先週の日曜日からずっと、完全ワイヤレスイヤホン・WF-1000XM4の話題を連投してきたわけですが、ようやくいちばん大事な性能である「音」の話をできる段階までやって来ました。
スマートフォンへのアプリのインストールを完了し、WF-1000XM4を接続すると、初期状態ではノイズキャンセリングが有効になる場合が多いと思います。「思います」という表現になってしまうのは、状況によって変わり得るからなのですが、これについては改めて触れることになるかと思います。
ともかく、ノイズキャンセリング機能が有効なら、両耳にイヤホンを差し込むと、周辺で鳴っていた様々な音は消え去り、そこに静寂が訪れます。
私には、2016年に「ハイレゾ対応・ノイズキャンセリング対応のイヤホン」を使った経験があります。スマートフォン・Xperia Z4と組み合わせることで機能する、MDR-NC750という製品です。
当時から、周囲の雑音は非常に高いレベルで低減させることができていたとは思うのですが、当時の私はノイズキャンセリング機能の作り出す無音の環境には明らかに違和感を覚えていて、「無音の音」というタイトルで記事を書いています。本文中では「『無音』という微かな音がしているような感覚」なんて表現もしています。奇跡的に、Xperia Z4もMDR-NC750もまだ動作する状態で保管してあったので、改めて引っ張り出して音を聞いてみましたが、やはり「無音の音」がしました。
これと比べると、WF-1000XM4が作り出すノイズキャンセリング環境はずいぶん自然なものになりました。MDR-NC750の時にあった、耳にツーンとくるような感覚はありません。現に私も先ほど「静寂」と表現しています。
デジタル演算の速度が当時よりもずいぶん上がり、外部から取り込んだ音に対して、より速く逆位相の信号を返せるようになっているのは、当然奏効しているはずです。もちろん、そんな単純な話ではなく、他にも様々な面で進化しているのでしょう。
MDR-NC750の(というよりXperia Z4の)ノイズキャンセリング設定には、「ノイズ環境設定」という項目があって、現在どんな環境に身を置いているかによって、ノイズキャンセリングの特性を変化させられるようになっていました。実際に、このモード切替は結構効果があって、当時のノイズキャンセリングは、言わば「傾向と対策」で乗り切っていたのだな、と感じます。
一方、WF-1000XM4の場合は、このような切り替えをする設定はありません(新たなオプションはいろいろと増えていますが、このすぐ後で触れます)。どんな状況でも雑音は消し去れるのだ!という、ある種の自信も伺えます。
WF-1000XM4のノイズキャンセリングを使っていて感じるのは、ノイズキャンセリングで静かになった環境の上に、音楽にしろ、電話やWeb会議の声にしろ、ソースの音がキレイに乗っていること。不必要に大音量で鳴らす必要がありません。ノイズキャンセリングの有無で、音が変わったような印象も全く受けません。
WF-1000XM4の商品紹介サイトの冒頭にあるコピーは「静寂は、圧倒的な音質を求めた。」です。先代モデルであるWF-1000XM3では、「いい音には、静寂が要る。」でした。どこにいてもより良い音を聴いてもらうためには、どれだけ「聴かせたくない音」を取り除き、キレイな静寂が作れるのか?というところが肝心で、基本的な音質の追求とノイズキャンセリングの性能は車の両輪である…というのが、SONYの伝えたいところなのだろうな、と感じています。
そして、もうひとつ特筆しておきたいのが、設定をいろいろ切り替えても、同じように音がキレイに乗ることです。ノイズキャンセリング時には風切り音を低減する「自動風ノイズ低減」モードがありますし、外音取り込み機能(音声案内では「アンビエントサウンド」と喋りますが)では取り込むレベルを変更できる他に、人の声だけを積極的に取り込んで他のノイズは抑え込む「ボイスフォーカス」機能もあります。
面白いのが、外音取り込みのレベルを高くしても、ソースの音量はノイズキャンセリングで使っているときのままでちゃんと聞けること。単に混ざってしまうだけではなく、それぞれがしっかり聞こえます。
ノイズキャンセリングで静寂を作り出すのはもはや当たり前で、単に音をすべて消す…ということではなく、ユーザーの耳にどの音を届けるのか、あるいは届けないのかを、ある程度切り分けて制御できるようになっています。いわば「環境音をデザインできる」という世界です。環境音を仮想化してしまう…という言い方もできるでしょうか。
こうなってくると、音楽を聴いたりWeb会議をしたりするときだけ取り出して装着するのではなく、基本的には付けっぱなしで、どんな音に包まれるのか環境音のデザインを切り替えていく使い方をしたくなってきます。例えば、音楽などを流していないときでも、静かな環境で集中したければノイズキャンセリングが有効ですよね。
ただ、場面によってその都度切り替えるのはさすがに面倒です。そのあたりをフォローする仕掛けもちゃんと用意されているのですが…次回はそこをテーマにしてみましょうか。
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