2023年がもうすぐ終わります。この時期になると、巷では一年を振り返るいろいろなニュースが溢れますが、その中に、この1年で亡くなった著名人の方々を振り返って偲ぶ、いわゆる「墓碑銘」企画があります。
記事を見ながら自分でも振り返ってみると、今年は音楽絡みで自分に関わりが深いと感じた訃報が多かった気がします。もっとも、亡くなったご本人たちと本当に関係が深かったわけでもなくて、ワタシ自身がそう感じただけ…という話ではあるのですが。
名前をひとりひとり挙げていくとキリがないのですが、パソコン打ち込みで作曲もする(していた、とは言いたくない)私としては、テクノポップを生み出したYMOから1月に高橋幸宏氏、3月に坂本龍一氏が次々に旅立っていったのは、やはり印象に残る出来事です。時代を作った彼らが世を去っても、音楽は永遠に残っていくモノだと思うのですが、それでも確かに過去になっていきます。
アクトシティ浜松の大ホールで第九を歌っていた頃に共演した指揮者・飯守泰次郎氏が、8月にこの世を去っています。ステージに立ったのはもうふた昔前のことですが、いつかまた歌いたい!と思いながらも、すっかり遠ざかってもうすぐ20年。なかなかそれができる環境には戻れていません。
そんな中でもいちばんの衝撃だったのは、11月にシンガーソングライターのKAN氏が亡くなったことでした。1991年に大ヒットした「愛は勝つ」があまりにも有名ですが、あの曲に限らず、当時から実にカッコいい曲を作る人でした。しばらくはアルバムも全て聴きながら追いかけていましたし、自分の作る曲にも影響を与えた人だと思っているのですが、21世紀になってからはあまり聞かなくなっていました。
今回のことがあって、改めて彼の曲を聴いてみようと思ったのですが、貧乏学生だった当時はCDをレンタルしてきてテープにダビングして…というのが普通でしたから、今はほとんど手元に音源がありません。Amazon Music Unlimitedでは、比較的最近の作品は配信されていたのですが、11月当時には2005年頃より前の音源は全くありませんでした。そんなわけで、まずは最近の曲から聞いてみることにしました。ほとんどの曲は、今回初めて触れたものです。
そもそも、21世紀初頭以降が途切れてしまったのは、彼が「フランス人になりたい(!)」という夢を叶えるべくフランスに音楽留学してしまったことが一因でした。以前から彼の曲には、オケはポップでも内にはロジカルに計算されたクラシックっぽさを感じていましたが、フランス帰り以降はさらにその傾向が強まった…というか、クラシック的な音楽の組み立て方に磨きがかかったような気がします。昔からデモテープ段階でほぼ完璧にアレンジを作り込み、管や弦のパートもご自分で書いていたのだそうです。
そして、曲はホントにカッコいいのに、詞はなんとも面白いんですよね。残念なことに私は彼のライブには一度も行けなかったのですが、これがまたとんでもなく面白かったらしいです。なんだか、人生をちょっと損してしまったかも知れませんが、残されたいろいろな曲を聴きながら、ちょっと損を取り返してみようかと思います。
ちなみに、「愛は勝つ」のオリジナル版も含め、フランスに行く以前の彼の作品は、つい最近になってAmazon Music Unlimitedでの配信が始まりました。私も懐かしく聴いています。「どうして『愛は勝つ』が聴けないんだ?」という苦情が殺到したのかも知れませんね。サブスクリプションサービスだと、権利関係の整理などなかなかタイヘンなのでしょうけれど。
墓碑銘の特集記事を見ていると思うのが、自分と近い世代の方々の訃報が増えてきたな…ということ。ヒトの寿命は極端に伸びているわけではない一方で、自分は着実に毎年ひとつトシを取るわけで、当たり前のことではあるのですが…。KANは享年61歳。私との年の差はひとまわり以内です。そろそろこういう話は人ごとには見えなくなってきました。
著名人の訃報ではないのですが、もうひとつ今年大きなショックを受けたのが、かつて大変お世話になった方が、50歳代で亡くなった…という喪中はがきを受け取ったこと。何があったのか詳細は伺っていませんが、本当に近いところに、そんな話が転がっています。
自分だって、救急搬送されたこともあるくらいで、いつ人生を退場することになるのかわかりません。そのときに「つまんないヤツだったなぁ」と言われないように、もうちょっと頑張らなくては…と思います。とはいえ、そう簡単にはいかないんだよなぁ、これが。
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