新しいレッツノート・CF-RZ4を使い始めてから50日ほどになります。すっかり、「レッツノートのある暮らし」が私の日常に戻ってきました。…いや、「戻ってきた」とは言えないでしょうね。今までのレッツノートがもたらした世界とは、明らかにレベルが違います。

今まで使ってきたレッツノートたちはどれも、モバイルノートPCとしては当時の水準を超える能力を持っていましたが、さすがに自宅にあるデスクトップ機と比べると処理能力の差を明らかに感じられるものでした。「我慢せずに使える」と表現したことも何度かありますが、それは、自宅から持ち出して使える環境は相当我慢しなくてはならないのが当たり前だ…という前提に立って、「あれ?意外に大丈夫じゃん」という感覚だったのだと思います。

しかし、昨年貸していただいたCF-MX3、今回購入したCF-RZ4と、実にきびきびと動きます。自宅の自作デスクトップと比較しても、パフォーマンス面での不満は全く感じません。PCの処理能力が年々進歩してきた一方で、Windowsもより小さなデバイス向けにスリム化が進んできましたから、今や「動作が重いPC」なんて存在しないのかも知れません。

しかし、体感できる差は感じないものの、それが客観的にはいったいどんなレベルなのか?は気になるところです。かつては、レッツノートを購入する度にベンチマークとして様々なソフトを走らせてみたものですが、今回も遅ればせながらやってみることにしました。


まずは、Windows自身に内蔵されているベンチマーク・「Windows エクスペリエンスインデックス」を見ていきましょう。とは言っても、Windows 8.1では表面的にはこの機能は見えないようになっているんですが、内部的には同様のテストを行う「WinSAT」というプログラムが存在しています。

Windows エクスペリエンスインデックスが初めて導入されたのはWindows Vistaのとき。3DグラフィックスをWindowsのユーザーインターフェースに積極的に取り入れた当時は、こうしたものが必要だったのでしょうけど、UIがフラットでシンプルなものに回帰してきた現在、存在意義は確かに薄くなってきています。

WinSAT実行中... Windows 8.1の「スタートボタン」を右クリックして「コマンドプロンプト(管理者)」を選択すると、コマンドプロンプトの真っ黒なウィンドウが立ち上がります。ここで「winsat formal」と入力してEnterキーを押すと、たくさんの文字列を表示しながら一連のテストが実行され、「%windir%\Windows\Performance\WinSAT\DataStore」(%windir%はWindowsのインストールされているフォルダを示す環境変数)フォルダに、他のいくつかのファイルと共に「[現在の日時] Formal.Assessment (Initial[またはRecent]).WinSAT」という名前のXMLファイルが出来上がります。

WinSAT Viewer このXMLファイルの中に、様々なテスト結果と共に、従来の通り各項目が出力されているんですが、このファイルを直に確認するのは結構面倒です。WinSAT ViewerというWebサービスがあるので、このページの指示どおりに操作すると、簡単に内容を確認することができます。

Windows エクスペリエンスインデックス (WinSAT.exe)
Machine 自作デスクトップ CF-RZ4CFDJP
プロセッサ 8.1 6.1
メモリ(RAM) 8.1 5.9
グラフィックス 5.9 4.4
ゲーム用グラフィックス 5.1 4.5
プライマリハードディスク 8.1 8.05

数値は指数化されてしまっているので、定量的な比較はちょっと難しいところなんですが、さすがに自宅の自作デスクトップ(Core i7-2600K、RAM 8GB、240GB SSD)と比較すると、明らかに一段落ちるレベルであることは分かります。しかし、最低数値である「グラフィックス」でも4.4ありますから、一般的な利用については十分実用的なレベルが確保されている…といえそうです。

「プライマリハードディスク」の値がほぼ同じなのも特筆すべきところです。CF-RZ4では、ストレージにM.2(SATA)接続のSSDを採用しているそうで、ハードウェア自体が自作デスクトップとほぼ同レベルだから数値も近い…ということなのでしょう。昔から、ハードディスクへのアクセスは体感速度にずいぶん影響を与えていましたから、この部分のボトルネックを解消したことが、使用感の向上に大きく寄与していそうです。


続いて、昔から何度か総合ベンチマークとして使ってきたCrystalMark 2004R3を走らせてみました。これは、4スレッドまでのマルチコアにしか対応していないので、4コア/8スレッドのCore i7-2600Kを搭載している自作デスクトップではフルパワーで回ったときのポテンシャルが計れないんですが、このくらいおとなしい条件の方が、普段の使用状況に近い状態を適切に計れるのかも知れません。

