25日未明(日本時間)に、Microsoft社が「What’s Next for Windows」と題してオンラインイベントを開催しました。題目どおり、次のWindowsがどんなものになるのかがお披露目されるということで、私もどんな話が出てくるのか気になっていました。
とはいえ、早い段階から「Windows 11」が発表されるのでは?という話は出ていました。そもそも、イベントの開始時刻からして、現地時間では24日の午前「11」時。イベント案内ページに公開されたWindowsロゴのイメージから漏れてくる光には、何故か窓の横桟がなく「11」と書いてあるように見える…とか、「イベントが待ちきれない皆さんのために」と、過去のWindows起動音をモチーフにした「11」分ちょうどのムービーが公開される…とか、匂わせっぷりが尋常ではありませんでした。
挙げ句の果てには、Windows 11の「起動イメージISOファイル」なるものがリークされ、実際にセットアップしてみた動画をアップする者も出てきたりして、この日に発表されるのが「Windows 11」であることは、確定した事実であるかのようなムードになっていました。一方で、コレでどんでん返しでもあれば、事前にミスリードするリークを流すMicrosoftもなかなかの策士だなぁ…と、微かな期待もしていたわけですが。
残念ながらそんなサプライズは起こらず、予想どおりに「Windows 11」は発表されました。Microsoft社の紹介ページから、いろいろなスクリーンショットが確認できるようになりましたが、半透明のすりガラスのようなタスクバーの上に、スタートボタンとアイコンがセンタリングされて配置されているデスクトップ画面は、確かにコレまでのWindows 10とはずいぶんイメージが違います。
タスクバーからせり上がるというよりも、タスクバーの上に浮き上がるように現れるスタートメニューも、やはりデスクトップに対してセンタリングされた状態で、すりガラスの上にアイコンが並びます。ガラスが丁寧に面取りされたように見えるウィンドウの角も含め、フラットでシンプルに徹したWindows 10と比べると、ずいぶんオシャレになった感じがします。
変わっているのは見た目だけではなく、複数のウィンドウをスナップしてタイル状に並べる機能が強化されていたり、ビデオ会議やチャットを提供するMicrosoft Teamsが統合されていたり…と、機能面のステップアップがかなりいろいろあるようです。確かに、これだけ大きく変えるとなると、これまでと同じ「Windows 10」という名前で呼び続けるのには違和感があります。
Windows 10が登場するときには、「これが最後のメジャーバージョンアップ」と宣言していたような気がするのですが…。とはいえ、Windows 10からのバージョンアップは無償で、Windows Updateから普通に提供されるようで、これまでの半年に一度のバージョンアップと大差ないようにも思えます。もともと、今年下半期版の「バージョン21H2」では大幅にUIが刷新されるという話が伝わっていましたが、「Sun Valley」とも呼ばれていたこのプロジェクトの成果を「Windows 11」と呼ぶことにした…というのが実際のところのようです。
かつてのWindows 7も、Windows 8 / 8.1も内部的なバージョン番号はWindows Vistaと同じ6のままでした。今回も同じように、変化をイメージさせるためにブランドとして数字をカウントアップした…というだけの話なのかも知れません。そういえば、Vistaも見た目に相当こだわったWindowsでしたが、評判は芳しくありませんでした。今回は、どうなることやら。
ただ、気になるのは同時に発表されている動作要件。イベントのムービーの中では全く語られませんでしたが、実は、Windows 11を動作させるための要件は、Windows 10からかなり大きく刷新されています。
プロセッサ: | 1 ギガヘルツ (GHz) 以上で 2 コア以上の64 ビット互換プロセッサまたは System on a Chip (SoC) |
RAM: | 4 ギガバイト (GB) |
ストレージ: | 64 GB 以上の記憶装置注意: 詳細は下記の「Windows 11 を最新状態に維持するために必要な空き領域についての詳細情報」をご覧ください。 |
システム ファームウェア: | UEFI、セキュア ブート対応 |
TPM: | トラステッド プラットフォーム モジュール (TPM) バージョン 2.0 |
グラフィックス カード: | DirectX 12 以上 (WDDM 2.0 ドライバー) に対応 |
ディスプレイ: | 対角サイズ 9 インチ以上で 8 ビット カラーの高解像度 (720p) ディスプレイ |
