「東へ西へ」といえば、井上陽水の1972年のアルバム『陽水II センチメンタル』に収録された作品で、その後複数のアーティストによりカバーされています。あの人らしい独特の世界観は、40年以上前から綿々と続いているのだ…ということがよく分かる曲ですね。類似したタイトルを持つ曲に、Mr.Childrenの1998年の作品『ニシエヒガシエ』がありますが、『東へ西へ』から四半世紀が過ぎて、彼らが何らかのオマージュを込めたのかどうかはよく分かりません。それぞれ、ある意味クレイジーな感覚が持ち味の曲ではありますが。
…などと音楽談義をしようと思ったわけではなく、先週の私は遠方への出張が続いて、まさに「東へ西へ」の1週間でした。先月は東京への出張がありましたが、私の職場はこういうのが当たり前というわけではなく、実際はかなり珍しいことです。
もちろん遊びに行くわけではありませんが、せっかく遠出させていただくのですから、楽しめるところは楽しませてもらおうと思っています。特に、長時間になる移動は、単なる待ち時間に終わらせてしまうのではあまりにももったいありません。移動時間だけは、そこでどうしても準備しておかなくてはならない事柄がない限りは、旅行を楽しむ感覚でいます。
木曜日・22日には、下田市まで出かけることになりました。伊豆半島の南端のこの町は、皆さんにとっては観光地としてのイメージしかないと思いますが、2年間ここに住んだ経験がある私たちにとっては、そう単純なものではありません。いかにもリゾート感満載の伊豆急下田駅前のロータリーも、私には故郷に戻ってきたようなある種の懐かしさを思い出させる風景です。
当日の朝は、静岡市の職場に出勤して済ませなくてはならない用件があったので、午後イチの下田での仕事に間に合わせるために、今回は熱海駅まで東海道新幹線を使った後で、特急スーパービュー踊り子号を利用することにしました。もっとも、特急といっても、JR伊東線と伊豆急行線は単線なので、すれ違い待ちなどの影響で、所要時間は意外に短縮されないんですが。
スーパービュー踊り子号には以前にも乗ったことがありますが、停車時に1両おきのドアしか開かず、入口で乗務員が切符を確認する…というプレミアム感たっぷりのシステム(演出)は相変わらず健在です。
足下の空間もたっぷりに、ゆったりと配置された4列シートは、リクライニングだけでなく座面のスライドも可能です。うまく調整すれば、身体にぴったりと合った快適な姿勢が作れます。天井まで回り込んだ巨大な窓から東伊豆の海を眺めながら、駅弁を食べつつ1時間少々の時間を優雅に過ごしました。
スーパービュー踊り子での時間は、これこそが特急クオリティだ!と実感できるものでした。もっとも、早く着くだけなら快速電車でも良いわけで、運賃に加えて特急料金を支払っているわけですから、それなりの体験をさせていただきたいところではあります。実は新幹線車両もそれは同じことで、きちんと特急らしい高級感はあるわけなんですが、毎日通勤で乗っていると、ついつい慣れきってしまいますね。
翌日・23日の金曜日は、朝から大阪市内での用事がありました。前日に宿泊するわけにはいかない状況で、朝イチで自宅を出てから、浜松駅~名古屋駅間の東海道新幹線はこだま号で、名古屋からはのぞみ号に乗り換えて移動することにしました。
普段はのぞみに乗る機会はほとんどないんですが、乗るときにいつも迷うのは指定席券を購入するかどうか。スーパービュー踊り子や、デビュー当時ののぞみのような全席座席指定の列車では選択の余地はないのですが、現在ののぞみは16両編成中3両の自由席があります。
通過駅が多く駅間が長いのぞみの場合、自由席に座り損ねると、長時間立ちっぱなしでの乗車を強いられる可能性があります。指定席なら、確実に座れるわけですが、近い席にちょっと困ったマナーの乗客がいても、他の席に逃げるのはかなり難しくなる…というリスクがあります。以前、お酒の臭いを漂わせた紳士から、1時間ほど講釈を伺いながら浜松まで帰った思い出(苦笑)があります。指定席券を買うべきかどうか、相当迷いました。
結局指定席券を購入した私でしたが、今回は、周りのお客様にも恵まれて、快適な移動時間を過ごすことができました。N700A系の車両は、座席の全ての列に電源コンセントが用意されているのがいいですね。スマートフォンのバッテリーはまる一日なら何とか持ってくれるのですが、充電できる安心感があります。
余談ですが、仕事を済ませた帰りに、新大阪駅の土産物売り場に赤福が並んでいるのを見かけました。「どうしてこんなところに?」と思いつつも、ついついひとつ買ってしまいました。
赤福と言えば、もちろんお伊勢参りのお土産で、私たちも毎年欠かさず買って帰ってきます。お伊勢参りが云々という以前に、とにかく美味しいお菓子だと思います。
以前、立て続けに大阪と東京に出かける用事があったときに、日没時間の違いで地球の丸さを実感した…という話をしたことがありました。今回は、日没時まで滞在するような日程ではなかったので、そうした感覚はありませんでしたが、それでも、例えばエスカレーターで「追い越し車線」はどちら側か?など、些細な点でもそこが普段生活している場所と違うことが実感できます。それを煩わしいものではなく、楽しく思える…というのは、やっぱり私自身が旅行するのが好きだからなのでしょうね。
考えてみると、仕事ではあちこち飛び回っている私ですが、プライベートでの旅行は最近めっきり少なくなりました。結婚する前は、青春18きっぷでふらりと仙台へ…なんて暴挙に出たこともありますが、家族が増えるとさすがにそこまで身軽に動くわけにも行きません。
それでも、やっぱりまたどこかに遊びに出かけたい気持ちは持っています。いつかは本州全県制覇、さらには47都道府県制覇までやってみたいものですが…さすがにそこまでは厳しいかも知れませんね。
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