週末限定ということで、ステップワゴンスパーダハイブリッドを貸していただいた私たち。まる1日乗ってみる中で、e:HEVが乗り換えるに値するだけのクルマなのか?という疑問の答えを探します。日曜日は、まずは私がハンドルを握り、家族三人でドライブに出掛けることにしました。
今回の行き先は、ホンダのディーラーでいただいた「Hondaじゃらん」(もちろんじゃらんとのコラボで作られているフリーマガジン)で探しました。高速道路をちょっと走って出掛けられるくらいの距離の場所…ということで、岐阜県可児市の「花フェスタ記念公園」に決定。自慢の広大なバラ園はまだ少し時期が早いかも知れませんが、この時期は広いコスモス畑なども楽しめます。
ガソリン車とe:HEVでは、操作系に一部違う場所がある話は前回もしているわけですが、具体的にはシフトレバーとパーキングブレーキがそれです。あと、ボタンを押して起動するのはどちらも同じなのですが、ガソリン車はエンジンを始動するボタン、e:HEVの場合はシステム起動のボタンということでエンジンは普通は始動しない…という差もあります。また、メーターパネルの表示もずいぶん違います。
シフトレバーは、右に引き寄せてから奥(上)に倒すとR、手前(下)に倒すとDのポジションに入り、手を離すと元の位置に戻ります。Pレンジはレバーではなくボタン操作。プリウスなどの他社のハイブリッド車でもよく見かけるタイプです。奥にRレンジ、手前にDレンジという配置は従来のオートマチック車と全く同じはずなのですが、触ってみると軽い動きにかなり違和感があります。
シートベルトを装着し、DレンジまたはRレンジに入れて、アクセルを踏むとパーキングブレーキが自動的に解除され、クルマが動き出します。停車するときは、Pボタンを押して、パーキングブレーキのスイッチを引きます。こちらも、やっていることは大して変わらないはずなのに、やっぱり違和感はあります。まあ、どちらも使っていれば慣れてくるのだと思うのですが。
出発してしまえば、あとは基本的に普通のクルマと同じ。アクセルを踏んで加速し、フットブレーキを踏んで止まります。…というのは運転する人間の側の動きで、実際にクルマがやっていることはずっと複雑です。
最初にアクセルを踏み込むと、まずはモーターがバッテリーから電力をもらってタイヤを回し始めます。加速を強めようとすると、今度はエンジンが発電を始めて、電力をアシストしながらバッテリーと一緒にモーターを回します。スピードが乗ってくると、エンジンは発電した電力でタイヤを回しながらバッテリーにも充電を行います。高速で巡航しているときには、エンジンをタイヤに直結して回すこともあります。
減速するときは、タイヤから伝わる回転でモーターを回してバッテリーに充電する、いわゆる「回生ブレーキ」が働きます。1.5リッターターボのガソリン車である我らがブラックパール号の場合、エンジンブレーキが効かないのがちょっと不満でしたが、このクルマの回生ブレーキはしっかり効きます。
停車 バッテリーでモーターを駆動 エンジンとバッテリーの電力を合わせモーターを駆動 回生ブレーキで充電 エンジンで発電してモーターを駆動 エンジンでモーターを駆動しながらバッテリーを充電 エンジンを車軸と直結 エンジンを車軸と直結、バッテリーにも充電
メーターパネル内のディスプレイに、このあたりの状況を表示することができますが、見ていると実にめまぐるしく状態が変わります。バッテリーの残量も見ながら、臨機応変に切り替えていくんですね。
こんなにややこしいことをしているのに、それをドライバーに感じさせないのが、このシステムの凄いところ。何しろ、エンジンがかかったり止まったりしていることすら、車内からは容易には認識できません。このあたりは、防音がしっかり対策されている部分もあるのでしょうけれど、アクセルを思いっきり踏み込みでもしない限り、基本的に車内は実に静かです。
操作は普通のクルマと同じといえますが、操作に対する反応は別次元です。もともと、ミニバンらしからぬ動きの軽さが魅力の現行ステップワゴンですが、このクルマには、とにかくアクセルを踏んだだけ、いくらでも前へ前へと出て行くパワーがあります。
これを実感できるのが高速道路。本線に合流するときの加速も、追い越しの際の加速も、同じように軽く踏み込んでやるだけでグッと前に出て行きます。特に、時速100km近くが出ているところからさらに伸びていくときの力強さは、ガソリン仕様にはなかったものです。
そして、高速走行時の安定性も別次元。これは、ボディのほぼ中央の1列目座席下に、重量物であるバッテリーが据えられたことによる低重心化が、間違いなく効いています。もちろん、重くなった車体向けに、足回りにかなり手が加えられたことも奏効しているでしょう。地元企業のヤマハ発動機が開発した技術であるパフォーマンスダンパー(e:HEV SPADA G・EXにのみ装備)も、車体の弾性変形の押さえ込みに働いているはずです。
車間を保ちながら一定速度を維持するACC(アダプティブクルーズコントロール)、車線に沿った走行を支援するLKASの動作は、挙動がずいぶん穏やかになりました。ブラックパール号のACCは、たまに急減速・急加速になってしまう場面があるのですが、今回の試乗車では皆無でした。これまで以上に、クルマ任せの走りができそうです。e:HEVでは、渋滞などで車を停止させるところまでACCで制御できるようにしているわけですから、それだけデリケートな調整ができるようになっているのも当然かも知れません。
その渋滞追従動作自体も、非常にスムーズ。室内にほとんど加速度を感じさせずに、優しく止まってくれます。これも、クルマに任せてしまって大丈夫そうです。もちろん、周囲の環境条件などによって確実に動作しない可能性もあるので、そこを見極める必要はあります。
ちなみに、ACCは最大時速135kmまで設定可能。LKASも時速120kmで車線維持を行います。新東名高速道路等で実施される「最高速度・時速120km」に、しっかり対応しています。
花フェスタ記念公園では、メインのバラ園はまだまだこれから…という感じでしたが、エントランス部分に整備されたウェルカムガーデンでは、色とりどりのバラたちが出迎えてくれました。コスモス畑もキレイでしたね。ここで写真を並べても良いのですが、テーマが散らかってしまいますし、別記事で紹介させてください。
帰り道は、新しい操作系にも慣れて、ゆったりとドライブを楽しむことができました。妻は高速道路では運転しない主義…ということで、浜松に戻ってから彼女に運転をバトンタッチしたわけですが、続きはまた後で。
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