5月26日に、ホンダから新型ステップワゴンが正式に発表されました。昨年末に登場が予告され、2月頃からは事前予約が始まっていて、このときに商談ではある程度の諸元も示されていたはずなので、今回の発表は今さら…というところも多分にあるとは思うのですが、とりあえずこれで6代目となる新型の詳細が公式に明らかになりました。
それこそ今さらの話でありますが、私は5代目のステップワゴンに乗り続けてもうすぐ6年になります。現在乗っているe:HEV スパーダ「ブラックパール2世号」はまだ乗り始めて2年目ですから、次に乗り換えるクルマのことなんてまだ全然アタマにはないのですが、それでも6代目がどんな風に進化したのかは気になるところです。
5代目までのステップワゴンは、大きく分けると標準モデルとエアロ系デザインのスパーダの2種類のモデルがあって、それぞれに複数のグレードがある…というラインナップになっていました。5代目ではスパーダが売上の大部分を占めていた状況で、2モーターのハイブリッド仕様(現在のe:HEVですね)はスパーダにしか追加されませんでした。
私が6年前に最初のステップワゴンを購入した頃は、ホンダとしては明確に「スパーダが上」と謳っていなかったと思うのですが、そもそも最初(2代目の頃です)は上級モデルとして登場したスパーダは、5代目でも標準モデルより様々な装備が充実していました。私も最初からスパーダを選んだわけですが、必要な装備を選んだら他に選択肢が無くなったことが理由でした。
今回は標準モデルというものは存在せず、「AIR(エアー)」「SPADA(スパーダ)」の2種類のモデルがあり、さらにSPADAにはPREMIUM LINEという豪華版があります。HONDA車では、最近だとフィットが階層別ではない5種類のモデルを投入していたのが記憶に新しいところで、今回もAIRとSPADAで上下の差を意識させない意図があるのだろうな…と思いました。
しかし、装備を見てみるとSPADAの方が充実している状況は全く変わっていません。6代目の売りと言える多くの新装備…2列目シートのオットマン、全列に用意されるUSB Type-Cの充電端子などは、SPADAのみ標準装備で、AIRにはオプションでも装備できません。エクステリアなどのデザインコンセプトは、AIRも面白い味付けをしていると思ったのですが、これでは単に下級モデルだ…と取られても仕方ありません。積極的にAIRを売ろうとしているのか疑問です。実にもったいないなぁ。
先ほども書いたとおり、5代目オーナーの私としては、6代目でどこが変わったのか?が気になるのですが、今回確実にマイナスになっているポイントがあることが明らかになっています。リアゲートが「わくわくしない」仕様になった代わりに用意されたのは、電動でリモコン操作が可能な「パワーテールゲート」です。
パワーテールゲートを途中で止めることで、後方への出っ張りを少なくすることができるわけですが、位置を記憶してくれるとはいえ、わくわくゲートよりもちょっとアタマを使う装備になりそうです。コレが便利な場面もあるのでしょうけれど、私はわくわくゲートの方が好きです。
そもそも、このパワーテールゲートもSPADAにしか装備できないのは論外だと思うのですが。ホントにAIRを売る気があるのかしら?
エクステリア・インテリアのデザインやシートアレンジなどの部分は、ライバル各車の強みを取り入れながら、3列目シート床下収納などの独自ポイントは残して、イイ感じにまとめてきたと感じました。徹底的に水平線を意識したインテリアが特徴的で、車両感覚が掴みやすいほか、車酔いしにくい効果もあるのだそうです。
先にもちょっと触れましたが、3列目までのすべての列に、USB Type-Cの充電端子が装備されるのは大きな変化のひとつです。ただ、この端子にどんな規格の、どの程度の電圧・電流が供給されるのか?という仕様が書かれたドキュメントが、今のところ見つけられていません。規格が合わないと、全然実力が発揮できないのがType-C。ホンダディーラーの営業の皆さん、このあたりはハッキリ確認しておかないと、後々問題になる可能性がありますよ?
カーナビについては、実質的に純正のディーラーオプション品の一択となるようです。これまで以上にネットワーク接続を活用するHonda CONNECTに対応し、地図データの自動ダウンロードや車内Wi-Fiも使えるようになります。個人的には、Android Autoに対応するのはうらやましいなぁ…と思いますが、それ以外はあまり変わらない気がします。車内Wi-Fi使い放題は、外付けでも何とかなりますし。
インテリアとは違い、動力性能は後付けが非常に困難ですから、どのように変わったかは特に気になるところです。e:HEVについては、エンジンと電動モーターの型番やスペックを見ると、5代目と全く同じ。1.5リッターのダウンサイジングターボは、小改良版でほぼ同じ性能のようです。一方で、車体のサイズが大きくなっているのにもかかわらず、重量はほとんど変わっていません。
WLTCモードの燃費を見ると、e:HEV AIRで5代目e:HEVスパーダと同じ20.0 km/L。e:HEV SPADAでは19.6 km/Lと、先代の同グレードより低下しています。もちろん、ひと回り大きな室内空間を持つボディで同レベルの数値を維持するのもタイヘンなことなのですが、実はそれ以外にもうひとつポイントがあります。
WLTCモードは、市街地モード・郊外モード・高速道路モードの3つのモードでそれぞれ燃費を計測し、使用頻度を加味した平均値として算出される国際基準だそうですが、6代目のe:HEVでは市街地モードでの燃費が全モデルで5代目より向上しています。日本のクルマのほとんどは市街地で使う比率が多いのではないかと思うので、実際に乗ると燃費は意外に良い成績を残すかも知れません。
このあたりは制御プログラムのさじ加減次第だと思うので、ちょっと工夫したのでしょうね。そのかわり、他の2モードが割を食っているわけで、特に郊外モードの走り方が多そうな我が家の使い方だと、5代目の方が省燃費かも…と思っています。
6代目の仕様をひととおり眺めてみましたが、フラットな視線で他社のクルマと見比べるのなら、なかなか面白いクルマを作ってきたなぁ…という印象を持っています。燃費性能ではトップではないものの、5代目e:HEVスパーダ並みの運動性能を同様に発揮できるのなら、ライバルに対する明確な優越ポイントになります。エクステリアは派手なデザインが多いこのジャンルの中で、ひと味違う選択になり得そうです。インテリア装備もよく練られていると思います。
ただ、5代目を愛用してきたユーザーとして私が見ると、乗り換える対象としては「少なくとも今、コレじゃないな」と思います。劇的に得られる体験が変わる…とまでは行かなさそうです。もともと、近年のステップワゴンはN-BOXやフリードなど身内のライバルに負けて販売が低迷しているのでは?と言われてきましたが、案外6代目の最大のライバルになるのは先代のステップワゴン、特にe:HEV スパーダかも知れません。同一ブランドでの乗り換えは、売上として無視できない部分だと思うのですが、乗り換えずに乗り続ける…という選択が増えると、このクルマは売れにくくなります。
もっとも、まだ実車に触れてもいない状態なので、何とも言えません。そこでガラリと評価が変わる可能性はあります。それがプラス方向になのか、マイナス方向になのかも見当は付きませんけどね。定期点検は先に済ませてしまったし…改めて遊びに行ってこようかしら。
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