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360 Reality Audioを聴く

Galaxy Watch4のディープなお話が続きましたが、また完全ワイヤレスイヤホン・WF-1000XM4の話題に戻ってきました。どちらも話題にしたくなるようなネタが満載のアイテムなんですが、Galaxy Watch4ではデータを蓄積しなくてはならない話も多くて、WF-1000XM4の方が今のところちょっと先行しています。

ハイレゾ、聴き放題」のときにちょっと言葉だけは登場しましたが、WF-1000XM4は「360 Reality Audio」認定を受けている製品です。これは、その名のとおり360度、前後上下左右の任意の位置に音を定位させ、「アーティストの生演奏に囲まれているかのような、没入感のある立体的な音場を体感」できるという、いわゆる立体音響の一種です。

Dolby Atmosなどと同様に、それぞれの音源がどの位置にあるかを記録している、いわゆるオブジェクトオーディオで、再生機器側がコレを解釈して音を鳴らします。WF-1000XM4の場合は、左右2チャンネルだけでこれを表現することになるわけですが、人間は最終的には左右2つの耳で音を聞いているわけで、雑音を徹底的にシャットアウトした環境を用意できていることも考えると、ウマくやれば相当巧妙に「騙される」はずです。

ちなみに、360 Reality Audioは、日本語の紹介サイトでは「さんろくまる・りありてぃおーでぃお」と読ませていますが、英語圏向けの説明だと「360」を「Three-sixty」と読んでいます。こうして2ケタごとに区切るのは、西暦年や回転角などを表現するときによく使われる位取りで、最近では北京オリンピックのフリースタイルスキーやスノーボードでよく耳にしましたよね。Twelve-sixty(1260)やFourteen-forty(1440)が何回転なのか、未だにピンときません(汗)。


Sony | Headphones Connectアプリには、360 Reality Audioに関する初期設定を行う機能も用意されています。これが相当本格的…と言うかマニアックなので、是非触れておきたいところです。

WF-1000XM4は、360 Reality Audioの「個人最適化」に対応していますが、このときに使用するのが両耳の写真画像。耳の形状から、外音がどのように反射して耳に入ってくるのかを解析しているようです。臨場感が得られる録音手法として、ハリボテの頭部の両耳の部分にマイクを仕込む「バイノーラル録音」というものがありますが、発想としては同様ですね。

耳の計測が完了したら、設定された情報を個人最適化対応のアプリに同期します。キャンペーンで無料体験クーポンがもらえる対象のサービスの中から、今回は「360 by Deezer」を選んでみました。操作自体は、基本的には確認ボタンをタップし続ければ完了します。非常に簡単です。


Deezer自体は基本的に洋楽のサービスなのですが、360 Reality Audio対応のコンテンツに限定するならば、日本のアーティストの音源もデモとして体験できる程度には用意されています。SONYが立ち上げた規格ですから、当然ではある訳なのですが。

イヤホンで音楽を聴くと、アタマの中で音が鳴っているような「頭内定位」という状況になりやすいのですが、360 Reality Audioでは自分の周囲の「空間で音が鳴る」感覚が得られています。頭内定位の回避というだけなら、以前からサラウンド機能で似たような効果が得られるものもありましたが、それらは往々にして「ぼんやりと広がっている」感じになりがちでした。360 Reality Audioの場合、個々の音の定位感は明確に保たれているので、そこが大きな違いと言えそうです。

用意されているのは打ち込みベースで作られているような曲が多いのですが、そうでなくてもマルチトラックの制作用データが残っていれば、360 Reality Audio向けに再構築するのはかなり簡単そうです。面白かったのはゴスペラーズの「風が聴こえる」。各メンバーの立ち位置が「あそこで歌っている」と明確に感知できるミックスになっています。

あとは、ライブ音源も結構面白いですね。ホールの広さ、パフォーマーの遠さが感じられますし、拍手喝采で会場が揺れるようなあの感じも、小さなイヤホンにもかかわらず表現できています。

ただ、上下方向への定位を実感できる音源は今のところ見つかっていません。楽曲の音源ばかりなのでそういうミックスをしていないだけなのか、そもそも上下方向は感知しにくいのか…というところはわかりません。映像作品やゲームなどに適用すると、このあたりの効果が確認できそうなのですが…。SONYでは、ARやメタバースとの組み合わせも想定しているようです。ソレは是非見てみたいですね。

あと、聴いていて気になったのが、再生音のレベルが上下して不安定に感じる曲が結構多いこと。個々の曲のミックスの問題なのか、それとも360 Reality Audioの問題なのか、WF-1000XM4の問題なのか…これまで、通常のステレオ音源ではそんなことは全く感じなかったので、前者2つのいずれかだとは思うのですが。


Amazon Music Unlimitedにも、360 Reality Audio対応の音源があります。残念ながら個人最適化には対応していないのですが、それでもステレオ音源と比較すると空間の広がりは感じられます。ギミック的な極端な定位移動も、個人最適化されたDeezerほどではないものの、明確に感じ取れます。Deezerで感じたような信号レベルの不安定さはなく、こちらの方が聞きやすいくらいです。

Amazon Music Unlimitedには、Dolby Atmosで提供されている楽曲もありますが、立体感という点では、360 Reality Audioと比べるとちょっと物足りない感じがします。もっとも、それこそがWF-1000XM4が「360 Reality Audio認定製品」である…というところなのかも知れないのですが。

360 Reality Audioは、なかなかよくデキた立体音響だとは思いますが、あとはいち企業で開発した規格から、どのくらいいろいろな場所で使われるようになっていくか?でしょうね。SONYの場合は、自社でコンテンツをある程度コントロールできる立場でもあるわけですが、あまり強引に進めすぎると、かえってウマく行かなくなるものです。様子を見ながら、使えるところでは楽しませてもらいましょう。



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