私の住む浜松市には、「月まで3km」という道路標識があります。もちろんこれは地球の衛星がすぐそばにあるわけではなく、天竜区にある「月」という集落までの距離を案内している標識です。2003年に静岡県で開催された第58回国民体育大会「NEW!!わかふじ国体」のボート競技の会場は、月にあるダム湖のほとりでした。
…と、そんな話はともかく、今回の「月の湖」はそれとは全く別の話。Lunar LakeことIntel Core Ultra シリーズ2プロセッサーを搭載したPCの販売が、先月末あたりから始まっています。とりあえず、「近いうちに発売するメーカー」たちの製品は、だいたい出揃ってきたようです。
そもそも、Core Ultra シリーズ2はどんな立ち位置のプロセッサーなのか?を掴み切れていなかったのですが、巷にレビュー記事も出始めて、様子がだんだん見えてきました。CPUのピーク性能では、コア数の多いCore Ultra シリーズ1やRyzen AI 300シリーズには及ばないのですが、8コアで捌ききれる程度の仕事なら、彼らに負けないくらいのパフォーマンスをより低い電力で発揮します。シングルスレッドでの仕事が非常に速いという評価が出ているので、対話的な作業での満足度は高そうです。
GPUについては、SoCに統合されたものとしてはかなり強力な基礎体力を持っていることは間違いなさそうです。私は3Dゲームをぐりぐりと動かすような使い方はしていませんが、3次元CG自体には昔から興味がありますし、やっぱり気持ちよく動いてほしいものです。昔とは違って、ノートPCでもGPUはThunderbolt 4経由で外付けできますし、外出先でゲームしたい気持ちも今はありませんから、それほどこだわらなくて良い部分かも知れません。
NPUについては、まだ対応アプリケーションが非常に少ない状況ですが、11月にはWindowsのCopliotでNPU対応の機能が解放されるはずで、これに対応できないCore Ultra シリーズ1とは決定的な差が生まれます。デスクトップ機では、いずれGPUがCopilotのAI処理を担えるようになるでしょうから、それほど深刻に考えなくても良いはずですが、後からパワーアップできず、消費電力面の条件も厳しいモバイルノートPCでは、買う時点で「時代遅れ」になることが確定しているものには手を出しにくいところです。
少々重めの仕事でも軽々とこなし、長時間バッテリーで動かせる、薄型・軽量のPCを作ることができます。今後進んで行くであろうAIの活用に対する準備もできています。PCをどこにでも持ち運んで、積極的に使っていこうとするユーザー(私もその中のひとりだと思っています)にとっては、要求に高い水準で応えてくれる嬉しいシステムであると言えそうです。
先日から気になっていたThinkPad X1 Carbonの最新版(第13世代)は、「Aura Edition」として、10月16日から日本での注文受付が始まりました。採用されているSoCはCore Ultra 7 258V。他社製品でも多く採用されているグレードで、最大でP-Coreは4.8 GHz、E-Coreは3.7 GHzで動作し、RAMはパッケージ上に32 GB載っています。Core Ultra シリーズ2にはRAM 32 GBのモデル(モデルナンバーの最後の数字が8)と16 GBのモデル(最後の数字は6)が用意されていますが、大量のデータを扱うAI時代を想定すると、後者を選ぶのは得策ではないでしょう。Core Ultra 7 258Vはちょうど良い選択だと思います。
ThinkPadらしさを随所にちりばめた筐体は、X1 Carbon史上最も軽い986 g。厚さも14.37 mmと最も薄くなっています。SSDは1 TBを内蔵し、ディスプレイは3K解像度のOLED。指紋認証と顔認証の両方に対応し、無線LANも最新のWi-Fi 7対応です。バッテリー動作時間は、JEITA 3.0基準で動画再生時11.6 時間、アイドル時14.5 時間(アイドル時の数字は間違っていそうな気がするのですが)となっています。まる一日を走りきることはできそうです。
価格は286,770 円(10 %税込、以下同様)からという設定になっています。オンラインショップでは複数の商品が選べるようになっていますが、Windows 11がHome版かPro版か、あるいは付帯のサポート内容が異なるかの差で、ハードウェア自体は全て同じもののようです。Windows 11 HomeをProにアップグレードするのは、Microsoft Store経由で1万3千円ほどで可能ですから、5万円以上高いProプリインストール版を購入する意味はなさそうです。
