コストコでタイヤを交換してもらったときに、ゴム製のエアバルブも新しいものに替えてくれました。それ自体は、サービスとしてはまあ普通かな?と思うわけですが、よく見るとこのバルブ、交換前に付いていたものとはちょっと雰囲気が違います。
そう感じる理由は、おそらくエアバルブのキャップにアルミ製のモノが奢られていること。そして、キャップの先端には「N2」と刻印されています。これは、タイヤの内部に普通の空気ではなく窒素ガスが充填されている目印です。
コストコタイヤセンターでは、購入したタイヤへの窒素ガスの充填は「永久無料」のサービスとなっていますが、普通は窒素ガスはタイヤ1本あたり500 円程度以上の有料になることが多い「商品」です。わざわざおカネを払って詰めるからには、相応の理由が欲しいところで、実際にいろいろなメリットが宣伝されています。一方で、「全然意味が無い」という意見も結構あるのがこの「窒素ガス充填」。実際のところ、どうなんでしょうか。既にいろいろな人が記事にしている話題ではありますが、調べてまとめておきましょう。
窒素は原子番号 7 の非金属元素であり、常温・常圧では気体分子(N2)として安定的に存在し、地球の大気の約78 %を占めています。「窒素ガス意味無し」派の主張としてよく見られるのが、「普通の空気を入れたって8割は窒素じゃん」というもので、言い分としてはわかるのですが、タイヤに窒素ガスを詰める理由には、窒素自体の持つ特性によるものだけでなく、「窒素以外のものが含まれない」ことに起因するものがいくつかあるので、単純に納得できないところもあります。
改めて地球の大気組成を確認すると、窒素(約 78 %)、酸素(約 21 %)、アルゴン(約 1 %)、あとは二酸化炭素(約 0.04 %)等の様々な微量成分となります。もちろん2割を占める酸素は重要な成分なのですが、もうひとつ無視できないのが水。常温で気相(水蒸気)と液相を容易に行き来して、大気中での存在比が大きく変動します。いわゆる「大気組成」に入れてしまうと面倒な話になるため、通常は除外して考えていますが、ナマの空気にアルゴンと同程度以上の水蒸気が含まれているのはごく普通のことです。
窒素ガスを詰めると「温度による圧力変動が少ない」と言われますが、これは容易に液化・気化する水蒸気を含まないことが最も大きな要因でしょう。「タイヤやホイールが劣化しにくい」というのも、同じく水蒸気が冷えて結露する事態が起きないこと、酸素が存在しないため酸化しにくい(=錆びにくい)ことなどが根拠になっているようです。ただ、これについてはタイヤの外側は常に空気に暴露されていることを考えると、多少はマシ…程度の話なのかも知れません。
「使用している間に圧力が下がりにくい」というのは、窒素が酸素などよりもゴムを透過して抜けにくいことが要因だそうです。「分子半径が大きいから」みたいな説明も見かけますが、その点では酸素との差は微々たるもので、むしろゴムという材質との相性という面が大きそうです。確かにそれなら窒素自体の特性ではあるのですが、それこそ空気の8割は窒素であることも考えれば、やはり酸素など他の成分を含まないことが効いている…とも言えます。「燃費が良い」「タイヤが長持ちする」「ロードノイズが静か」あたりも、圧力が下がりにくいことから派生する作用と言って良いでしょう。どれも、タイヤの空気圧が下がることで発生する問題の裏返しです。
ただ、あくまでも「抜けにくい」だけで、窒素ガスも少しずつタイヤから抜けていき圧力は下がりますから、補充していく必要はあります。「窒素ガスだから…と油断してメンテナンスを怠る方が怖い」という意見には賛成ですが、それを「窒素なんて意味ない」の理由として語るのは、ちょっと論点がずれているような気はします。
そもそも自動車用のゴムタイヤへの窒素充填は、もっと過酷な環境に置かれる航空機用やレーシングカー用のタイヤから応用されたものだそうです。極限の現場で採用されたモノには相応の理由があるわけで、少なくとも窒素を詰めることによるメリットは何かしらあるということなのでしょう。
一方で、窒素ガス充填のデメリットは?という問いに対しては、「おカネがかかる」「どこでも入れてもらえるわけではない」程度しか出てきません。つまり、「タダで窒素を入れてもらえるコストコタイヤセンターに通える」という条件が整っていれば、もはやデメリットは全くないと言っても過言ではありません。
せっかくの環境なので、窒素ガス充填の管理もしっかりしていきたいと思います。ふた月に1回くらいはコストコでタイヤを診てもらうことにしましょう。圧力はちゃんと指定空気圧+ 10 kPaに指定するのを忘れないようにしなくては。
空気圧と言えば、リアルタイムでモニタリングできる機器が巷では結構売られていますね。TPMS(Tire Pressure Monitoring System)と呼ばれ、海外では義務化されている国もある装備らしいのですが、エアバルブのキャップ部分に小さなセンサーを外付けするだけで、専用のモニターやスマホアプリなどに4輪の空気圧や温度を表示してくれます。
Amazon.co.jpでは結構安く売られているモノもありますが、無線が使われているのは間違いないのに、海外製品はちゃんと技適は通ってるのかしら?と心配になります。クルマの安全のためには役に立つ機器だと思うので、どんなものがあるのか、また研究してみましょう。
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