インターネット接続と Microsoft アカウント: | Windows 11 Home Edition を初めて使用するとき、デバイスのセットアップを完了するには、インターネット接続とMicrosoft アカウントが必要です。Windows 11 Home の S モードを解除する場合もインターネット接続が必要です。S モードの詳細はこちらをご覧ください。すべての Windows 11 Edition について、更新プログラムのインストールや一部の機能のダウンロードと使用にはインターネット アクセスが必要です。 |
RAMやストレージ、グラフィックスカードとディスプレイ解像度については、従来より底上げされていますが、7年前のレッツノート・CF-RZ4でもクリアできているくらいですし、そんなに厳しい条件ではありません。インターネット接続については、無いことを想定する方が難しいくらいで、これも問題ないでしょう。UEFI、セキュアブート、TPM 2.0あたりも、Windows 10世代のハードウェアならクリアできているものは多そうです。
しかし、なかなか曲者なのはCPUの要求仕様。「64ビット」が明記されたことで、32bit版が提供されないことは明らかになりましたが、これ自体はそれほど問題にはならないでしょう。Windows 8時代の8型タブレットあたりは、搭載されていたAtomプロセッサーが64bit非対応だったのでアウトとなりますが、それ以前に他の要件でもいろいろと引っかかりそうです。
ただ、「64 ビット互換プロセッサ」と書かれたリンク先にある対応CPUのリストを見ると、深刻な事態が見えてきます。Intel社製プロセッサーでは、Core iシリーズだと8000番台以降のものしか掲載されていません。AMDのRyzenだと2000番台以降になっているようです。職場で使われているCore 2 Duo搭載のWindows 10デスクトップ(!)あたりは論外だとしても、Windows 7~8世代のPCでWindows 10にアップグレードして使われているものや、初期のWindows 10プリインストール製品までもが弾かれてしまうことになります。
Windows 11の紹介ページから、「PC正常性チェック」というアプリをダウンロードして実行することで、現在使っているパソコンがWindows 11に対応しているかどうかを確認することができます。「今すぐチェック」ボタンを押してみると、↓
結果が表示されます。我が家には結構たくさんパソコンがあるわけですが、このチェックをクリアできたのは2年前のレッツノート・CF-SV8ただ一台だけ。
残りはすべて、「このPCではWindows 11を実行できません」という判断をされてしまいました。どこが引っかかっているのかが表示されないのは不親切だと思いますが、後からアップグレードできるようなパソコン自体がそもそも少なくなってきているので、これでも問題ないのかも知れません。
古いハードウェアのサポートを続けていくのは、ソフトウェア開発側には大きな負担になります。Windows 10のバージョン21H2をWindows 11と位置づけ直した理由には、古いハードウェアを断ち切る理由付けが欲しかった…という事情も大きいのではないかな?と思っています。
ハードウェアとソフトウェアを一体で提供しているApple社は、もっと柔軟かつ大胆にハードウェアの刷新ができるんですよね。Macの世界では、OSの操作感は維持しながら、CPUアーキテクチャーの入れ替えを何度も経験してきました。現在も、自社開発のM1とIntel製CPUを混在させています。
我が家でWindows 11への移行を却下されたパソコンで、一応それぞれの要件項目を確認してみたところ、全てCPUの要件で引っかかっているようです。CF-RZ4の場合は、世代云々以前に、動作クロックがベースで0.8GHz(Turbo Boostで2GHzまで上がるのですが)というところで引っかかったのかも知れません(苦笑)。
Windows 10は、2025年10月14日までサポートが継続される…とのことなので、あと数年は使っていけますが、その後の身の振り方は考えなくてはなりません。妻のノートパソコンは更新が必要になりますが、それ以外はサポート終了でお疲れさま…ということで良い気がしています。CF-SV8でもデスクトップ並みの仕事をこなせる体力はあるくらいですし、広いデスクトップやキーボードが欲しければ、つないで使えば済みますね。Windows 11ならマルチディスプレイでのウィンドウのレイアウトも保持してくれるそうですし。
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