想定していたよりはちょっとだけ安価でしたが、それでも簡単に買えるレベルのものではありません。レノボの直販サイトでは分割払いも選択できるので、月々1万円を大きく下回る支払いで入手できる手段はあるのですが…。
ThinkPad X1 Carbon以外にも、個性的なCore Ultra シリーズ2搭載製品がいろいろ発表されています。HPのOmniBook Ultra Flip 14-fhは、画面が360度開く2in1モデルで、Core Ultra 7 258V搭載のパフォーマンスモデルは299,200 円から。磁石で本体に張り付くアクティブペンも付属します。スッキリした高級感のあるデザインですね。ただ、重量が1.32 kgと、モバイルにしてはかなりの重量級になります。
DELLのXPS 13にもCore Ultra 7 258V搭載モデルが登場しています。1.2 kg前後とOmnibook Ultra Flip 14よりもやや軽量ですが、SSD 512 GB、1920×1200 ピクセルの液晶画面の仕様でも、お値段が30万円を超えてきます。スッキリしすぎなのでは?というくらいのノイズレスデザインはアピールポイントなのですが…。
ASUSのZenbook S 14 (UX5406) は、同じCore Ultra 7 258Vを搭載したモデルだと259,800 円からとなっています。この製品だけは既に店頭で実物を見ています。重量は1.2 kgあるそうですが、持ち上げてもあまり重さは気になりません。最大でも12.9 mmしかない薄さに秘密がありそうです。
ただ、ほぼ同じ基本仕様を持ち、重量は2割軽いThinkPad X1 Carbonとの価格差は3万円弱と、意外に差がありません。モバイルノートPCの世界では「軽さが正義」という厳然たる事実もあるわけで、軽さをカネで買うかどうか?という悩みも出てきます。
彼らグローバルメーカーだけでなく、ドスパラ・マウスコンピューター・パソコン工房といった、日本国内向けにお値打ちなPCを提供しているメーカーたちも、既に製品を売り始めています。これらの中では、マウスのMousePro G4-I7U01BK-Eが気になりますね。ドスパラの製品は無線LANがWi-Fi 6E止まりですし、パソコン工房の製品にはRAMを32 GB搭載した製品がありません。どちらも、将来性を考えると削るのは辛そうなポイントです。
削らなかった分だけ、価格は239,800 円からと少し高くなりましたが、それでもグローバルメーカーたちのプレミアムなデザインの製品よりは少し安めです。ただ、標準で500GBのSSDを1 TBにアップグレードすると25万円を超えてくるので、いろいろ仕様を見比べると、実は割安感はそれほどでもなかったりします。とはいえ、約946 gという重量は、現在出ている製品の中では最も軽く、それこそ「軽さは正義」をどう評価するか?ということになってきます。
「軽さは正義」と言えば、10月15日に富士通からFMVの2024年冬モデルがお披露目されました。この中で、FMV Zeroの最新モデル「WU5/J3」が「14型でもムサシ(634 g)」を見事に達成しています。
もちろんコレはとんでもない快挙なのですが、惜しむらくはプロセッサーがIntel Core Ultra 5 125U/7 155U、つまりCore Ultra シリーズ1であること。先に発表されていた企業向けモデルをベースに、地道な軽量化をさらに推し進めた結果ということのようです。
LIFEBOOK UHシリーズの他のモデルも、Core Ultra シリーズ1搭載なのでCopilot+ PCにはなれません。今わざわざ買いに行こうとする対象としては、選びにくくなったと感じています。これからあまり間隔を空けずにCore Ultra シリーズ2を載せた製品が出てくるとも考えにくいですしね。…もしそれをやられたら、暴動が起きるかも知れませんw。
こうして見ていくと、私の現時点の「着水点」としての第一候補はどうもThinkPad X1 Carbon(第13世代)っぽいのですが、まだモヤモヤとしたものが収まりません。30万円出すつもりになるのなら、ASUS ProArt PX13の下位モデルだって買えることになりますし…。アレには私の現在の使い方から見ると明らかにオーバースペックな部分がありますが、逆にPCの使い方を劇的に変えさせるきっかけになるかも知れません。
まあ、ポンと買える現金を持ち合わせているわけではありませんし、落ち着いて考えましょう。やっぱりココはたか(以下強制削除)
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