかなり様相が違いました。GALAXY S4 SC-04EとXperia A SO-04Eの2機種を「ドコモのツートップ」と位置づけて、発表会でも紹介にかなりの時間を割きました。一番の「おすすめ」として、販売促進に特に力を入れるようで、この2機種については、キャンペーンでの割引幅が他の機種よりも最大20,160円大きくなる特典まで用意されます。
春モデルでも、数多くの新機種をデビューさせながら、Xperia Z SO-02Eを特別に前面に押し出したマーケティングをしていましたから、「ツートップ」宣言自体は想定の範囲内と言えなくもないのですが、20,000円もの価格差まで付けてしまうのには驚きました。これでは、他の機種は買うな!と言っているようにすら感じますね。


この特典は、「10年以上ドコモを使い続けている人には+10,080円」と、「現在ドコモのフィーチャーフォンを使っている人が初めてスマートフォンに乗り換えるなら+10,080円」の合わせ技。つまり、「ガラケーからスマホへ」の流れを加速するためのキャンペーン…と見ることが出来ます。
豊富なラインナップのスマートフォンからどれを選ぶか困る人に、とりあえずおすすめの機種を提示すること自体はアリだと思います。しかし、ガラケーからの移行を促すのなら、今回のラインナップには、NTTドコモ自らが開発した「docomoシンプルUI」を搭載するELUGA P P-03EやMEDIAS X N-06Eという、うってつけの選択肢があります。シンプルなだけでなく、基本性能でも他の機種と全く遜色ありません。どうしてこれらをおすすめしないのでしょうか。
また、ツートップの選考基準として、「できるだけ特徴のある大画面、そして持ちやすさという観点で2機種を選んだ」というコメントも出ているようですが(ケータイWatchより)、大画面なら5.2型フルHD画面を持つARROWS NX F-06Eの方が上ですし、持ちやすさなら4.3型HD画面を装備しながら横幅60mmを下回るコンパクトな筐体に収めたAQUOS PHONE si SH-07Eがあります。
ハイスペックの全部入り…という観点でも、先に挙げたARROWS NX F-06Eや、フルHDの4.8型IGZO液晶を持つAQUOS PHONE ZETA SH-06Eあたりは、ツートップには決して負けていないどころか、上回るポイントを持っています。しかも、単なるスペック競争にとどまらず、どちらも実に良く使い勝手について考えられています。
私自身ARROWS、AQUOS PHONEともにユーザーとしての使用経験があるわけですが、GALAXYも、Xperiaも新モデルが出る度に店頭でこれでもか!というくらい触りまくってきた自負があります。その上で現在の選択があるわけで、やっぱり私にはいくら考えてもツートップの論理的な選考理由が理解できません。理由があるとすれば、それこそ「サムスンとソニーから何かもらってるのかな」くらいしか思いつかないわけですが、まあ、オトナの事情もいろいろあるのでしょう。
MNPで他社からNTTドコモユーザーに移ってきた方々や、既にスマートフォンを使っている皆さんなら、特典の対象外ですから、ツートップを選ぶことによる金銭的メリットはありません。実は今回の夏モデル、よく見るとツートップ以外にもなかなかの曲者揃い。既に多くの機種が店頭に並び始めていますし、実機を見比べながら、冷静に「自分だけの一番」を選んでみましょう。


「ドコモはiPhoneを出さないのか」「絶対出さないと言っているわけではない」という押し問答は、また今回も繰り広げられたようです。先にも触れたとおり、アップル社がまだ次期新製品に関する発表を何も行っていないわけで、もしも何か決まっていたとしても、この段階では何も言えるはずがありません。
新製品発表会の時期になるごとに取りざたされるこの話題。Androidスマートフォンの進歩自体が、やや踊り場にさしかかっているようにも感じるこの頃ですから、NTTドコモが発表会で巷にサプライズを感じさせる方法は、もうiPhoneを投入するくらいしかないかも知れません。
もっとも、私はこの夏の段階でのiPhone投入はないかな?と思っています。何しろ、iPhoneがラインナップに加わるのでは、今回の「ツートップ」戦略との整合が全く取れません。もしあれがiPhone投入前のカモフラージュだとするなら、あまりにも手が込みすぎています。それとも、iPhone投入前にAndroid機を売れるだけ売っておこうという魂胆なのか。
ともかく、来月には発表されるのではないか?とも噂されるアップル社のこの夏の戦略には注目しておきましょう。展開によっては、私はまた理解に苦しんで頭を抱えることになるかも知れません。


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