ちょっと前の話になりますが、10月4日(現地時間)からアメリカで開催されたAdobe社のクリエイター向けイベント・Adobe MAXで、VAIO株式会社(以後「VAIO(株)」)がタブレットPCの試作機を展示したそうです。これに先立って、国内のメディアにもお披露目されたようで、各方面に記事が出ています。
ソニーが「VAIO」ブランドで販売していたパソコン事業は売却され、今年7月からVAIO(株)としての事業が始まりました。しかし、スタート当初は、従来ソニーから販売していたVAIO Pro 11/13などを継続して取り扱っている状態。これまで数多くの「とんがった」PCを生み出してきたVAIOブランドが存続したことにはホッとしていたものの、大事なのはこれから出てくる「VAIO(株)のVAIO」がどんなモノになるのか?だと思っていました。
当初、Adobe MAXでは「タブレットPC」を展示するとアナウンスされました。ソニー時代のラインナップでタブレットPCを名乗れそうな製品は、以前私が「気になるVAIO」として取り上げたことがあるVAIO Tap 11と、大画面タッチパネル一体型端末のVAIO Tap 21くらいでしょうか。先日発表されたばかりで、新しいレッツノート・CF-RZ4にも採用されたCore Mプロセッサの存在を考えると、VAIO Tap 11のコンセプトを生かして、さらにスリムに、軽量化したタブレットが出てくるのかな?というのが私の予想でした。
お披露目されたタブレットPCは、12.3型のペン入力対応タブレット端末に、マグネットで吸着して一体的に持ち歩ける無線キーボードがセットされている…という形態。VAIO Tap 11のコンセプトを生かしたスタイルで、この点では私の予想は的中したと言って良いでしょう。しかし、全く想定外だったのは、そのタブレット部分の中身でした。
この端末に乗せられていたCPUは、Core Mプロセッサではなく、Core i7-4760HQだったそうです。クアッドコア・8スレッド動作で、動作周波数は2.1~3.3GHz。グラフィックスコアも、最上級のIris Pro Graphics 5200が統合されています。本来なら大画面ノートや省スペース一体型デスクトップなどに使われるものです。試作機を見ると、さすがに発熱が大変なのか、スタンドで横置きに立てたときの上側側面全てに通気口が開けられているのが目に付くほか、タブレットにしては筐体が少々厚めに見えますが、それでもCF-RZ4のタブレット形態時よりは薄そうです。
VAIO(株)は、どうやらPCというよりもグラフィックス向けのワークステーションをタブレットとしてモバイルさせようとしているようです。このあたりは、Adobe MAXをお披露目の場として選んでいる時点で、もうちょっと的確に読み切れても良かったはずなんですが、何とも迂闊でした。
設立当時から、PCの「本質+α」というキーワードを掲げていたVAIO(株)でしたが、彼らにとってのPCの本質は、どうやら「モノ作りのための道具」ということだったようですね。思想としては私の思うところにかなり近くて共感できます。ただ、私自身の現在の「モノ作り」には、ここまでとんでもないパワーは必要なさそうで、この試作機がニーズに完全にハマるかどうかは微妙なところです。
この試作機が「VAIO Tap 12」としてそのまま製品化されるとはちょっと思えないんですが、彼らが「とんがった」製品を世に送り続けようとする意志は確かに伝わってきました。新しいVAIOとして控えているプロジェクトは、これひとつだけではないはずです。どんなモノが出てくるのか楽しみで、何だかワクワクしますね。
ただ、ちょっと心配なのは、ソニーから離れて小さな会社になったVAIO(株)が、会社としての経営をこのラインナップで維持していけるのか?というところではあります。この「Tap 12」を映像系プロダクションに一括納入する…というような商売が展開できたとしても、売れる台数は限られていますよね。
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