水曜日・11日に、槇原敬之のニューアルバム「Lovable People」が発売されました。今年歌手生活25周年を迎える彼の、通算20枚目になるオリジナルアルバムということで、いろいろと節目づくしの作品となります。私はCDを購入して聴いているところです。
最近は、新作のCDやDVDを購入するときには楽天ブックスで予約することが多いですね。PCやスマホから注文しておけば、CDショップに行かなくても発売日前日くらいには自宅に届いてしまうわけですから、実に楽です。
まあ、それ自体はAmazonでもどこでも通販なら同じなんですが、楽天ブックスの場合はグループ内で楽天スーパーポイントを使い回しできるのが結構大きいですね。全く別のモノを買ったときのポイントを活用できます。すっかりポイントサービスに囲い込まれている自覚はあるわけですが…。
このアルバムに収録されているのは全部で13曲。タイアップが付いて、シングルとして既に売られている「Fall」や「Life Goes On ~like nonstop music~」は耳に馴染みがあるわけですが、半分以上は未発表作品です。オリジナルアルバムがシングルベストのようになってしまうアーティストも結構いる中で、アルバムでなければ聴けない曲が多くあるのは、私のように長年ファンを続けてきた人間にとっては嬉しいものです。
その一方で、カバーアルバム「Listen To The Music 3」こそ出ていたものの、前回のオリジナルアルバム「Dawn Over the Clover Field」以来の2年間、彼の「新作」は意外に少なかったこともわかります。数ヶ月に一度シングルCDを発売していたような昔とは違って、マイペースに音楽を楽しんでいる印象を受けます。もっとも、それでメシを食っているわけですから、いつも大変なのでしょうけど。
いつも彼のアルバムを聴いていて面白いのは、1曲目から最終曲まで通して聴く、1時間前後の「アルバム」という構成の中に、一つのストーリーが見えたり、あるいは意表を突くテクニックを感じられたりすること。今回も、期待通りの「アルバムという作品」に仕上がっていました。
1曲目の「Theme for Lovable People」は、歌が入らない、いわゆるインスト曲です。彼のアルバムにはときどき冒頭にこういうものが入っているんですが、単なるイントロ曲としての存在ではなく、いつもどこかに収録曲のモチーフが取り入れられていて、最後まで聞いたところでニヤリとさせられます。ときには、あるアルバムのイントロに使われたモチーフが、次のアルバムまで引き継いで使われた…なんて例もありました。もちろん、今回も期待に違わない仕掛けになっています。
このアルバムの構成は、「Lovable People(愛すべき人々)」がたくさん登場するオムニバスと言えそうですが、詞も曲も、同じ人が作っているとは思えないくらい、実にバリエーションに富んでいます。アレンジも、彼の原点であるテクノ系ポップから、このところ傾倒している民族音楽系、さらには昭和歌謡系(演歌!?)と実に多彩。とにかく、聴いていて飽きさせません。とはいえ、どんな曲になっても基本的には彼のカラーで一本筋が通っているのが感じられるのも、これまた面白いところなんですが。
注意深く聴いていると気づくのが、曲間の長さへの気配り。ほとんど間隔を開けずにガラリと雰囲気を変えてみたり、十分に余韻を感じさせたり…と、1秒もあるかないかの差なんですが、これが結構効いてきます。もちろん、これは次にどの曲が来るかで全然味付けが変わります。アルバムという一編の巻物になって初めて生まれてくる感覚です。
アルバムといえば、先日行われたグラミー賞の授賞式で、最優秀アルバム賞のプレゼンターとして壇上に立ったプリンスのスピーチが話題になりました。彼は、こう言ったのだそうです↓。
Albums, remember those? Albums still matter. Like books and black lives, albums still matter.
日本語に訳すなら、
アルバム…って、まだ覚えてる?。アルバムは、今もまだ大事なもの。本や、黒人たちの命と同じように、アルバムは、今もまだ大事なもの。
…といったところでしょうか。
今のアメリカという国の状況を考えると、彼が最も伝えたかった部分は「black lives」のような気もしますが、それでも、ダウンロード購入が当たり前になった音楽業界で、アルバムという作品スタイルの存在感がすっかり低下してしまった現状を、実にシンプルな表現で皮肉っています。
音楽が曲単位で「量り売り」されるようになってからもうずいぶん経ちます。iTunes Storeでは、アルバムは全曲セットで購入すれば、個別に購入するよりはお得な仕組みになっているものの、アルバムの曲リスト表示の中でも個別の曲に購入ボタンが用意されていたり、さらには人気度の表示もあったりして、「つまみ食い」に誘導している印象を受けます。
「Lovable People」では、13曲中の8曲を購入するとアルバムと同額(つまり、7曲以下ならアルバムより安い)…という価格設定になっているわけですが、シングルベスト的なアルバムならともかく、この作品のような未発表曲中心のアルバムで、この状況でどれだけの人がアルバム一括購入をしようと思うでしょうか。よっぽどそのアーティストがお気に入りでない限り、アルバムとしては買わないのではないかな?と思います。
もっとも、そういう人たちは、添付されてくるアイテム等も考慮して、今でもCDアルバムを購入しているような気もしますが、現在はダウンロード販売されている音源の方がCDよりも高音質になるハイレゾ時代ですし…なかなか悩ましいところです。
コメントを残す