ノートパソコンを持ち歩かなくなってから、もうずいぶん長くなります。新しく購入するのが難しい状況で、いろいろ代わりの方法を考えてはみるものの、やっぱりノートパソコンを持ち歩く以上の最適解が見つかりません。
スマートフォンは、出先での情報閲覧についてはかなり高いレベルで要求を満たしてくれます。しかも、それは単なる代わりにとどまりません。十分快適なレベルの高速通信が常時確保され、GPSによる高精度な位置情報も持っていますから、これらの組み合わせにより、これまでモバイルノートPCで行っていたのとは別次元の情報を使いこなせるようになっています。
しかし、SSK Worldの原稿を執筆するためには、スマートフォンの文字入力環境はあまりにも貧弱すぎます。フリック入力や手書き入力をどんなに鍛錬しても、生産性ではQWERTYキーボードからの入力に遠く及びません。音声入力は、入力手段としてはそこそこ高速なんですが、結局逐次変換作業は必要ですし、その後の編集を考えるとやはりそれだけでは足りません。特にカット&ペーストの作業はかなり面倒です。
個人用にとどまらず、出張時などに仕事用のドキュメントも取り扱おうとすると、さらに状況は深刻になります。Excelのマクロが走らないことには話にならないため、Microsoft Officeがきちんと使える環境が必須になります。5デバイスまでのセットアップが許可されているOffice 365を使うなら、追加ライセンスを購入する必要はありませんが、それでもWindowsがまともに動く環境は用意しなくてはなりません。
さらに、出先でも画像編集や音楽制作などのよりクリエイティブな作業のための環境を実現しようとすると、Windowsは単に「動く」だけでは不十分で、一段高いレベルのパフォーマンスが必要になります。…まあ、これは贅沢なオプションなのかも知れませんが。
「持ち運んで使うノートパソコン」と言えば、絶対に外してはならないのがレッツノートでしょう。現在のラインナップで一番小さなCF-AX3は、液晶画面が360度開いてタブレット形態に変形してしまうUltrabook。1.1kg台の軽量な筐体でカタログ値13時間のバッテリー動作を謳い、フルHD解像度のIPS液晶で、これまで弱点と言われてきた表示品質も改善しました。隙が少ない、手堅くまとまった佳作です。
しかし、私の要求を「持ち歩ける、十分なパフォーマンスを持ったWindows環境」と定義し直してみると、それを実現できる選択肢は急激に増えています。特に、4000番台のCore iシリーズ(いわゆるHaswell)が登場したおかげで、今まで以上にパフォーマンスと携帯性を高い水準でバランスさせた製品が増えてきました。
そんな中で、最近意欲的な製品を数多く発表しているのがソニーです。昔から、他とはひと味違う「とんがった」製品を世に送り出し続けてきたメーカーですが、昨年秋に発売されたVAIO Duo 11あたりから、とんがり具合にさらに磨きがかかった感があります。ソニーのやりたかったコンセプトに、各種構成デバイスがようやく追い付いてきたのかな?という気がしています。ずいぶん昔から、新デバイスを抜け駆けで採用する例はありましたからね。
CF-AX3が登場したときにも触れた、超軽量のモバイルノートがVAIO Pro 11。この秋には一応モデルチェンジがあったものの、基本的には夏モデルとしてデビューしたときとほぼ同じ仕様です。液晶ディスプレイが13型のVAIO Pro 13もありますが、昔から「小さなノート」が大好きな私としては、やっぱり11が気になります。
2009年のVAIO Xを思い出させる薄型・超軽量の筐体に、Atom ZではなくCore iシリーズのCPUを搭載した上で、11時間というバッテリー動作時間(カタログ値)もちゃんと確保しています。ネット直販なら、UltrabookとしてはハイエンドとなるCore i7-4500Uも搭載できますから、ヘビーな作業にも対応できそうです。インターフェースはUSB 3.0が2つ、HDMI、ヘッドセット、SDメモリーカードと最低限に抑えられていますが、通常の用途にはおそらく十分。有線LANやVGA出力には、別売りオプションで対応できます。
カーボンファイバー積層材を使ったボディは、強度も十分。ひねりを加えると微妙にねじれるものの、破損への不安は全く感じません。キーピッチ17㎜のキーボードはデスクトップ用よりも一回り小さいんですが、妙な配列になっていないので好感が持てます。キータッチも意外にしっかりしています。
