先日、WF-1000XM4の「音の話ができる段階に来た」と言いながら、ノイズキャンセリングの話で2回も寄り道をしてしまったところなのですが、もちろん音楽などの音そのものも、しっかり鳴ってくれます。
最初に紹介したときにも触れましたが、WF-1000XM4は、「ハイレゾオーディオワイヤレス (Hi-Res AUDIO WIRELESS)」のロゴを取得しています。ハイレゾのデータをそのまま伝送できないBluetoothヘッドセット等を念頭に置いて制定されたものだそうで、このロゴの使用を認められるためには、
- アナログ処理は 40 kHz の高域信号への対応
- デジタル処理は 96 kHz / 24 bit の量子化フォーマットへの対応
- 「ハイレゾ」に相応しいかの聴感評価の実施
という、従来の「ハイレゾ」ロゴ使用のための基準を満たすほか、
- 所定のハイレゾ対応のコーデックで無線転送を行っていること
- 左右独立型の場合、左右ユニット間の位相差が50 μs以内
といった条件をクリアする必要があります。最後の「50 μs以内」というところが完全ワイヤレスならではの要件になりますが、ハイレゾオーディオロゴを運用する日本オーディオ協会のリリースによると、位相差50 μsは、180 cm離れたところに180 cm離して設置したステレオスピーカー(リスナーとの位置関係が正三角形になる)の位置が、1.7 cmズレていることに相当するのだそうです。たったそれだけ?と思ってしまうところではありますが、言い換えると、それだけシビアに音を評価した上で、初めてロゴを認証しているわけです。
面倒なスペックの話はわからなくても、音を聞けばWF-1000XM4の素性はわかります。低音から高音まで、どこかが不自然に強調されることもなく、バランス良く素直に鳴らしてくれる…と感じます。それが、「心地よい音」と感じたことにつながっているかも知れません。重低音モリモリのBOSEみたいなアプローチも、それはそれでアリなのでしょうけど、最近の私の好みはこちらです。
また、「Sony | Headphones Connect」アプリからイコライザーを調整すると、出音がわかりやすく反応してくれます。これも、素の状態がしっかりと作り込まれているからこそでしょう。
こうした商品の評価は感性に属する部分もあり、どうしても好き嫌いが出るものです。もしかすると、この素直さは「キャラクターが薄い」という嫌われ方をするかも知れません。
WF-1000XM4は、Bluetoothに音を載せるときの変換方式である「コーデック」として、SBC、AAC、LDACの3種類に対応しています。SBCはほとんどのBluetoothデバイスで使えますが、音質はそこそこ。AACはSBCよりも音が良く、遅延が少ないのが特徴で、iPhoneで標準的に使われます。LDACは「ハイレゾ対応」として認められた超高音質のコーデックですが、iOSデバイスでは使えません。
LDACを使いたい場合は、Headphones Connectアプリのサウンド設定で、「Bluetooth接続品質」を「音質優先」に設定する必要があります。ただし、LDACはスマホのハードウェアやOS側が対応していないと使えないので要注意です。私のOPPO Reno3 Aは対応を事前確認済だったので、心配はしていませんでした。
「接続優先」にすると、Reno3 AとはAACでの接続になります。この場合、転送される音声はハイレゾではなくなりますが、イヤホン側でハイレゾ級の音に補完する「DSEE Extreme」が有効になり、鳴る音は意外に遜色ないモノになります。
それでも、LDACとの違いは明確に知覚できます。LDACの方が音の「輪郭」が明確になり、より多くの音が鳴っているのがわかります。特に、立ち上がりの速い音に違いが出ている気がします。
さて、ハイレゾ対応機器を評価するためには、やはりハイレゾ音源を聞かなくてはなりません。6年前は、基本的に個別の曲の音源データをダウンロード購入する…という手段で入手するモノで、数曲のデモソングを聴いてみる感じだったのですが、今はもっと手軽に入手できます。
月々定額で様々な曲が聴き放題のサブスクリプションサービスでも、ハイレゾ対応の音源が配信されています。例えば、Amazonの提供するAmazon Music Unlimitedでは、700万曲以上が最大 192 kHz・24 bit という「Ultra HD」で配信されているのだそうです。まずは、これを使って聴いてみました。実は、それ以外の曲もCD音質・非可逆圧縮の「HD」で配信されるところからして、相当タイヘンなことなのですが。
同じ曲のHD版とUltra HD版が提供されているわけではないので、直接的な比較は無理なのですが、同じLDAC接続で聴いても、両者の違いは明確です。言葉で説明するのはなかなか難しいのですが、ちょうどテレビでフルHDと4Kのコンテンツを見比べたような「解像度の差」というのが、音にもあるのだ…ということがわかります。
これなら基本的にはUltra HDで聴きたい!ということになるのですが、さすがにストリーミングで聴こうとすると、数Mbpsの通信速度が安定的に必要になるので、条件によってはLTEの通信速度では付いてこられない場合も出てきます。そもそも、それ以前にギガの消費がとんでもないことになってしまいますよね。自宅のWi-Fiでダウンロードしておいてから聴くことにしましょう。
ちなみに、WF-1000XM4も含め、SONYの商品で立体音響の「360 Reality Audio(さんろくまるりありてぃーおーでぃお)」に対応している商品を購入すると、Amazon Music Unlimitedなどの対応サービスが無料で使えるクーポンがもらえるキャンペーンが、3月25日まで行われています。360 Reality Audioについても、また改めてご紹介したいところです。
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