CrystalMark 2004R3
Machine 自作デスクトップ CF-RZ4CFDJP 2007~2008年
ワガママVistaちゃんPC
ALU 73126 28870 20720
FPU 70163 22335 21607
MEM 50208 25766 13919
HDD 43965 34564 10341
GDI 16889 10831 6931
D2D 2616 3955 9522
OGL 5361 4948 25116
Mark 262328 131269 108156

こちらも、CF-RZ4が自作デスクトップよりは一段落ちるレベルにいることの再確認になったわけですが、それでも現役の1世代前、2007年から2008年にかけて構成を入れ替えた「ワガママVistaちゃんPC」と比べると、ゲーム向けのグラフィックス周り以外はCF-RZ4の方が強力であると言えそうです。

CPUの演算能力は、CF-RZ4が現行自作機の約4割と言ったところでしょうか。自作機のCore i7-2600Kは3.4~3.8GHzで動作するのに対し、CF-RZ4のCPUであるCore M-5Y10は0.8GHz~2.0GHzと、かなり動作周波数は低いレベルに抑えられています。CPUのベンチマークは連続して大量の計算をさせるので、TurboBoostの最高速で動作させ続けるのは難しいはずですから、基本動作周波数の差が効いてくるはずです。クロック当たりの性能では、世代が新しいCore Mの方が優秀といえそうです。

RAMの性能がぴったり半分に近いこともわかります。CF-RZ4は、RAMへのアクセスが4GB搭載だとシングルチャネル、8GB搭載だとデュアルチャネルになってメモリ性能が異なる…という噂を聞きましたが、数値を見る限り、私が使っているCF-RZ4CFDJP(4GB搭載)ではシングルチャネルでのアクセスになっていることは間違いないでしょう。

Core MはRAMをビデオメモリにも共用するシステムなので、メモリ性能はビデオ性能にもかなり影響しているはずです。ただ、そのビデオ性能では意外に健闘していて、特にD2Dの項目では現行自作機を上回っています。現行自作機CPUのSandy Bridge世代から、CF-RZ4のBroadwell世代にかけての進歩は、省電力化とビデオ性能強化である…と言っても過言ではありませんが、このあたりがきちんと数字に表れているようです。もっとも、どちらも日常的な利用では全く不満を感じないことは付け加えておきます。


Windowsエクスペリエンスインデックスではほぼ差が出なかったものの、CrystalMark 2004R3ではかなり差が出たストレージに関する性能評価を確認するために、CrystalDiskMarkも走らせてみました。

CrystalDiskMark 3.0.3 x64 (単位:MB/s)
Machine 自作デスクトップ CF-RZ4CFDJP
SSD Intel SSDSC2CT240A3
[SSD 330Series(240GB)]
SAMSUNG M2NTE128HMGR
Sequential Read 458.962 477.204
Sequential Write 200.263 138.921
Random Read 512KB 392.496 399.541
Random Write 512KB 161.801 130.878
Random Read 4KB(QD=1) 17.017 27.239
Random Write 4KB(QD=1) 67.007 50.371
Random Read 4KB(QD=32) 177.064 341.45
Random Write 4KB(QD=32) 68.736 132.332

この結果からすると、両者の間に大きな差はないと言えそうです。先にも触れたとおり、SSDの採用が全体としての使用感の向上に結びついている可能性は高いと思います。特に一番下の2行、キューの深い4KBランダムアクセスに強いCF-RZ4の内蔵SSDは、Windowsシステムの運用のためにはより有利かも知れません。


ベンチマークを走らせていて抱いたのが、「ベンチマークってこんなにワクワクしないものだったっけ?」という思いでした。昔は喜々としていろいろなプログラムを走らせて競争させていたんですが…。

最近のパソコンはどれも実用上には十分な能力を持っているので、競争させても仕方ない…ということもあるかも知れないんですが、それよりも大きいのは、自分自身がPCの能力をフル回転させるような作業を全然しなくなってしまったことでしょう。振り返ってみると、3次元CGのレンダリング、楽曲の音声データの作成、3Dグラフィックスによるゲームなど、かつてはPCの性能差が快適さに直結するような作業をいろいろしていたんですよね。快適になるから速いPCが欲しかったし、速さが確認できるのが嬉しかったんです。

もっとも、それらの作業には飽きてしまったわけではなくて、私自身、今でもやりたいことばかりです。ビデオカードでも追加すれば、自作機はまだまだ数々のパワフルな業務に対応できるはずです。あとはソフトウェアと時間さえあれば…ということになりますが、そこがいちばん厳しいハードルかも。宝くじでも…って、いい加減に聞き飽きましたよね(涙)。



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