いろいろと面白い形態のデバイスが登場する中で、VAIO Pro 11はオーソドックスなクラムシェル型のノートブックですが、もう少し未来的な方向に振った製品がVAIO Tap 11。厚さ10㎜を切るタブレット型の本体にCore iシリーズを搭載し、専用のワイヤレスキーボードを標準添付した製品です。
Microsoft謹製のWindows 8.1タブレット・Surface Pro 2と競合する製品になりますが、VAIO Tap 11の方が一回り大きな11.6型の画面を備える関係で全体のサイズも大柄です。キーボードはSurface用のオプション製品よりもずっとしっかりしていて、実はVAIO Pro 11よりも大きな19㎜ピッチのフルサイズ。全体の仕上げにもより高級感があります。その分価格も高めになっているのですから当然なのですが。
キーボードがワイヤレスなのは、好きな位置で入力作業をできるので便利そうです。キーボードが本体にマグネットで張り付き、この時には本体が自動的にスリープ状態に移行するとともに、キーボードが充電される…という仕組みはよく考えられています。タブレットならではのスタイラスペンを使ったアプリケーション群も用意され、新しい活用方法を期待させます。演算能力やバッテリーライフ、拡張性など、パフォーマンス面ではVAIO Pro 11よりもやや劣ることになりそうですが、今までにないスタイルは魅力です。
ただ、この形態だと、出先で使おうとするときに従来よりもどうしてもアクション数が多くなってしまうのは気になります。クラムシェル型なら、ディスプレイを開けば即文章入力も可能な状態になりますが、VAIO Tap 11ではキーボードを分離→本体をスタンドで自立させるという手間がかかりますよね。また、タブレットとして使うときにもキーボードを引きはがすアクションが必要になります。一方で、分離されているキーボードは膝に置くなどして使えますから、卓上に必要なスペースは小さくできるはずです。それぞれ長所・短所があるということなのでしょう。
そんなわけで最近気になっているVAIOたちなんですが、モノ自体の魅力だけでなく、お値段の方も気になるポイント。レッツノートのネット直販・マイレッツ倶楽部でプレミアムエディションではない通常モデルのCF-AX3を買おうとすると、25万円を超えるくらいの買い物になりますが、ソニーストアでVAIO Pro 11やVAIO Tap 11を同等のスペックにカスタマイズすると、15~17万円くらいのところに収まってきます。それ以外のところにいろいろコストがかかっていることは理解できるんですが、それにしても差がありすぎます。もっとも、純粋に処理能力に支払うコストとしては、VAIOでもまだ相当割高で、レッツノートのレベルまで行くともう論外…と言われそうな気はしますが。
しかも、VAIOには「残価設定クレジット」という買い方が用意されています。これは、最近は自動車のローンでよく見かけるもので、商品の総額を分割するのではなく、支払期間が終了した時点での価値をあらかじめ設定しておいて、この金額(残価)を差し引いた分を分割払いします。支払期間が終了した時点で、商品を返却する(実質的に残価相当額で買い取ってもらったことになります)か、残価を支払って買い取るかを選択できるのが一般的です。
ソニーストアのVAIO向け残価設定クレジットは、24回払いで残価は総額の約2割に設定されているようです。先に挙げたVAIO2機種あたりだと、月々の支払いは5千円台、2年間の支払総額は通常の購入よりも3万円程度安く済む計算になります。
こまめに新製品に買い換えたいと思っている人には、残価設定クレジットは選択肢になり得ると思います。ただ、注意しなくてはならないのは、返却するときに製品に損傷があったり、付属品に欠品があったりすると評価額が差し引かれ、追加負担が生じること。付属品はともかく、モバイル使用が主となる製品だと、製品に付いた傷などがどう評価されるのか不安があります。残価設定クレジットを選択するのなら、取り扱いにはよりデリケートになった方が良いかも知れません。
もっとも、その月々5千円台の出費ですら安易に決断できないのが我が家の懐の寒さではある訳なんですが(涙)。やっぱり、「宝くじが当たって一括購入」という夢を見てしまいますね。ちょうど年末ジャンボ宝くじが発売中です。夢を見る権利くらいは買っておきましょうか。
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