堂々と開けられる

9月5日(現地時間)にThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Editionがお披露目されたときに、レノボが出しているリリースノートを、改めてじっくり読んでみました。実は、以前から気になっていることが2つあります。

ひとつはバッテリーでの動作時間の話。レノボのWebサイト上で公開されているThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Editionの製品仕様を見ると、「JEITA 測定法 3.0: 動画再生時 約 11.6 時間・アイドル時 約 14.5 時間」と記載されています。

このJEITA 測定法 3.0とは、正確には「JEITA バッテリ動作時間測定法(Ver. 3.0)」というもので、JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)の PC・タブレット事業委員会が定めている計測方法です。日本でPCを販売するメーカーは、基本的にこの方法で計測した結果を載せてくれているので、いろいろなメーカーの製品を横並びにしてバッテリーの持ちを比較することができます。ただし、動画再生という、現在のPCに掛ける負荷としてはあまり重くない(画面表示はともかく、CPUあたりはほとんど動いていないはずですからね)処理を使って計測するため、実際に使える時間はずっと短いことが多いようです。

一方で、件のリリースノートには、MobileMark 25というベンチマークソフトで計測した結果が掲載されています。こちらは、Microsoft OfficeやAdobe Creative Cloudなどの実アプリケーションを、実際にユーザーが行う作業を想定しながら動作させて、バッテリーライフを計測します。CPUやGPUなどにも相応の負荷がかかる分、JEITA測定法よりは実情を捉えられるのでは?という気がします。幾分マシ…という程度だとは思いますけどね。

ただ、気になっているのが、MobileMark 25では「18時間以上動作する」という結果が出ていること。本来いちばん短くなりそうなMobileMarkの数値がいちばん長いというのは、にわかには信じがたいのですが…。少なくとも3つの数値のどれかは、何かを間違えているのではないか?と疑っています。細かい動作条件を確認し切れていないので、何とも言えないところではありますが、全ての数値が大間違いというのでもなければ、「まる一日動かせる」という評価は動かなさそうです。


それ以上に気になるもうひとつも、バッテリー絡みの話。ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Editionでは、内蔵の動作用バッテリーが「CRU」に指定されています。CRUとは「Customer Replaceable Unit」の頭文字を取ったものだそうで、レノボが指定する、顧客が自分で交換可能な部品のことです。

CRUに指定されているパーツについては、ユーザーマニュアルに交換方法が記載されています。故障等で交換が必要になった場合には、交換用パーツが送付されてきて、ユーザー自身が交換することになります。筐体を分解して交換するようなパーツもありますが、純正の交換用パーツに交換している限りは、保証が無効になることはありません。

以前ご紹介したdynabook X83 CHANGERと同じような位置づけで、バッテリーの交換をメーカーに依頼するために本体ごと送付しなくてはならず、何日も使えなくなる…という事態を避けることができます。レノボとしては、ユーザーの利便性だけでなく、バッテリーを交換しやすくして長期間使ってもらえるようにしよう…という環境面の配慮を前面に押し出した紹介をしています。


もっとも、レノボやDynabook社が純粋にユーザーの利便性や環境への配慮からこうした仕様にしているのか?となると、おそらくそうではありません。EUが定める「2027年までに、バッテリーを内蔵する機器はバッテリーを交換できるようにしなくてはならない」という規制に対応するために、先行的に取り組んでいるものではないかと思います。

EU議会の定めるこの手の規制はいろいろありますが、コレを守らないとEU圏内では商品を売れなくなってしまう…という、実に強引なモノです。あのApple社ですら、iPhoneのLightning端子をUSB Type-Cに替える羽目になったり、EU圏内でだけはApp Store以外からもアプリを買えるようにしたり…といった対応を余儀なくされています。

この「バッテリー交換規制」も、多くの電気機器メーカーが対応を迫られるようになっているものですが、バッテリーを交換できないように本体に組み込んでしまうことで、機器が小型・軽量化している面もあるわけで、私たちが失うモノも結構多そうな気がします。例えば完全ワイヤレスイヤホンとか、どうなっちゃうのかしら。

ともかく、ライバル他社の製品では、電池交換のために何日間もPCを手放さなくてはならないモノがほとんどで、これは実に好感度の高いポイントです。ただ、それ以前に、ThinkPadってマニュアルに分解方法が載っていて、保証を気にせずに堂々と蓋を開けられるんだ…と、そのこと自体に興奮してしまうワタシ。ビョーキですかねぇ?



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